ひきだしの繭玉

太田エイ

ひきだしの繭玉

 誰かが蚕の繭玉をお土産に持ってきたことがある。加工品ではなくビニールに入ったそのままの白い繭玉である。幼稚園の頃それが怖くて仕方がなかった。その繭玉は和室のタンスの一番上の小さな抽斗に仕舞われていたが、怖くてその抽斗を開けられなくなっていた。この繭から蛾が生まれてきたらどうしよう。前を通る時も急いでいた。

 大人になった今でもその抽斗は開けたくない。トラウマ? それほどのこともないんだけどね。

 年月が経ち、父も母も亡くなり実家の整理を始めることになった。当然、あの抽斗にも開けることになる。ちょっと嫌な気持ちがあったが、深呼吸して抽斗を開けてみたところ……。


 白い繭玉はまだそこに入っていたのである。そして他にもコンドームが入っていた。

 なあんだ、そういうことか。

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ひきだしの繭玉 太田エイ @_akirana

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