第29話 再結成
「そ、蘇生ってどういうことっすか!? そんな魔法聞いたことないっすよ!」
ルーカスの言葉に食いつく土帝アキト。
「ほ、本当に蘇生させちゃったの……?」
『うん、魔王さんも驚くんだね』
「それはそうよ! わたしだって聞いたことないんだからね!」
『やっぱりルーカスは素敵な人……』
『おい、あんまりひっつくなって……』
どうやら氷帝ティフィーは一方的にルーカスにいちゃついている様子。
――――ふん、なによ……別に羨ましいとか思ってないんだからね。
そう思っていると、わたしの横にいるディージャジャはニヤニヤしながらわたしのことを見てくる。
彼女にはお見通しってことね。
「こっちには合流できそうなの?」
『ああ、今からそっちに行くところだ。そうだな――――このまま待っててくれ。2人を連れて移動する。通話魔法は一旦切るからな。それじゃ』
ぷつりと通話魔法が切れてしまった。
あそこからここまで来るのにかなり時間がかかったような気がするけど、長い時間ここで待つことは出来ない。
ルーカスはどうするのかしら……?
◇◇◇
アンラとの通話魔法を切ると、ティフィーとコウキを見た。
「っと、とりあえず今からアンラのところに移動するぞ」
「はーい」
「ど、どうやって行くんだ? 俺は動けないぞ?」
コウキに回復魔法はかけたが、まだ完全に回復するほどの魔法をかけていないため、自ら立つことが出来ない。
「ティフィー」
「なに?」
「ティフィーは転移魔法使えるか?」
「もっちろん! ルーカスが作ったあの本に書いてある魔法は一通り出来るよ!」
そ、それはすごい……。
まあ、ティフィーは元々魔法に関しては飛び抜けた才能があるからなあ。
俺が苦労して編み出した魔法も、彼女なら一瞬で覚えてしまいそうだ。
それも
「なら話は早いな。俺はコウキを担ぐから、ティフィーは転移魔法を頼む」
「ルーカスがわたしに頼み事……うん! 頑張る!」
ティフィーはやる気がみなぎったような顔つきに変わった。
ティフィーがその気にさせた原因なんて俺にあったか?
そういうところは相変わらずわからないな……。
俺はコウキのもとへ駆け寄った。
「コウキ、今からみんなのところに移動する。俺がお前を担いでいくからな」
俺は仰向けに寝ているコウキを持ち上げ、肩に背負った。
まだ痛みが消えていないようで、コウキは少しつらそうな声を出した。
「すまんなコウキ。ちょっとだけ耐えてくれ」
「っ……まさかお前に担がれるとはな」
「なんだ悪いか?」
「いいや、今までの俺の行いはひどいものだな……」
「全くだ。散々この国を荒らした張本人だしな。罪は償ってもらうが、お前がやれることはまだまだたくさんあるだろ? さっき話したことをやってもらえば、国も国民も安心して暮らしていけるようになるしな」
「ふっ……お前は優しすぎる男だな。普通なら俺を殺すだろうに」
「はは……そうだな。俺は優しすぎるんだろうな」
コウキとこんなことを話せるなんて、今までの俺なら想像できなかった。
しかもあれだけ敵視していたコウキがシャイタン側についてくれるなんて、これまた驚いた話だった。
説得してくれたティフィーのお陰だな。
「ルーカス、準備はいい?」
「ああ」
「――――そういえばホムラとヒカリは?」
あ……あいつらの存在を完全に忘れていた。
2人はまだ意識を取り戻していない様子だった。
とりあえず2人も連れて行くことにした。
「それじゃ行くよ! 『ワラムカリス』!」
ティフィーの詠唱とともに、足元に魔法陣が構築されると、一瞬にして眼の前が真っ白になった。
そしてあっという間にアンラたちがいる場所へとたどり着いた。
「――――!? な、なんすか……あっ、ティフィーたちっすよ!」
「ほ、本当だ! コウキもいるけど……横にいるのは誰?」
「――――っ! ルーカス!」
アンラは俺を見た瞬間に駆け寄って来て、そのまま俺に抱きついてきた。
彼女の目から涙がぽろぽろと落ちていく。
かなり心配をかけてしまったみたいだな。
「ごめんアンラ……何とか合流できて良かった」
「もう! ルーカスはわたしに心配かけすぎ!」
アンラは俺を見上げ、頬を膨らませながらそう言った。
そんな表情も俺からしたら可愛くて仕方ないが、そんなことを言うことは出来なかった。
「ごめんな……もう大丈夫だから……」
「あ、あれルーカスなん、すか……? なんか知ってるのと全然違う姿になってるっすけど……」
「久しぶりだなアキト。色々あってこんな姿になってるけど気にしないでくれ」
俺はアンラたちの元へ歩み寄り、肩に担いでいたコウキに衝撃があまりないように気をつけながら、慎重に地面に寝かせる。
3人はコウキのことが心配だったらしく、すぐに彼の顔を覗き込んだ。
コウキは彼らの顔を見て安心したのか、少し表情が和らいだ気がした。
「さて、ここからが本題だ」
俺の声に、ここにいるみんなは俺を注目する。
まさかこの光景がまた見られるとは思ってもいなかったな。
それに加えて魔王のアンラ、魔王軍の各隊長たちがいるなんて……俺は夢でも見ているかのようだ。
「今から俺とアンラは国王を処す。俺とアンラが伝えた通り、もうこうなったら殺す他方法はない。国王がいなくなるのはこの国がなくなったのと同じことだ。その後この国はシャイタンの支配下に置く」
「ほ、本当にそうする気なの?」
カラーは不安げな声で言った。
