削り
他所様のところで色々と偉そうに講釈を垂れていて(最低である)、ふと分からなくなったのである。私は普段どういうふうに削っているのか。何をって、創作の謎なんだから小説の文章をですよ! エクスクラメーションは雰囲気です。
さて、ここでいう削りとは何か。
私はかつて『たとえ空を落としてでも』という一九〇ページ(本の形にすると三八〇ページ)くらいの小説を、一三四ページにしたことがありまして、何をどうやってそんなに削ったのかという話です。
ページ数でいうと六〇ページ弱ですが、文字でいうと約四万字でした。漢数字表記と算用数字表記が混じっていて気持ち悪い。
いちおう、なんでそんな話になったのかという経緯を説明させていただきたく。
私の小説の文章はスリムらしい(意訳)。よく分からん。なんとなく言いたいことは分かるのだが、単純に濃ゆい文章が書けないだけの気がしてならない。が。褒められれば悪い気はしないので、なぜそんな文章なのか考えようと思った。もっと短く言え。
で。
具体的な削りである。
私は、常に行を減らそうと試みている。四二文字かける三四行で書いているので、三四行を削れば一ページ浮くという算段だ。そのために、まず完結させる。
完結した小説の章立て(だいたい四~五にエピローグ一~二枚がつく)を確認して各章のページ数を把握する。一般的な起承転結ないし序破急で言えば、起承や序が長いはずだ。状況を設定するのに文章量がいるからである。
逆に、急展開する転や破(の特に要所)は少なくなる。分かりやすく起承転結で文章量を表すと、承>起=結>転みたいなイメージをしてほしい。現実的には章ごとの役割はそこまで明確じゃないけど。
でまぁ、先にページ数を決めてしまう。
全部で五章立て百五十枚あるとして、プロローグが六枚、エピローグが八枚、一章が三十、二章が三十七、三章が三十六、四章が二十八、五章が三十二だとしよう。私なら同じ並びで、五、五、二十、三十、三十、二十、二十の百三十枚にする。なんで百三十かと言えば公募の限界値がそれくらいだから。
ページ数が決まれば、あとは削るだけである。どう削るか。分からん。
具体的にやっているのは、とにかく行を減らしているだけだ。短い台詞はまとめてしまう。行を跨いで上の数文字でちょんぎれる文章は言い換えて一行にする。
十枚とか削ろうとすると、そんなもんでは全く足りん。断言である。
となれば次は描写を削ろうとなる。ここで重要なのは、何を描写したいのか意識することである。内容は変えたくないが削りたい。このワガママ娘(私だ)をなだめすかすには、意図をはっきりさせるしかない。
たとえば、雑然とした部屋の描写があるとする。
雑然とした部屋だった。テーブルには潰されたビールの空き缶が転がり、灰皿には押し消した煙草の吸い殻がうずたかく積もっている。部屋には煙と汗臭さが充満し、床に散らばる衣服はいずれも年季の入った汗染みが――。
こんな感じに。
しかし、場所の設定だけなら、最初の一文だけでいいのだ。なんなら、
「散らかってるけど勘弁してくれ」
この台詞で事足りる。しかし、人物像を出したいのなら
雑然とした部屋だった。テーブルにはビールの空き缶が転がり、煙草の吸い殻が灰皿から溢れそうになっている。
くらいはいるかもしれない。分からん。私はこれだけでテーブルで向かい合って話している風景を想像するが、人によってはその先もいるやもしらん。いずれにしても描写をしたことで発生する効果を意識しなければならず、たとえば先の濃厚な描写は嫌な雰囲気を文字数。
長くなりそうなので――削れよ。
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