ヒロインなのに闇の力が究極です

ひるねま

第1話

一人の拗らせた女が、阿保な顔をして突っ立っている。

鏡をまじまじと見て、何やらひとりでぶつぶつとつぶやいている。

金色の髪に赤い瞳、年齢は若い。

「この顔、私、知ってるよ」

自分一人しかいない空間で、鏡に向かって話す女。

阿保な子の次は、危ない子になろうとしている彼女。

「これって、なんかの作品のヒロインの子よね?」

近頃、令嬢物の作品にどっぷりはまっていた林れいな20歳。

読みすぎたことが仇となり、肝心な作品のタイトルをど忘れしてしまっていた。

「こんなことになるなら、作品のタイトルくらい覚えていればよかったわ。」

でもよかったわ、この顔は知っている。

ヒロインに間違いない。

ただ、私の嗜む令嬢物の作品の主人公はどれもこれも悪役令嬢がヒロインのモノばかりだったのだから。

それなら平和なエンド間違いないからいいのだけれど。

悪役令嬢は、本来の悪役を放棄しているわけだし、そのライバルのヒロインも私なのだから。

悪役令嬢とヒロインのイケメン王子争奪バトルが繰り広げられない時点で、物語が始まらないというのは困ったものだけれど、知ったこっちゃない。

誰とも争わない異世界ライフを楽しみましょか。


「アイラ様!!」

ノックをせずに若い男が声を張り上げた。

「んなっ!?」

あまりの唐突な朝の挨拶に驚いた私は何かを発動してしまったようだ。

手からあふれる、毒々しい色の液体が眺めていた鏡を跡形もなく溶かしてしまっていた。

騎士のような男は目をこすり、私の手を4度見ほどした後

部屋から出て行った。

「ご報告があります!!アイラ様のお部屋の鏡が、溶けていました!」

さっきの騎士と、父親と思われる大男が何やら私の部屋の話をしていた。

父親らしき男は、騎士の肩に手をのせ

「お前も疲れているんだな、今日は休め」

「御意」

何やら、私はおかしな力を発動してしまったようだ。

大男、いや、父親のもとへ挨拶をしに、1歩2歩3歩と歩む。

どごんっ!!

足の小指を椅子の角にぶつけてしまった。

あまりの痛さに、声にならない悲鳴とともに、何やらおぞましい球体が発現してしまった。

その球体をしばらく見つめていると、机の上に並べられていた朝食や、布きん、高そうな食器が吸い込まれていった。

「これぞ、ブラックホール」

だめだだめだ、こんなのんきなことは言っていられない。

ヒロインらしからぬ属性魔法。

ヒロインと言ったら光属性だとか水属性、あるいは火属性だろう。

どうして、こんなに、魔界感漂う闇属性なのだろうか。

まあ仕方がない。

私は切り替えが早かった。

闇魔法の使い手か。

林れいなは、オタクであった。

ジャンルは様々。

勇者系、英雄系、無双系なんでも嗜んだ。

そんなこともあり、阿保で危ないホロ院令嬢になったようですが、これからは、最強冒険者、めざしたいと思います。


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