ツンデレな先輩が可愛すぎるので、私は溶け合ってしまいたい気持ちを抑えるのは無理だと心の底から思った話

はんぺんた

ツンデレな先輩が可愛すぎるので、私は溶け合ってしまいたい気持ちを抑えるのは無理だと心の底から思った話

 先輩が好き。


 自分でも驚くぐらいに、好き。


 一目惚れだったから、容姿はもちろん好き。


 先輩を知るごとに、好きはもっと深くなる。


 ちょっとツンデレで、恥ずかしがり屋で、優しくて、年上なのに可愛くて、私の嘘にすぐ騙されちゃって、チョロすぎて、何度もキスしてるのに今だに顔を赤くする先輩が大好き。


 いつだって先輩の傍にいたい。


 ピタッとくっついて離れたくない。


 キスだってもっともっと上手になって、先輩をトロトロに溶かしちゃいたい。


 それで私もトロトロになって、二人溶け合って混ざり合いたい。


 それくらい、好き。


 でも、きっと先輩は気付いてない。


 だから、朝子お姉ちゃんが帰ってきた時も嫉妬しちゃったんだろう。


 嫉妬されるのは、好きでいてくれる証拠だから嬉しいけど。


 やきもちを焼く先輩は、可愛すぎるけど。


 私が、本当に好きで好きで堪らなくて、先輩のことをもっと欲しい気持ちが全部伝わったら……。


 あなたは安心してずっと私の傍にいてくれますか?


