バクになりたい兎の日記

幾兎 遥

血の気の狂った、白と紅の夢。

鬼ごっこは一番最初に年下に捕まった。たまにある、着ぐるみを着て走らされている感覚で、日頃以上にのろまになっているふうではあった。


もうとうの昔にお別れしたはずの同級生や嫌いな教師たちとまた一緒だった。離れたくて抜け出した先で、貴方の奥さんに出会った。


おかしなことに、会ったこともない私の顔を、貴方から聞いていたという特徴だけで当てしまった。


貴方のことをもう少し詳しく聞きたかったのだけど、たまたま居合わせた知り合いに邪魔されたから、奥さんからちょっと話を聞いて自己紹介をするだけになってしまった。初対面の私にも気さくないい人だったよ。


それで奥さんは、貴方から預かっていたホチキス留めのプレゼントを私に贈ってくれた。嬉しかった。これは本当に。でも、実年齢より若く見せたはしゃぎようでお礼を言う私は、やっぱりどこか演技じみていて、相変わらず嫌いな私だった。



プレゼントを部屋に持ち帰って。それでも私は、白くてひんやりした床に右耳をつけて横になる。中身に詰まっているだろう貴方のやさしさを読む勇気もない。表紙だけを、よく頑張った!なんて書いてくれているのを目に映しながら、いつものようにこう思っているの。


ああ、─────。


何故だか左手首が、かつての紅みを取り戻していた。

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