ミステリの書き方⑥

 大雑把なプロットはできた。分からん。できたと言っていいのか怪しいところはある。けれど、目下の課題はプロット内の至る所に散らばるリアリティコントロールその他だったりする。例えば、


 空き教室でどうやって縊死するん?


 スッ、と脳内に教室を思い浮かべて欲しい。縄をかけて首を吊れそうなポイントはほとんどないのだ。普段は使わない教室ということで、吊り下げ型のプロジェクターがついている教室だとしよう。生徒の体重は五十キロ前後である。耐えられない。私のフィクションに出てくる女子が現実的な体重をしておるのが悪いのだが。


 となると、入り口扉や窓だろうか。メディチ家スタイルである。縄を結び先はどうすんねんとなってしまう。まぁ、これをトリックというか、犯人しかしらない事実にするという方法もなくはない。でも偽装工作者が教師だと状況も知ってそうだしなぁって感じである。


 もっとも、つい最近読んでいたミステリでも、無茶は通している。女子大学生がブロンズ像をシートの上に寝かせて引きずるようにして運んだとあったのだ。いやあんたやってみいやと言いたくなったが、それはそれ。ミステリであっても面白くならない現実は排除して良いのだろう。たぶん。だから教室のど真ん中で首を吊ることにしておこう。


 もう一つの問題、オチの後味が悪いというかキレが悪い問題である。

 これはホラーの作法として幽霊の余韻を残してしまったからであろう。分からんけども。となれば、前回のプロットで破部分が薄かったので、全体を前倒しに進行しておけばよい。んで足らないままだったラストを盛って、珍しく仕事に失敗したなとカイチョーが声をかけてくる展開にすれば良い。良いったってよくわからないが、無難な気がする。


 カイチョー「らしくないな、滔々」

 滔々「何が?」

「噂はまだ残ってる。解決したんじゃないのか?」

「噂を消してくれって依頼じゃなかった気がするけどな」


 なんて感じで、現場を洗い直そうとする滔々。真っ先に確認しに行くのは先の調査で話を聞いたイジメグループ。偽装の辞職とグループ末席の休み続きの影響があるのか、リーダーは滔々の姿に怯えるほど疲れている。リーダーがそんな調子なのでグループは自然解体、元サブリーダーも二年生も半分すぎたしと変化。霊感ある代ちゃんは噂集めだけは変わらないから聞いてみたらとくる。


 で、霊感ある代ちゃんに話を聞くと、事件を機に霊感がどうとかはやめたいと――正確にはやめたいのだという。もし本当に幽霊がいるのだとしたら、私もいずれ呪い殺されるとかなんとか。そうなりたくないから、自分なりに噂のバリエーションを蒐集し、滔々に託す。出現時間はおおよそ決まっている。

 

 滔々は和登との約束を果たすためと称し、女子バスケ部に顔を出す。和登は出ていない。部長に聞いてみると、高校最後の大会が目前に迫っているが、和登は受験勉強もあるからとちょくちょく休むのだと教えられる。


 滔々は確信をもって、目撃情報がある時間帯に教室に赴く。

 戸を開くと、和登が椅子に登り、窓際に立っていた。

 理由を聞けば、何が正解なのか分からなくなったのだという。

 滔々は和登にいう。


「そういうのを、取り憑かれるって言うんだ」


 よし! オチは華麗に決まったっぽい!

 

 しかし、最大の問題がひとつ、浮かび上がってきたのである。


 ……この話、ありきたりすぎて面白くなくない? 

 わからん。まったく分からん。

 プロットを立てたり書いている途中だったり定期的に同じ疑問がわく。いくつか別プロットを立ててみるべきかもしれん。わからん。わからん……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る