10話

 あれから必死に力加減の練習をして、今は刃物で思い通りに石を斬れるようになった。あんまり進歩してないように感じるかもしれないが、最初はどれだけゆっくり刃物を当てたつもりでも、刃物の刀身の3倍ぐらいは斬れてた。

 石を思うように斬れるようになっただけでも大きな進歩だと思う。ちなみに今の力加減で木を斬っても切断しないようにすることはできないけど。


 そして夜になり、昨日と同じように焼いて肉を食べ終えて、しばらく経っと時のこと。


「あっ」


 突然真夜が何か重大そうな事を思い出したような顔で声を上げた。


「どうしたのー?」


「……ろ……い」


「なんて?」


 だんだんと頭を下げながら真夜が呟くように言って、聞き取れない。


「……ろがない」


「何がないって?」


 聞きとれるように、右耳を向けながら近づく。すると真夜は顔を上げて目を瞑って叫んだ。


「お風呂がないーーーっ!!」


「ぎゃあっ?!」


 突然のことで、反対側に重いきり転げる。


「あ…お姉ちゃんごめんね!」


「大丈夫ー…」


 耳がキンキンするけど、なんとか真夜の言葉を左耳で聞き取る。


「そういえばお風呂なかったね…お風呂、お風呂かあ……」


 服は清潔を保たれてるけど、流石に欲しいなぁ…


「お風呂作るのは魔法良くない…?」


「……つくっちゃえ!」


 そう言って真夜が右手を上げると、結構広くて、しっかりと固まった土で創られた浴槽ができた。私がその中に、土に影響を与えない40℃ぐらいのお湯を魔法で入れた。


 まあ、魔法を使わずに作ろうとしたのは、魔法で作るのが飽きたからであって、縛りプレイをしていたわけじゃないし大丈夫。


 一応、魔法で周りからは見えないようにしてから服を脱いで真夜と一緒に入る。


「「ふぁーー…」」


 2日ぶりのお風呂は、お湯が全身に染み渡り、声が抑えられない。


「えいっ」


プニッ


「もう、真夜!」


 急に真夜が胸を揉んできた。


「あはは、ごめんごめん。相変わらず成長しないなあと思って…私たち」


「……虚しい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る