メロンソーダの泡が弾けるころに
愛奈
プロローグ
小学校の卒業式、私は泣けなかった。
小学校に特に思い入れなんてないもん。仲のいい子と中学校が別れるのは少し寂しいけど、泣くほどじゃない。
今よりも、中学受験した中学校に入る方がよっぽど楽しみ。勉強だけはできたからね。
この湿っぽい空気から帰りたかったけど、「めい〜、ずっと友だちだよぉ〜」とか泣きながら言っている子を「そこジャマなんだけど」とか言うことも出来ずにニコニコしている。
ずっと友だち?
そんなの嘘。みんな、よってたかって私をいじめたじゃん。それで友だち? 笑わせないでほしい。
いつの間にか男の子たちも集まってきて、クラス写真を取ることになった。
私は慣れない袴に疲れた、という口実で帰らせてもらった。時間がかかりそう、という理由で少し前に両親は帰ったから、一人。
ため息をつきながら、六年間通った帰り道をとぼとぼ歩く。もう通ることもほとんどないんだな。
みんな、どうして私を友だちって言うんだろ? 二ヶ月前まではいじめてきたくせに。
私が超難関、西園寺学園に合格したと聞いたとたん、みんなは手の平を返した。みんなズッ友だよ、などとほざく。
どうせ、親にあの子と仲良くしなさいって言われた、とかあの子といれば自分の株が上がる、とか思ってるんだろうな。
心が少しづつチクチクしてきて、ムカムカする。
ムカムカを収めるため、近くの自動販売機になにか飲もうと目を向ける。
メロンソーダ。
私は炭酸があんまり好きじゃない。
けど、炭酸を飲んだらムカムカが収まる気がした。
買って、キャップを開けると一気に煽る。
少しのどがチクチクして、その後シュワっとした快感が押し寄せる。
ムカムカがシュワシュワと一緒に消えていく。
メロンソーダ。
それは私のこの後の運命を変えたんだ。
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