1話「焔」に憧れて
まだこれは俺が島にいるころの話。
広い世界に羽ばたくまでの話だ。
「ははははっ!」
笑いが込み上げて来る。
「やはり島のおばぁちゃんおじいちゃんたちじゃ俺を捕まえる事はできないのだ」
優越感に浸る俺は自分の目の前にある洞窟に足を踏み入れる。
〜♪と鼻歌を交えながら。
体感30分位歩いた先に目的地はある。
「遺跡」だ。
まぁここらで補足を入れて置こう。
2030年に洞窟・遺跡があるか?と思う読者もいるだろうただここは離島だ。
全く発展していない。ど田舎だ。
周りを見渡せば森に山に海に動物にとど田舎具合はわかっただろう。
文化レベルというと一応「国」に保護はされているので本土の者とは変わっていないはず?だ。
だが"すまほ"という名前の物は使っている人はいない。
都市伝説的な扱いを受けている光る板がしゃべると。
と、話をしている内に遺跡に着いた。
遺跡は霞んだ黄色や赤、青の岩でできている。
分厚いぼろぼろの扉からは「焔」の光が漏れている。
「焔」は昔の英雄が残したものだ。
神聖なものだった。悪も滅ぶことも頷ける。
この火を使い俺は悪を倒す!と心にぎざむ
「いよっし今日こそは扉を開けるぞ!まずはこのハンマーで_____うおっ!
どごん!
体が地面に打ち付けられる。
体がいつもの倍は重い。
来てしまったか奴が、
「清水秋季」が。
彼は冷静で落ち着いた声を俺に放つ。
「またここか、お前はいつまで扉を開けようとしているんだ?度は約100年は開いていないんだ。諦めろ」
「嫌だね。俺は「焔」の概念を使えるようになるんだ」
俺の言葉の後
秋季は憐れという感情が似合っている冷たい笑みを浮かべた。
あの話が来ると感じた。
「概念は15歳までに発現する。だがお前には
発現していない。奇跡が起きない限り概念は使えないんだ。無駄なことはしないで勉強をしろ。お前は受験があるんだから」
何度も聞いた話だ。
15歳になって概念が無ければ2度と発現しない。という話。
俺は地面に倒れながら秋季に言う。
「"スクール"から声の掛かっている秋季は楽でいいですねー。」
とふざけた声で
ぐえっ!
カエルが潰れたようなみっともない声を出してしまった。
秋季が俺の体にかかる重力を重くしたのだ。
次の言葉を聞きたくないと思ってだろう。
それでも俺は真剣な声で。
「俺は「焔」を使う。英雄になる男だ奇跡くらい起こすぜ」
秋季は器用に重力を使い俺を浮かして村まで連れて行った。
道中にある考え事をしていた。
なぜ清水秋季(しみずしゅう)は"重力"の概念に目覚める事ができたのだろうか、と。
概念(コンセプト)は15歳までに現れる特別な能力の事だ。
概念が発現すると本土に数個ある
国立概念高度育成学校 通称"スクール"に行けるのだ。
"スクール"を卒業すればマージナルマンとしてもう一つの世界の者[悪]と戦える。
"スクール"を考えると
俺は悪を倒したいんだ!胸が熱くなった。
村長は自分の豪邸の前に顔を梅干しより赤くして立っていた。あーこれはガチで切れてるやつだ。
村長の前に座らされた俺は村長の説教を長々と聞かされた。
まだ東にあった太陽が開放されたときには西の水平線ギリギリにあった。
「まーた遺跡にいたの?懲りないねー」
と背後から声がした。
飛鳥愛美の声だ。
「まぁ遺跡についただけ進歩か。秋季急いで走っていってたもん。でもさ、もう受験が近いよ。勉強しなきゃ。私はお菓子の学校に行きたいの」
愛美の声は俺の心に染み渡る。
不思議と優しい気持ちになる。
そのせいかつい本心をはなしてしまった。
「受験はするつもりない。遺跡を開けて概念を発現させるから、もし発現しなければこの島で自殺でもする」
後ろにいるはずの愛美の声がしない。何かあったのだろうか。
急いで振り返ると愛美が泣いていた。
「どうした!?」と慌ててこえを出す。
「死なないでよ。一緒に、受験しよ」
泣いていて声が出しづらかったのか愛美の声は掠れていた。
でもその言葉は本心であることだけは伝わった。
俺は概念を、必ず発現させると強く誓った。
「大丈夫。概念を発現させるから」
そう言って俺は寮にむかった。
俺は親がいない。
だから寮に1人で住んでいるのだ。
寮と言っても閉校した小学校だ。
俺はいつも図書室に行っている。
今日の図書室はいつもと違った。
先客がいたのだ。
村長の娘福田初音がいた。
初音は25歳位で俺と10歳も離れている。
「初音何してるんだ?用がないならかえってくれ」
女子に対してこの態度はひどいと思う。
でも初音は例外だ。
俺はある理由でこいつが嫌いなんだ。
「用があるからいていいってことね。遺跡まで行っちゃうような夢追いお馬鹿さんにいい事おしえてあげる。でもお母さんって呼んだらね」
ニヤニヤして初音はいった。
俺はこのお母さんと呼んでもらいたい症が嫌いなんだ。
初音としては反抗的な態度を取るクソガキが可愛い顔してお母さんと言うのが最高に可愛いらしい。
「そんな言葉言うくらいなら聞かなくていいや。」