「ああ、アーリア王国からアーリア地区に名前が変えるというのが今の所考えているところだ。ただそれだけ。厳密に言うと、シャイタンの管轄内に属しているが、別の国があるって感じだ」
「つまり、今とあまり変わらないってこと?」
「そうだな。国が変わっただけで、基本的に変わらない」
「でも、ルールはシャイタンが使用しているものに従ってもらうわよ?」
七帝は互いに眼を合わせる。
「どう思うっすか?」
アキトの質問に、みんなはしばらく黙り込んで考えている様子だったが、最初に口を開いたのはセイフだった。
「うーん……でも1つだけ言えるのは……僕は今のアーリア王国はもう嫌だよ。ずっと言えなかったけど、何もしていない人たちを殺していくのは辛くて仕方なかったよ」
「――――わたしももう良いわ。目的なくやっているより楽しくティフィーちゃんと居られれば、それだけでわたしは幸せだもの」
カラーはティフィーの頭を撫でながらそう言った。
それに続いてアキトも口を開いた。
「そうっすね。今までのやってきたことが馬鹿らしくなってきたっすよ。それに……」
アキトはみんなの顔を順番に見ると、ふふっと笑った。
「またこのメンバーでやっていきたいっすもん!」
「アキト……」
この言葉は、俺の胸に深く突き刺さった。
俺を含めたこのメンバーでまたやっていきたい、か……。
――――そうか、俺もこいつらとまた一緒にやっていきたいんだな。
こいつらのことが嫌いなわけではない。
「ふっ……そうだな。またみんなであの頃みたいに楽しくやりたいな」
「あとの3人はどうするんすか?」
アキトが後ろを振り向くと、そこにはいつの間にか意識を取り戻していたホムラとミライがいた。
俺と視線が合うと、2人は眼をそらす。
このまま意見を聞けないのは時間がもったいないので、俺から聞くことにした。
「2人はどうしたいんだ?」
「「――――」」
「黙ってもなにもないよ」
「コウキ?」
時間が経って少しずつ体力が回復したようで、コウキはよろっとふらつきながらもゆっくりと立ち上がった。
セイフとアキトが彼の両脇に入り、肩を組ませて支える。
「もう俺たちは負けた。降参だ2人とも。俺はこの国を腐敗させてしまったんだ。どれだけ罪を償っても、償っても……償いきれないくらいに……。ルーカスと魔王……アンラの2人を見てみろよ。種族は全く違うのに2人は愛し合ってるんだよ?」
「「――――」」
コウキの言葉にホムラとヒカリは俺とアンラの方へと視線を移す。
するとアンラは俺の頬に手を当てた。
アンラの方を見ると、彼女の顔が徐々に近づいていく。
えっ? 今ここでそれやるの!? これじゃあ公開処刑じゃん! って思ったが、アンラの顔を見たら、みんなに見せつけたいみたいな顔をしている。
「はあ、しょうがないなあ……」
「ふふっ……。なんだかんだルーカスってわたしに甘いよね」
「誰のせいだか……」
「知ってるよ? わたしのせいなんでしょ?」
「正解」
そんなバカみたいな会話をアンラと交わすと、唇を重ねた。
さあ、周りの反応はというと……。
「「「「「――――!!!???」」」」」
全員してあんぐりと口を開けていた。
まあ、ティフィーだけはムスッとしているが、本心は羨ましいのかな?
あとディージャジャはニヤニヤと笑っている。
いつもより短めで顔を話した。
やってやったぜみたいな顔しないでくれアンラ……。
俺としてはこれ以上ないくらいに恥ずかしいんだよ……。
「――――わーったよ!」
そんな中、突然大声でそういったのはホムラだった。
「コウキがそこまで言うならァ俺はそうするぜ!」
「あんたはルーカスたちのを見て羨ましくなっただけでしょ?」
「は、ハア!? 別にそんなんじゃァねえし!?」
図星だな。
彼は隠してるつもりなようだけど、顔がめちゃくちゃ赤くなってる。
「まあわたしもコウキの言う通りにするわ。あんたたちを見てたらなんか羨ましくなってきたしね……。ねえわたしの言う通りにしてよホムラぁ……」
こ、これは……ホムラを誘惑している!?
あれ、もしかしてミライって……。
ホムラを見ると、
「――――っ」
あ、これは完全にそうだな。
確か2人は幼馴染だっけ?
ほーう……これは熱い2人だなあ……期待できるんじゃないか?
アンラもそう思ったみたいで、ニコニコと微笑んでいた。
「はいはい、お熱い雰囲気は後にして!」
手を叩いてこの空気を打破したのはカラーだった。
さすが七帝のお姉さんだ。
「わたしたちはどうすればいいの?」
「そうだな――――国王は俺とアンラでやる。残りのみんなは……その2人を何とかしてくれ」
俺はそう言ってホムラとミライを指さした。
それに2人はビクリと体が跳ねた。
アキトは2人を見ながらニヤニヤと笑っている。
「俺も行かせてほしい……」
よろよろとふらつきながら俺に近づいてきたのはコウキだった。
「俺のしでかしてしまったことを見届けたいんだ」
彼の眼は本気だった。
まさか、俺との戦いで一瞬にしてここまで変わってしまうとは思わなかったな。
本当にコウキかと疑いたくなるくらいだ。
「わかった。お前も一緒に来い」
「すまない」
俺はコウキに回復魔法をかけ、体力を回復させた。
そして、俺たちは城内へと向かっていった。
これが本当に最後の戦いだ。
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