奇妙な生態

それにしてもばんも、一度で懲りればいいものを、またバドを見付けると、再び、猛然と攻撃を仕掛けてきた。


とは言え、バドとしても、前回のそれで、ばんの戦闘力と、非常時におけるヒト蜘蛛アラクネの回復についての詳細なデータは得られたので、今回は早々に逃げに転じる。


が、ばんはしつこく追いかけてきた。バドも振り切ろうとするのだが、さすがに密林最強格の捕食者プレデターヒト蜘蛛アラクネ>。逃げても逃げても振り切れない。


物陰に隠れようとしても、ばんは記憶力も優れているらしく、自身の縄張りの中についてはよく把握しているのか、必ず見つけ出してしまう。


だから見付かると駄目なようだ。


なお、他のヒト蜘蛛アラクネの縄張りに逃げ込んでも、ばんはお構いなしで追いかけてくることはすでに分かっているので、それもできない。そうして他のヒト蜘蛛アラクネと遭遇すると、ばんは強いため、逆に殺してしまいかねないのだ。ゆえに、他のヒト蜘蛛アラクネの縄張りに逃げ込むという選択肢はない。


で、今度は、<ヒト蜘蛛アラクネの本体>側の限界を超えてバドを追いかけまわす形になり、再び生命の危険さえあるレベルで疲弊し、蹲ってしまった。


「? ……?」


人間のようにも見える部分はそうでもないのに、本体が動かない。ばんにとっても困惑するしかないようだ。そこまで疲れている実感もないのに体が動かないという。


本当に奇妙な生態である。


すると、前回とはまた別のボクサー竜ボクサーの群れに囲まれてしまう。


となると、また、バドとしては見捨てることもできず、再度ボクサー竜ボクサーを追い払うことにした。


「グゥ……!」


ばんもまたバドに救われたことには気付いていて、悔しそうに歯を剥き出しながら唸った。


なお、ばんの縄張りは、三つのボクサー竜ボクサーの群れの縄張りの一部と重なっていて、結果として、後日、さらにもう一度同じことをやらかした。


『何故一度で懲りないのか?』


と思うかもしれないが、人間だって一度や二度では懲りないタイプもいるだろう? ばんはそれだというだけのことだ。


こうして三度、ボクサー竜ボクサーの襲撃をバドによって救われる形になったばんだが、何しろ、『感謝する』という概念も持たないことで、ただただバドを目の敵するだけだった。


一方、人間にも見える部分が限界を超えて疲弊した場合、ヒト蜘蛛アラクネの本体側が、ヒト蜘蛛アラクネの本体側が限界を超えて疲弊した場合、人間にも見える部分側が、それぞれバックアップの機能を果たし、なんとかもちこたえるという生態がこれにて完全に把握された。


ただ、ヒト蜘蛛アラクネの本体側が限界を超えると、さすがに時間がかかってしまうようで、注意が必要であった。


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