第4話 修也君

季節は夏になっていた。

朝、蝉の声を目覚ましに、起きるこの季節が私は大好きだ。


 私は、あれからも彼の子供に逢いたくて店に通った。

修ちゃんの赤ちゃんから漂う匂いは、ミルクの匂いと親子だからか修ちゃんに似た匂いだ。その幸せな匂いは、私を虜にしていった。

彼の子供に逢うことは、苦痛ではなく、むしろ幸福を感じていた。


 彼の息子は修也君と言った。修也君はとても可愛かった。

お母さんの背中に背負われているのが大好きで、いつも上から私達お客様を見ている。

その上から目線のふてぶてしさが、更に愛くるしかった。



 カフェに通うにつれに彼女とも仲良くなっていった。名前を紗綾さんと言った。

 最初は修也君を真近で見たいと言う不純な動機で近づいた。

それが気付けば、彼女の明るい話題と朗らかな人柄に惹かれていった。

彼女の笑顔は眩しく太陽のように、冷えた心を溶かしていった。

いつの間にか彼女は大好きな人になっていた。

修ちゃんが、彼女に惹かれるのも納得できた。

ただ、大好きになればなる程、彼女に自分の事を隠している事が心苦しかった。

そして、何より彼女を好きになれば好きになるほど、私が二人の邪魔をしている魔女みたいで、心が蝕まれていく痛みを感じた。


こんな形でなく出会えていたら、最高の友達になれたのに。

こんなこと、いつまでも続けれない。

修ちゃんに気付かれる前に止めないと。

紗綾さんを傷つけてしまう。

これで最後と言い聞かせながら、誘惑に負けてもう何度樹雨に足を運んだことか。

今日こそ最後にしよう。また今日もそう思いながら店に入った。


 

 


 

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