第7話 夜の襲撃

 何だかんだ、かなり長風呂してしまった。

おかげで少し目眩がする。

 でも、前魔王――アンラの父親と話すことが出来て良かった。

一度会ってみたかったからな。

 ―――さて、そろそろ眠くなってきたし、ベットで寝転がろう。

ふぁぁぁ……。


ガチャ……


「ん?」


「やっほーーー!!」


「なっ、アンラ!? わっぷ!」


「遊びに来ちゃった」


 遊びに来ちゃったじゃないよ!

幽霊来たかと思ったから扉の音で肝を冷やしていたよ。

まぁ結果的にアンラで良かったけども。

 そんなことより―――


「なぁアンラ」


「なに?」


「いきなり抱き着かれるのはその―――」


「嫌なの?」


「イ、イヤジャナイデス」


 しまった!

何故か否定してしまった。

いや、でも無理でしょ。

こんな類に見ない美少女相手に断れるはずがない。

 ―――男子の皆さんならこの気持ち分かるよね?


「とりあえず―――離して貰える?

俺がかなり大変なことになりそうだから」


「ふーん……」


 それを聞いたアンラは何かを企んだような顔をする。

―――なんか危ない感じがする。


「じゃーあ、これならどうかな?」


 そう言うとアンラの体から黒いオーラが出始める。

すると少し容姿が変わった。

背中からコウモリのような、小さい羽が生え始めた。

 もしかして……。


「その姿は!」


「あはは、さすがに分かるよね」


 やはり淫魔サキュバスだ。

淫魔サキュバスは男子の精気を吸い取る魔物。

 昔は男子の天敵と言われていたが、最近は風俗で淫魔サキュバスを利用した店が多くなってきている。

 だって精気を吸い取るっていうことは、性欲を無くしてくれるということだからな。


「さて、わたしのこの淫魔サキュバスの力に耐えきれるかな?」


 まずいな。

アンラの目を見れば、たちまち自分は支配されてしまう。

 俺はアンラの目を見ないように目を逸らした。

しかしアンラは、そうはさせまいと俺の顔をがっちり掴んで、俺の視線のところまで顔を持ってこようとする。

 ベットの上で押し倒されている俺が圧倒的に不利だな。

―――仕方ない。あれを使うか。


「――――あれ?効果が効かない!?」


 お、焦ってる焦ってる。


「な、なんで。なんで直視できるの!?」


「ふふ……甘いなアンラ。俺はこんなだけど元聖帝っていうことを忘れてないかい?」


「――――はっ!?」


 お、ようやく分かってくれたか。

俺は光属性に適性を持っている者だ。

 ……なぜこの淫魔サキュバスの誘惑を無効化するスキルを持っているのかは、自分でも謎なんだけどな。

このスキルを取得したいと思った当時の俺は何を考えていたんだ?


「やっぱりルーカスには叶わないわね」


 そういうとアンラの姿はもとに戻った。

た、助かった。

絶対使わねぇだろっていうスキルがこの時に役に立つとはな……。


「まぁ、そこがいいんだけど」


「なんか言った?」


「な、なんでもない」


 アンラは頬を膨らませてそっぽを向いた。

やばい、その顔も可愛すぎますって。

やっぱ俺近頃死ぬのかな?

 顔が熱い。俺は顔を手で覆った。


「「―――――」」


 暫くの間、俺とアンラは一言も喋らずにいた。

なんか気まずい、恥ずかしい。

アンラはずっとそっぽ向いたままだし、俺はアンラの顔見れないし……。


「ルーカスはさ―――」


 アンラは俺の顔を見ずに話し始めた。


「わたしのことどう思ってるの?」


 どうって言われてもなぁ……。


「じゃあルーカスには本当のことを話しておくね」


 流石に俺もアンラの顔を見て聞くことにした。

アンラも真剣な表情で俺を見る。


「初めてルーカスを知ったのは、臣下からの伝言だったの」

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