超プロ野球ナイター ~アルティメットスーパープロフェッショナルベースボール~ フロンツ対バッカーズ(ナイトゲーム)九回裏1-2

佐倉じゅうがつ

ノーアウト・ランナー無し

「フロンツ、選手の交代をお知らせします。九番、瀬戸に代わりまして、ピッチャー、正武」


 バッカーズ対フロンツの試合もいよいよ大詰め、九回の裏、フロンツの選手たちが守備につきます。マウンドに上がるのは守護神、正武! 一点差を守りきれるか!


「ワアアァァーー!」

「がんばれがんばれ正武! がんばれがんばれ正武!」


 お聞きください、レフトスタンドの大歓声。正武は今シーズンすでに二十セーブをマーク。まだ失点がありません。

 解説の阿野和座あのわざさん、今年の正武は安定感がありますね。


『そうですね。やっぱり彼の”決め球”ですよね、これまでも大きな武器でしたけど、今年は特にコントロールがよくなってますね』


「一番、センター、銭湯田せんとうだ


 バッカーズの攻撃は、一番の銭湯田せんとうだから始まります。なんとか四番の左様奈良さようならにつなぎたいところです。ピッチャーふりかぶって、まずは初球!


双三極疾風竜巻ダブル・トリプル・ハリケーン!!」


 初球から出ました! 必殺の双三極疾風竜巻ダブル・トリプル・ハリケーン! 荒れ狂う竜巻が内から三つ外から三つ! うねりにうねって襲いかかる! まるで怒り狂うヒドラのようだ!

 銭湯田せんとうだ、まったく動けません!


「ストライク・シックス! バッターアウト! ネクストバッター・トゥー!」


「ワアアァァ!!」


 決まった! 銭湯田せんとうだ、まったく手が出ませんでした! ストライク六つがカウントされて二者連続三振の判定となります! 阿野和座あのわざさん、いかがでしたか?


『初球から来るとは、バッターも想像してなかったでしょうね! 六球全てストライクゾーンに決まりました、ナイスピッチングですね!』


 くやしそうな表情の銭湯田せんとうだ、塁に出ることはできませんでした。二番打者の番藤も無念の表情!


「三番、ファースト、サンバンデス」


 ツーアウト、ランナーなしで右打席にはサンバンデス。今シーズンからバッカーズに加入。故郷のエキチカ共和国からエスカレーターでやってきました。今日はまだヒットがありません。


『ヒットにはなっていませんが、バットの芯でとらえた打球がありましたからね、この打席で結果を出したいでしょうね』


 サンバンデスの狙いはどのコースになりますか?


『バッターにとっては狙いどころが難しいですね。あのボールを見せつけられてますから』


 双三極疾風竜巻ダブル・トリプル・ハリケーンの残像が見えているわけですね?


『連続で投げてくる可能性は限りなく低いでしょうが、バッターとしては頭に入れながらのバッティングにならざるをえないですね』


「プレイ!」


 なんとか四番につなぎたいサンバンデス! フロンツは勝利まであとアウト一つ! 二球目を……投げました!


双三極疾風竜巻ダブル・トリプル・ハリケーン!!!!」


 なんと連続で来たあ! しかしこれはどうだ! 竜巻がさっきよりも広くバラけております!


『少し指のかかりが甘かったですね!』


 サンバンデス、バットを振る! しかし竜巻は六つ! どうだ! どうだ! 打った、打ちました! 一つに狙いをさだめ、なんとか当てました! しかし打球は大きくきれて……ファウル!


「ファウルボール・ワン! スリーボール・ツーストライク!」


 判定はフルカウント! かろうじて三振をまぬがれました、サンバンデス!


『すばらしいバットコントロールですね! 不規則にうねるボールですから、一つでもバットに当てるっていうのは大したものですよ!』


 阿野和座あのわざさん、よもや三球連続……というのはどうでしょう?


『いやー、双三極疾風竜巻ダブル・トリプル・ハリケーンっていうのは百球ぶんくらいのスタミナをもっていかれるんですよ。負担を考えると難しいでしょうね。今の球もいくつか抜けてましたから』


 それほどすさまじいものなんですね。


『僕も何度か投げてましたけど、ホントにしんどいボールなんです』


 阿野和座あのわざさんは現役時代、投げる回数に制限をかけていたそうですね。


『ここぞというときに、一年で三十球までと、監督やコーチと話し合って決めてましたね。あと、投げた日はキャッチャーにおごってもらったりとかしましたね』


 そうなんですか! えー、正武は……昨日までに十球、双三極疾風竜巻ダブル・トリプル・ハリケーンを投げています。それが今日の投球で十二球になりました。


『一日に二回も投げたのは非常にしんどいと思いますね』


 交代はありえますか?


『本来なら、交代するべきだと思いますよ。しかし彼はチームの守護神ですから。最後まで俺に任せろと、そしてベンチもお前に任せたぞと、そんな心境でしょうね』


「あと一球! あと一球!」

「かっとばせ! サンバンデス!」


 二球で締めくくりたかった正武。それを許さなかったサンバンデスの意地! 本日、七月七日は最高気温が三十度を超えました。汗がしたたり落ちます、マウンド上の正武!


「あと一球! あと一球!」

「サンバンデス! サンバンデス!」


 両チームのファンから熱い声援が飛び交います。


 ゲームセットか、それともバッカーズが望みをつなぐのか。ネクストバッターズサークルには、四番の左様奈良さようならがいます。キャッチャー、外に構えて……投げた!


「ボール・フォア!」


「オォー!」

「ああー!」


 内角低め、いいところですが、わずかに外れました! サンバンデス、執念でフォアボールをもぎ取りました!


『よく見ましたね今のはね!』



「四番、サード、左様奈良さようなら

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