第5話 藤巻家家族会議

ギルド長に教わった隣接している宿に向かう。付き添いで、疾風迅雷のメンバーが事細かに、教えてくれた。

宿のおばちゃんは、人当たりの良い人で、二部屋を確保してくれた。

「お世話になりました。ありがとうございます。」

「いいってことよ。俺らも近くの宿にしばらくは、泊まってるから、何かあれば、遠慮なく、来いよ。」

「じゃあな、坊主。」

「うひゃー。」

深々と頭を下げる一家。何から何まで、面倒見が良い彼らに、頭が上がらない。

代わりの職員から、渡されたあの報酬金を元手に、宿に払う。

部屋割りは、祖父母に雛弥、煌太。

両親に、京介で分かれた。

取り敢えず、腹ごしらえに、宿屋の食堂で晩御飯を頂く。



目を覚ましても、見覚えない天井に、数度、目をパチクリ。

雛弥が起きた?と聞いて来た。着替えは無いから、昨日の格好のまま。

寝心地は悪くはないが、良くもない。

「宿屋の朝御飯を貰いにいこ。お腹空いたでしょ?」

確かにお腹がくうーと鳴っている。

「おじいちゃんとおばあちゃんは?」

「お父さんたちのとこ。あたしらもいこ。」

どうやら一番、遅く起きたようだ。


節約も兼ねているため、あまり、ボリュームたっぷりとは言えない食事。堅いパンと野菜のスープ。

「固い…。」

「我慢して食べな。黒パンと思えば、案外、いけるわよ。素朴な味で。」

当然だが、バターやマーガリンなど、ないので、素のままのパンを食べる。

モソモソと、なんとか、喉に通過した。

「仕事を探さないとな。いつまでもこの報酬金がある訳じゃない。」

「でも伝もなにもないわよ?ハローワークがあるわけでもないし。」

両親は、金策に頭を抱えてるようだ。確かに、金は使った分、減るのだ。いつまでもあるわけではない。

「京介。あんたの好きな異世界の話だと、こういった場合、主人公はどうしてるわけ?」

「んー。既に、伝説の魔獣とかを使役してるテイマーになっていたり、もしくは、あちらの物をいくぶん、売るかとか?高値になったりしてるしね。あとは、地道に、ギルドで冒険者登録して、依頼をこなしていく…。」

「売り物ね。売るのなんて、今着てる服だけだもんね。これ、売ったら、着るの、無いもの。それは却下。伝説の魔獣って何処にいるわけ?」

「え。知らない。」

そもそも伝説の魔獣なんだから、そう簡単には見つかるわけない。

「冒険者は…正直、母さんやあたしならいざ知らず、お父さんたちには無理だわ。性格的に向いてない。」

「うっ。すいません。」

母や姉以外は、運動音痴。典型的な文学タイプ。

「じゃあ、先ず、母さんと私が冒険者に登録して、小銭を稼ぎながら、食い扶持を探しましょう?ね。」

「雛弥。早計だ。ちょっと待っていなさい。」

「こう言うのは、勢いも大事よ!金なんて、あったほうが、いいんだから!」

父が止めているが、雛弥は、なんでと噛みつく。

「あれ?おじいちゃんは…?」

「おや、どこ行った?」

煌太は祖父が何時のにか、いなくなったことに気づいた。


「待たせたね。」

「お義父さん。勝手にいなくならないで。心配するじゃない?!」

祖父がいないことに気づいた他の家族がどこに行ったか、探していた。

「ごめん。ごめん。尚弥、お前、経理の腕は鈍ってないよな?」

「?」

尚弥は、某IT系の経理課に所属し、日々、計算と闘っていた。

「ギルドの職員になったら、いい。」

「はあー!!?」

おじいちゃんの爆弾発言に驚き、思わず、盛大に、声が出る。周囲がこちらを見るが、気にしていられない。

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