オーク四天王
オーク四天王の残り三匹が襲ってきた。
しかも俺たちを侮ることなく3匹同時にだ。
俺が鑑定してみると、ただのハイオークではなくやはりオークジニアスであった。
オークジニアス・ウォーリア(戦士)
オークジニアス・ネクロマンサー(死霊使い)
オークジニアス・クルゼーダー(騎士)
しかもこいつらには破壊王ジャックだの闇の王プルトだのヤバそうな二つ名が付いている。
戦況を分析したエリンさんがメンバーの割り振りを提案する。
「一匹あたり2人かな?」
エリンさんの提案に対して反対する者がいた。
セレスさんだ。
セレスさんの意見は違った。
「死霊を召喚するネクロマンサーを二人で相手にするのは危険だわ。私とエリンとニケで相手するから、ウォーリアーとクルゼーダーをマルクとアレンとタナオカさんの3人ででどうにかして」
「了解」
ネクロマンサーは死霊使い。
次々に死霊を呼び出すので二人だけだと死霊の数が増えた時に勢いで押し切られる。
逆にウォーリアとクルゼーダーは物理系なので召喚する能力は持っていない。
マルクさんとアレンさんで一匹づつ担当して、俺がポーションを使った回復役をすればどうなるかな?と思っていたら全然違った。
「回復なんていらねー! 殺られる前に殺る!」
とのことで俺も攻撃に参加することになった。
さすがにオークと言えどジニアスともなると普通に話しやがる。
『雑魚ネズミ共が! わしらに
『我らの安寧を脅かす人間どもに死を!』
それを聞いたアレスさんがキレる。
「どこのどいつが安寧だと! 俺の村を襲って仲間を!親を!親友を!家族を!襲ったのはどこのどいつだ!」
アレスさんはオークを根絶やしにする理由を再確認した。
斬りかかるアレスさん、それをギリギリで躱して反撃をするウォーリア、アレスさんはその攻撃を受け流すと同時に斬りかかる。
一進一退の攻防が続いた。
俺も攻撃することになったもののこんな隙のない戦いに参戦したら邪魔にしかならない。
そもそも俺の場合は
まずは定番のサンドイッチ攻撃だ。
これはニケさんに新たに作って貰ったもの。
「またニケさんのお弁当が食べたいな」と言ったら作ってくれた。
愛情のたっぷり詰まったお弁当だけど武器に使う。
騙したようでごめん。
最近クリムさんのとこに通い始めて料理の勉強をしてるせいかニケさんの料理の腕が少し上がったのでオークジニアスに効くか少し心配だったけど、効いてる効いてる!
まだ武器としていける、十分いける!
サンドイッチを喉に放り込まれたウォーリアとクルゼーダーは気絶こそしないものの明らかに動きが鈍っている。
俺は次の搦め手を使った。
アイテムボックスへの取り込み。
だが、さすがにオークジニアスともなると取り込めなかった。
アイテムボックスのスキルレベル以外にも取り込みの条件があるっぽい。
ならば装備のぶんどりだ。
武器と防具をアイテムボックスに取り込む。
こっちは上手くいった。
これで攻撃力も防御力も激減、目の前にいるのはただの豚だ!
アレンさんとマルクさんの通常攻撃がクリティカル攻撃並みの破壊力へと激変。
ウォーリアは素手でも戦っているが、いつも槍と盾を手放さず素手で戦ったことのないクルゼーダーはどうやって戦えばいいのかわからず完全に棒立ちだ。
本来は守りが固く厄介なクルゼーダーだったけど、その自慢の防御力が失せた今は完全に雑魚である。
マルクさんが矢を連発してあっという間に倒してしまった。
「おっしゃ! クルゼーダーは倒したぞ!」
「じゃあ、俺がウォーリアの気を引くからマルクとタナオカさんで倒してくれ」とアレスさん。
「おうよ!」
マルクさんは矢を連射、俺は石をぶち当てまくる。
さすがのウォーリアも裸で攻撃を受けまくるのは辛い。
撤退しようと背を向けたので、試しにアイテムボックスに残っていた鉄のインゴットをぶち当てたらすげー効いてるというか一発で首がぶっ飛んだ。
オーク四天王を瞬殺するインゴットこえぇぇ!