 離れたくないです、先輩……。



*



 ハッと目が覚める。


「アレ……? 私、寝ちゃってた?」  


 キョロキョロと周りを見渡して、知り合いに見られていなかったか確認する。

 ここは学校の図書室だ。学園祭も終わり、もうすぐ二学期の中間試験が始まる時期なので、図書室内で勉強する生徒たちが増えていた。

 一学期の時は、先輩と一緒に自分の部屋で勉強していた。

 だけど、密室に二人きりだとついついキスに夢中になってしまうし、密室でなくても先輩が気になって集中できそうにない。

 それに先輩は三年生で、受験を控えている。先輩に負担をかけたくなかったので、今回からは別々に勉強するようにと昨日伝えたばかりだった。

 なのに、もう夢の中で「離れたくない」とか思ってるのだから、自分でもさすがに呆れてしまう。

 離れていても、やっぱり先輩のことばっかり考えてしまう私は重症かもしれない。

 せっかく別々に勉強することにしたのに、まったく集中できないどころか、寝てしまうなんてダメすぎにも程がある。

 昨日はキスできなかったな、と先輩の唇に一日触れられなかっただけで、こんなにも切ない。

 昨日は結局一緒に帰ることもできなかった。だから余計に、先輩のことばかり考えてしまうのだろう。

 今日はキスできるだろうか、とかそんなことばかり考えている内に眠ってしまったのだ。

 こんなんじゃダメだ! 先輩の負担になりたくない! 試験が終わるまでキスは我慢! と、決意を胸に私はふたたびやる気を起こして勉強を始めるのだった。



*



「あー! 試験やっと終わったー! やったー!」


 長かった試験が終わり、昼休みになるやいなや親友の結衣がバンザイしながら叫んだ。


「結衣、喜びすぎ」


 もう一人の親友である美咲は、そんな結衣とは対象的に淡々とした表情だ。


「だって、やっと勉強から解放されて嬉しいし!」

「結衣ってば、そんなに勉強してたの?」


 私が尋ねると、結衣はチッチッチと舌を鳴らしながら人差し指を左右に振る。


「私じゃなく、美咲とあずが! 二人が勉強から解放されたから、遊びに行ける!」

「あ、そっちか」


 横目で美咲を見ると、ハァとため息をついて呆れ顔だった。


「美咲、あず! 早速、放課後遊びに行くぞっ」


 美咲の様子など全く気にせず、結衣はキラキラした目で遊びに誘ってくる。


「あ……。えっと」

「ん? なんか用事ある?」


 試験も終わったし、今日は数日ぶりに先輩と一緒に帰りたかった。

 だけど、先輩と付き合いだしてから、彼女との用事を優先的してばかりで、結衣や美咲とあまり遊びに行けていないなと思い返す。


「ううん、大丈夫! 久しぶりに遊びに行こ!」


 先輩とは、明日一緒に帰ろう。楽しみが一日延びるだけだ。


「よっしゃ! 楽しみ〜!」

「……あず、いいの? 本当に」


 浮かれる結衣の横で、少し心配そうな顔の美咲が私に尋ねる。

 美咲はきっと、先輩と会いたいっていう私の気持ちをお見通しなんだろう。


「うん。大丈夫だよ。ありがと」

「そう? それならいいけど。私も久しぶりに三人で遊べるの楽しみだし」


 そう言って、美咲も嬉しそうに笑顔を見せてくれる。

 そんなに喜んでもらえるなんて、ちょっと嬉しい。

 だけど、少し恥ずかしくなって、照れ隠しに美咲をからかう。


「え〜、本当に? 二人のお邪魔にならない?」

「全然。だって、週末はお泊りするし」

「おっ、お泊り……! あ、うん、そっか……!」


 美咲はこういう事をサラリと言うから、逆にこちらがドギマギしてしまう。

 恋人同士でお泊まりってことは、つまり、そういうことだよね……と、考えて顔が赤くなる。

 先輩とはまだ、そこまでの関係になれていない。

 できるなら、すぐにでも先輩を強く抱き締めて、先輩のすべてを貰いたい。

 けど、あまりに急かしすぎて、先輩に引かれたらと思うとなかなか行動に移せないでいた。

 この間、朝子お姉ちゃんに邪魔されなければなぁ……とついついお姉ちゃんを非難したくなる。

 悶々とそんな事を考えていたら、美咲が肩を突いてきて、教室のドアを指差す。

 開いたドアから、先輩が入りづらそうに顔を覗かせていた。

 先輩と付き合いだしたあの日にはズカズカ入ってきたのに、あれ以来はずかしくて入れないらしい。

 その時の事を思い出して、思わず笑ってしまいそうになる。

 美咲と結衣に「ちょっとごめん」と言い席を立つ。



*



「先輩! わざわざ教室まで、どうしたんですか?」


 先輩の元に向かい、一緒に廊下に出る。

 先輩は目を逸らしながら、なにやらゴニョゴニョと呟いた。


「え? なんですか」

「……っ! だからっ! 梓ちゃんが会いたがってるんじゃないかと思って……来てあげたの」


 顔を赤くしながら、そんな事を言われると胸がキュンとしてしまう。


「先輩……。そんなに私に会いたかったんですか?」

「ち、ちがっ……! 梓ちゃんが会いたがってるから!」

「はい! とっても会いたかったです!」


 にっこり笑って先輩の手を取ると、さっきまでのツンツンした勢いが途端に大人しくなる。


「……! う、うん、私も……」


 ツンデレな先輩はやっぱり可愛い。こんな態度をとってくれるのは、私が特別な証拠だ。誰にも、こんな可愛い先輩を見せたくない。


「あ、あのね。試験も終わったことだし、その、今日は、久々に……一緒にどこかに寄ってから帰らない?」


 少し照れながらも、先輩は嬉しそうに私を誘ってくれる。


「あ……。その」


