意図と意味

 おひさしブリーフ(古語)となる創作のナゾ。よく分からないこと。数ヶ月も置くとどういう書き出しをしていたのか分からなくなる。しかし。今回わからんでいるのは表題のとおり、意図と意味である。


 小説におけるシーン――いわゆる場面とかシークエンスとか、まぁひと連なりとされる文章には、作話上の意図と意味の二軸で分類できるような気がしてきたんであった。うん。分からん。わかりにくい。いきなりナンノコッチャという何かしらのフランチャイズめいた疑問を与えかねない。なので説明したい。自分にも伝わるように。


 事の起こりはリフォームである。

 ったねぇ壁紙クロスを張り替えてもらうはずの朝であった。よろしくお願いしますの社交辞令をドキドキしながら終えて隣室に引っ込んだ暗室の隠遁者ひきこもり(私だ)は、ドシャーン、という金属質な音を聞いた。続いて、痛ってー! という、体育会系の部活で聞きそうな悲鳴もあった。


 急いで木製の天岩戸を開いた隠遁者は見た。クロス屋が太ももをさすっていた。聞けば脚立から落ちたという。死ね。いや死ぬな。事故物件になってしまう。


 気をつけてくださいねと岩戸を閉じてしばらく。また別の業者が隣室に入った。

 脚立から落ちしクロス屋はあたかも武勇伝かのように脚立から落ちちゃったよハハハなんて話しておられた。死ね。いや死ぬな。ていうか。


 ご安全に!?


 内心で叫んでいた。業者への信頼感は深淵を踏み越え奈落に消えた。当然、執筆などできる環境ではない。作業が気になり集中できないのである。何の話だよと思った方は正常である。これが、今回の本題なのだから。


 以上のリフォーム話はすべて真実でジジツ困っておるのだが、それ以上に疑問が湧いたのである。


 この現場猫を地で行く業者の話は創作のナゾに要るのか?


 そう。


 いるかいらんのかで言うと、いらんのである。


 じゃあ、なんで書いたかというと、意図があったからだ。その意図とは、今こうして書いている文章に誘導するためであり、そこまでの繋ぎである。

 

 けれど、意味はない。


 別の話でもまったく問題ないのだ。たとえば、洗面台のコーキングが甘くて地味にキレそうとか、ドア枠のネジ山にひとつ潰れてるのがあるとか、回路をいじっておきながら最後の現場確認をしないで帰ろうとして客(私だ)がミスに気づいて一騒動おきた話でもいいのである。


 というか、作話上の意味としては無骨な説明が最も正しい。


 つまり、意図というのは作者の都合で、意味というのは作話の都合である。今みなさんが読まれているであろう文章が『創作のナゾ』でなく『リフォーム業者のナゾ』であればさきの文章に意味が生まれる。作話上、必須だ。


 しかし、これは創作のナゾなので、業者への愚痴に意味はない。でも、なんか変な話が始まったゾ、と読み手をリードしようという作者の意図が込められているのであります。


 であります。もそう。そうする意味はない。でもその方がクスっときて読みやすかろうという意図があるのだ。


 この塩梅が、クソもというウンチ難しい。分からん。


 基本、小説のシーンには意図と意味の二軸があって、それぞれがある、それぞれがない、どちらか片方だけがあるの四パターンに分けられそうな気がしている。もちろん、厳密には淡いグラデで緩やかなトーンカーブを描く。それの何が分からんって、


 意図はあるけど意味がないシーンはいるのか問題である。


 どうたらこうたらいう効果を狙って、どうでもいい(後に絡んだりもしてこない)描写をいれるべきか、作話に必要なもの以外は省いてしまっていいのかどうか。


 まあ、今みたいに紙幅に追っかけられてるなら削ったほうがいいのだろうけども。

 分からん。まったく、わからん。

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