「おし! じゃあネクロマンサーの加勢に行くぞ!」
アレスさんの指示でネクロマンサーの元にやって来たんだけど、とんでもない事になっていた。
なんと死霊を召喚していたのだ。
その数3体。
それもただの死霊ではない。
召喚していたのは……。
ついさっき倒したマジシャンとウォーリアとクルゼーダーじゃねぇか!
しかも俺がアイテムボックスに取り込んだはずの武器と防具も復活している!
大幅パワーアップだ。
「しかも物理攻撃が効かねー!」
マルクさんが騒ぐのを見て、セレナさんがため息をつく。
「死霊は魔法生物扱いだから物理攻撃は無効、聖属性魔法と炎属性魔法しか効かないのよ」
「マジかよ! セレナ、死霊には回復魔法が効くはずだからそれでなんとかしてくれ」
確かに回復魔法なら死霊を倒せる。
でもそれは色々と条件があるわけで……。
「そんなことぐらい知ってるわよ。でもね、回復魔法は単体対象の魔法だから敵一体にしか効かないわ。それに元々は回復魔法だからそんなに攻撃力は無いの」
「糞! ネクロマンサーがいるのが解ってたんだから、チームでの討伐に拘らずに炎魔法が使える魔法使いを連れてくれば良かったな」
後悔するアレスさん。
マルクさんが気落ちするアレスさんの背中を叩く。
「今更後悔しても仕方ねぇ! 俺が
「わかった!」
火矢を射りまくるマルクさんとエリンさん。
でもあんまり効いていない。
「全然効いてないんだけど!」
「やっぱ矢は物理攻撃扱いになるのか?」
苦戦しまくるマルクさんとエリンさん。
死霊の放つ攻撃は物理攻撃なので矢で受け流し出来るのが幸いだ。
俺は試してみたいことを思いついた。
「マルクさん、すいません。敵を思いっきり遠くまで連れて行って貰えませんか?」
「出来ると思うけど、なにをする気なんだよ?」
マルクさんは何度か危ない感じになりながら、ウォーリアを中央塔の麓まで連れて行った。
マルクさんからリンクリング経由で連絡が入る。
『この辺りでいいか?』
「はい! じゃあ、今すぐ全力で逃げてください!」
『どこに?』
「どこでもいいです。とにかく今すぐ遠くに逃げないと死にます!」
『マジか?』
俺はマルクさんが大慌て逃げ始めるのを確認すると俺は火球を放った。
それはそれは大きな火球。
地面を抉りながらぶっ飛び突っ走る。
速度はアイテムボックス経由のためかブラッドストームの時とは比べ物にならないぐらい速い。
これは絶対に避けられない攻撃。
おまけに俺のお得意のピンポン玉火球とは全く違った。
「タナオカさん、どうやって魔法を?」
一瞬でウォーリアに着弾する灼熱の大火球。
ウォーリアは欠片も残さずに吹っ飛びこの世から消え去った。
「タナオカさんがそんなすごい魔法を使えるとは思わなかった」
ただただ感心するアレンさん。
ニケさんも俺に惚れ直している。
「タナオカさんはやっぱり凄いね」
俺はネタバレをする。
「実はこれ、エリンさんを助けた時に取り込んだブラッドストームの隕石です」
「隕石なの? でも、それって魔法だよね?」
「いや、隕石です。あくまでも物理の隕石」
「でも、当たったら魔法扱いか……タナオカさんはなんでもありだな」
まあ、元が魔法だからね。
スキルレベルが足りないのに魔法をアイテムボックスに取り込んだ俺がおかしい。
再びマルクさんに頑張って貰ってクルゼーダーも誘導しブラッドストームで撃破!
残るはネクロマンサーだけ。
俺はネクロマンサーにも隕石を放つ。
だが、ネクロマンサーは避けた。
ネクロマンサーは剣士を召喚、そして隕石を切り落としたのだ。
真っ二つとなった欠片が遠くで大爆発を起こしている。
剣士を見て俺以外のみんなが驚いた。
「嘘だろ?」
「まだ成仏してなかったのかよ?」
「お兄さん……」
召喚されたのはニケさんの実の兄、マンクスさんの死霊だった。
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