シンママに恋したら娘《ロリ》をオススメされました。
黒糖はるる
序章
幸せな家庭を築きたい。
それは多くの人が願っている、漠然とした憧れだと思う。
愛する相手と結ばれて、元気な子供と一緒に、賑やかな食卓を囲む。平凡だけどかけがえのない、そんな家庭を持ちたい。
そう望むのはおかしくない、生き物としてごく当たり前な欲求だろう。
でも、そんな簡単に手に入る訳じゃない。
仕事と家庭を頑張り、子供を育てていけるのか。
その前に自分の子供を持つことが出来るのか。
そもそもパートナーと結婚まで辿り着けるのか。
そして大前提として、好きな相手に愛の告白をして、お付き合いすること自体ハードルが高過ぎじゃないか。
問題はそれだけじゃないだろう。
この人しかいないって思っていても、相手は全然好きじゃないのかもしれない。
もしお付き合い出来たとしても、気持ちが合わなくてフラれたり浮気されたりするかもしれない。
たとえ結婚したとしても、途中でそりが合わず離婚することだってあるし、子供が生まれないままかもしれない。
最悪の場合相手にいいように扱われて、金を搾り取られた挙げ句捨てられることだってあり得るんだ。
現実は厳しい。
ささやかな夢を胸に抱いていても、それすら叶わないことなんてザラにある。
自由恋愛という名の戦場で勝ち残り、好きな相手を射止めて結婚し、家庭を維持しないといけない。
そんな過酷な戦いをくぐり抜けて、なおも戦い続ける人にだけ与えられるのが、世間一般の言う「幸せな家庭」というものなんだ。
とてもじゃないけど、僕には無理そうだ。
誰かを好きになってもその気持ちを伝える勇気はないし、子供を育てていくなんて不安ばかりが先行してやっていける気がしない。
小さい時から漠然と持っている夢だけど、このまま永遠に叶いそうにない。
……なんて思っていたのに、もう手に入ってしまった。
まだ僕、高校生なんですけど。
「それでねそれでね。りりか、かけっこでいちばんだったんだよ!ねぇねぇ、すごいでしょ~♪」
くるくる癖っ毛のボリュームあるツインテールを振りながら、保育園の出来事を朗らかに話す子供。澄み切って無邪気な、見ているこちらも嬉しくなる天使の笑顔だ。
「こら、
「はーい、ごめんなさーい」
母親に怒られたので、口を閉じてもぐもぐ。
「――ごくんっ。……えっとね、それでね!かけっこしてからね……――」
そしてしっかり口の中を空っぽにしてから、また保育園の話を続けている。目をキラキラさせて見つめており、すぐに終わりそうにない。話したいことが山ほどあるみたいだ。
僕は同じテーブルで食事をしている。というかそもそも、ここは僕の部屋だ。別におかしいことなんて何もない。
だけど隣にいる子供も母親も、僕の本当の家族じゃない。ただのお隣さんだ。なのにどういうことか、一緒に食卓を囲んでいる。
「ほら、
「は、はいっ」
ずいっ、と豊満な胸が視界いっぱいに広がる。まだ高校生の身には刺激が強くて、思わず返事が裏返ってしまった。
茶碗の上にご飯を乗せているだけなのに、無防備な仕草が心臓に悪い。隙間から肌が見えるラフな部屋着というのも相まって、刺激に拍車をかけている。
僕のことが一人の男性として、全く眼中にないということなんだろう。僕はあなたのことが好きなのに、完全に脈なしみたいだ。
「あー、ゆーとさん。おかおまっかにしてるー。ママのおっぱいすきなんだー」
「えっ!?……いや、これはその……そういうことじゃ……っ!」
「でも、そんなかわいいゆーとさん、りりかだいすきだよ~❤」
「う、うん……ありがとう、梨々花ちゃん……」
なのにどうしてなのか、子供の方からは熱烈な愛情アタックだ。腕に絡みついてきて、ぷにぷにほっぺをすりすり。幼児特有のほんのり高めの体温が、肌同士の触れあいで伝わってくる。
「どうせ子供の言うことでしょ?」と一笑に付さないでほしい。この子の思いは本気のようで、しかも特大のお墨付きなんだ。
「うんうん。ママ似なら、梨々花もおっぱい大きくなるからね。きっと悠都君も大好きになってくれるよ!」
「わ~い、ぜったいおっぱいおおきくなる~♪」
「ちょ、何言ってるんですか
ご覧の通り、娘とのお付き合いが母親公認なのです。とはいえまだ幼児なので、本格的な話は成長してからということになってますが。
……って、僕が好きなのは子供の方じゃなくて、あくまでも母親の方だから。まだ諦めていないから。
まぁ、告白するような
ああ、どうしてこんなことになってしまったんだろう……。
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