初音は封筒を出す。
そこには"遺跡の開け方"と書かれていた。
そしてそれを破こうとしている。
「破くな!ストップストップ」
一大事だ。
あんな貴重なものを破くなんてとんでもない
「聞かなくていいって言うからーいらないのかなってあーお母さんって呼ばないかなぁー」
悪魔のような笑顔を見せる。
俺は腹を括る
「わかった。言うから破かないで本当に」
初音を見ると笑っていた。
悪魔め
「…………ぁさん」
なんだろうすごく恥ずかしい。
「ちゃんと聞こえないなー」
相変わらずニヤニヤしている。
悪魔め。
もういいやヤケクソで
「お!か!あ!さ!ん!」
と一言一言大声で言った。
「本当はもっと照れた感じの方が萌えるけど合格ってことにしてあげる。はいどうぞ。でも早く返してね」
と封筒を渡して帰っていった。
普通に渡して欲しい。
封筒を開けると中には一枚の紙が入っていた。
-遺跡の開け方-
1,遺跡は白い悪魔が島を襲う時に導かれし者
により開く。
2,導かれし者は「焔」の査定に合格した暁に
「焔」の恩恵を得る。
3,白い悪魔によりこの島は滅亡する。
準備をしろ敵は強大な力を持つ
と書いてあった。
開け方ぎわかる喜びより
島が滅亡することの悲しみが俺を襲った。
なんて事をしていたのだ。
「焔」が使える時は島が滅亡する時なんて。
俺はこの島を滅亡させたくない。
でも少しこれは初音が書いたいたずらではないかという期待があった。
俺は初めて遺跡に行きたくないと思い、
保健室のベットで寝た。
夢を見た。
赤い満月スーパームーンの日。
島に白い悪魔が現れる悪夢だ。
俺はすぐに目が覚めた。
時計を見ると6時だった。
中学生が起きる健康的な起床時間だ。
「予知夢じゃなければいいけど」
あと月曜日じゃなかったら。
学校に行くのは面倒くさい。
そんな事を言いながら散歩に出かける。
目的地は初音の家だ、封筒を返しにいく。
こんなに早く家に向かっても初音はいる。
初音はショートスリーパーで、5時には起きている。
寮を出て村を見渡す。
朝の特有の冷えた空気を肌で感じる。
いつもの数倍綺麗で静かだった。
寮から道なりに歩くと大通りにつく大通りを北に歩くと村長の豪邸が見える。
豪邸前の橋を渡り右に曲がると初音の家がある。
初音の家は村長の豪邸の離れだ。
ピンポーンとインターフォンを鳴らす。
ガタッと音がした。
急いでこっちに向かっているんだろう。
少し時間が経ってからガラガラっと扉が開いた。
でてきた初音は長い髪をポニーテール調に束ね眼鏡を掛けていた。
気怠そうで雰囲気の違う初音は色っぽかった。
「何しにきたの? 変態にでもなった?」
「違うわバカ。この封筒返しにきたんだ。早く返せって言ってただろ」
「そういうことね。何て書いてあった? お父さんの本棚から見つけたんだよね。それ、わたし一度も見た事なくて」
今何と言っただろうか。
見たことがない?
お父さんの本棚?
つまり封筒の話は真実と言うことか。
俺の背筋が凍った。
「焔」を使う時は島が滅亡する時だ。
こんなこと初音に言えない。
だから誤魔化そうとしたが言葉が下手な俺にはうまくできなかった。
「開け方が書いてあったよ」
「ちゃんと書いてあったんだ。どれどれ。
えっ......島が滅亡する?」
封筒を見ることを止めることができず
初音はショックを受けていた。
沈黙が続く。
先に口を開いたのは、初音だった。
「よかったー。これでもう遺跡を開こうとしないね。私企業しようとしててさ。音楽関係の。もう君遺跡を開けようとしないでしょ。じゃあさ受験しない君は就職だよね?わたしの会社に来たよ。」
そうだ俺は遺跡を開けようとしていない。
ただ企業?初めて聞いた。
遺跡を諦める名残惜しさはあるが、諦めるなら受験する。それに将来を考えたい。
だから
「初音の会社に今は勤めない。高校に進学して知識をつけてから考える。あと将来を考える」
「悲しいなぁ。まぁ優秀になる君を手に入れるためなら高校の3年間はいい投資か。じゃバイバイ」
何かを思いだしたように初音は俺を見る。
「あっそうだ。いい事教えてあげる知ってた? 今度の日曜日スーパームーンなんだよ。150年ぶりだって。幸運だよね。一生に一度見れるかどうかのやつなんだよ。さらに赤くなるって」
背筋が凍った。
あと5日後にスーパームーンと言っていた。
さらに赤くなるなんてまさに夢と同じ状況じゃないか。
つまり白い悪魔が現れる確率も高い。
「そうか。もう学校だから帰るな。じゃあな」
俺は話を切り上げて逃げるように家に帰った。
学校まで時間はある。少し整理したい。
最悪だ。 滅亡する。
島が。
今の俺には「焔」が使えるようになるかもと言う期待もなく、ただ死ぬ事がいやだった。
島の皆んなが秋季が愛美が初音が。
もう俺には「焔」の概念に目覚めるという目標も無くなって「焔」に焼き尽くされた炭のように黒くなった気持だった。
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