 だけど、さっき結衣や美咲と遊びに行く約束をしたばかりだった私は、サッと困り顔になってしまう。


「えっと……なにか予定ある?」


 私の表情から察した先輩の声のトーンが下がる。


「その、ごめんなさい。今日は友達と先約があって……」


 申し訳なさで一杯になるし、残念でしょうがないけど、結衣や美咲との約束も大事なのだ。

 私は両手を合わせて、ごめんなさいのポーズをとる。


「そ、そっか……。別に、気にしないでいいから!」

「はい、また先輩の都合のいいときに誘ってください」

「うん。それじゃ、またね」


 私は寂しくて堪らない気持ちを抑えながら、先輩の後ろ姿を見送った。



*



 今日こそ先輩と一緒に帰りたい。

 重度の先輩不足で、私の頭は朝から先輩のこと以外は考えられないでいた。

 翌日、さらに翌々日も、なんだかんだとタイミングが悪く用事が入ってしまい、先輩とは一緒にいられない日が続いていた。

 おまけに、おとといの夜にスマホが急に壊れてしまい、先輩と連絡すら取れていない。

 キス、しばらくしてないな……と、先輩とのキスの感触を思い出すように、目を瞑り唇に指を当てる。

 先輩の唇はもっと柔らかい……と、指で唇をなぞる。

 先輩のキスは甘くて優しくて、こう……。

 放課後の教室で一人、そんな事を考えているといきなり腕を掴まれた。

 びっくりして目を開けると、そこには。


「えっ! 先輩⁉」


 ぎゅっと強めに私の腕を掴んだ先輩の顔は、何だかとても不機嫌そうだ。


「ど、どうしたんですか?」

「いいから、来て」


 まるであの時みたいだ。

 先輩は私の腕を掴んだまま、有無を言わさず引っ張って行く。


「ちょっと、先輩! どこに行くんですか?」


 先輩は私の質問を無視しながら、ズンズンと先に進む。

 私は諦めて、そのまま黙ってついて行くことにした。

 気付くとそこはあの日、先輩とお互いの気持ちを確かめあった空き教室だった。

 中に入ると、掴んでいた腕を離した先輩がジロリとこちらを睨んできた。


「えっと、なにか怒ってます?」

「……なんで」


 それだけ言うと先輩は俯いてしまう。一体、どうしたんだろう?

 私は何か先輩を怒らせるようなことをしてしまったんだろうか。

 いくら考えても、なにも思い当たらない。どうしようかと、オロオロしているとポタッと先輩の足元に雫が落ちた。


「え?」


 先輩が泣いている。

 ポロポロと涙を落として。


「どうしたんですか? ど、どこか痛いとか……?」


 私がそう言うと先輩は頭を振りながら涙を拭う。


「違うよっ! ……梓ちゃん、どうして最近……私を避けるの? もう、私のこと嫌になったの……?」


「えぇ⁉」


 拭っても拭っても、溢れてくる先輩の涙。

 小さな女の子みたいに泣くその姿に、私の胸は愛おしさで一杯になる。


「なに言ってるんですか! そんなことある訳ないじゃないですか」


 先輩の手を両手で掴み、真正面からハッキリ伝える。

 こんなに好きなのに、先輩はどうしてそんなことを考えてしまったんだろう。


「だって、最近一緒に帰ってくれないし、おとといから連絡しても既読すらつかないし……」

「それは、本当に用事があって……。あと、スマホもおとといから壊れちゃってただけです!」

「本当に? でも……」

「でも?」

「キ、キスだって……ずっとしてくれてないし……」


 恥ずかしそうに目を逸らした顔は、涙が止まっても目が潤んでいて、とてもドキリとさせられる。

 引き寄せられるように顔を近付ける。


 ゆっくりと。


 鼻先が触れ合う距離で見つめ合う。


 もう限界。


 優しくキスして、受験勉強に差し支えないように……とか無理。


 もう昂ぶる気持ちを抑えきれない。


 唇を触れ合わせると貪る様にキスをする。


「……んんっ! ……ちゅっ! ……くちゅっ! ……はぁっ!」


 舌で先輩の口内中を蹂躙する。


 先輩の舌が、負けじと私の中に入ってくる。


 お互いの舌を絡めながら、見つめ合う。


 トロンとした瞳は、ますます劣情をそそる。


 唇を離すと、先輩の首すじをペロペロ舐める。


「……ふぁっ! あっ! だ、だめ……」


 そのまま耳元まで移動して囁く。


「うそ。本当はしてほしいんですよね」


 吐息を吹きかけると、先輩がゾクゾクと震えたのがわかった。


 耳の中に舌を入れ、舐め回したり。


 耳たぶを甘噛みしたり。


 その度に先輩は、せつないような甘い声を聞かせてくれる。


「あぁっ! ……あんっ、……耳っ! やぁっ、あずさっ……! わたしっ、……ふあっ……あっ、あぁ……!」


 先輩は耐えきれない様子で、くたりとその場に座り込む。


「……先輩、気持ちいいですか?」


 ぎゅっと私の制服を掴んで、真っ赤な顔で頷く。

 可愛すぎる反応に私はもう我慢できそうにない。


「続き……していいですか?」

「……っ! だっ、だ、だめだめっ! ここ、学校だものっ……」

「えー? 聞こえないです」


 素直じゃない口は塞いでしまう。

 だめと言いつつ、逃げようとしない身体は素直に私に抱きしめられる。


「……っ! ……っ、ふぁっ! ……くちゅっ! んむぅっ!」


 先輩に覆いかぶさるようにして、私はキスの雨を降らし続ける。


 このまま二人、濡れ続けて溶け合おう。


 ……先輩、あなたを愛してます。





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