アイテムボックスの正しい使い方 ― クラスごと集団転移しましたが、クラス一番の雑魚の俺は勇者パーティを追放されたけどアイテムボックスの使い方を工夫したら最強でクラスメイトが雑魚に見える件。

かわち乃梵天丸

第一章 いきなり異世界召喚

いきなり異世界召喚

※異世界コメディです。


 夏休み前の終業式を控えたその日、それはやって来た。


 ブオンと低い唸り音と共に巨大な魔法陣が気怠い暑さに満たされた高校の教室の床に現れるいくつもの青いライン。


 これはアニメでよく見る魔法陣ではないか!


 しかも教室の床全体を覆う大きさ。


 何故に魔法陣が教室に?


 誰かの悪戯なのか?


 なんて事を考えていたら床の魔法陣が激しく輝きだす!


 うお! 眩しい!


 陰キャの俺には夕暮れの太陽以上の明るさは致死攻撃。


 まともにまばゆい光を直視してしまった俺は「目が―! 目がー!」と、どこぞで聞いたセリフを叫びながらゴロゴロと床を転げまわる。


 しばらくゴロゴロと床を転げまわっていたら視力が回復したので目を開くと、運よく?俺の唯一のヲタ趣味のライバルである陰キャ女子のユッコの真下に来ていた。


 ちなみにこのクラスで普通に話せるクラスメイトはユッコだけなのは秘密だ。


 心配そうな顔で俺の顔を覗き込むユッコ。

 

「だいじょうぶ?」


 ユッコは単なるヲタライバルと思っていたら意外とかわいいとこがあるじゃないか。


 まあ、それは置いといて……。


 俺はユッコの足元に転がっていて、目の前にはユッコのスカートが見えるし、ちょいと体勢を変えればスカートの中も覗けそう。


 どんなダサいパンツを履いてるか興味があったのでスカートの中を覗こうとしたら「死ね!」と言われて思いっきり顔を踏まれて鼻血ブーだ。


 床の上の光る魔法陣に気が付いたクラスメイトたちから起こるどよめき。


「なんだよこれ!」


「なんで床が光ってるの!」


 魔法陣の光は更に輝きを増すと、俺を飲み込みクラスメイト三十八名と担任の英語教師も光の中に飲み込まれた。

 

 *

 

「はっ! ここは何処だ?」

 

 光に飲み込まれたあと、しばらくの間意識が飛んでいたらしい俺。


 意識を取り戻した俺はガバット起き上がった!


 辺りを見回すがここは見慣れた教室では無い。


 どこかのだだっ広い神殿ぽい所だった。


 ピカピカに磨き上げられた固い床がひんやりしててお尻が冷たい。


 それに結構長い時間横になっていたのか背中が痛い。


 目の前には祭壇と言うか演台のようなものが有りその両端には不気味な怪物の石像が何体かそびえ立っていた。


 この石像はガーゴイルと呼ばれるファンタジーな生き物に似てるな。


 剣と魔法のロールプレイングゲームで見た事が有る。


 たしか恐竜みたいな格好してるのに大して大きくもない翼で空を飛ぶ変な敵だった。


 俺が映画で知ったヲタ知識によると、アメリカのビルの上には魔除けでガーゴイル像が設置されたりするらしいけど、リアルで見るのは初めてだ。

 

 大勢のクラスメイトが気絶して倒れている中に一際ひときわ目を引く女の人が立っていた。


 誰だろう?


 どう見てもクラスメイトではない。


 年齢は俺と同じぐらいで、日本人ではない凄く綺麗な女の人だ。


 日本製のゲームの中に登場する繊細な顔立ちの金髪の美少女。


 東洋系の可愛さと、西洋系の綺麗さを兼ねさせたような感じの美少女である。


 思わず一目惚れしてしまいそう。


 その少女は身分の高さを示す上品な服を着てガーゴイル像の横に立ち心配そうに辺りを見廻していた。


 ローブのような服を着たおっさんたちが慌ただしく動き回っているのも見える。


 俺の貧相なボキャブラリーではうまく表現できないんだが、あれだ。


 ゲームの中によく出てくるだろ?


 冒険者が死んだら復活の魔法で蘇らせる教会にいる神官さんだ。


 神官のおっさんたちは何グループかに別れて召喚されたクラスメイトを一人ずつ引き起こしてはなにかを調べていた。


 なにしてるんだろうな?


 俺は近くにいたおっさんに聞いてみた。


「なにをしてるんですか?」


「おお、勇者様! お目覚めですか」


「勇者?」


「あなた様は異世界から勇者様でございます」


 あー、さっき教室の床に現れた光る線はガチの魔法陣で、ガチに異世界召喚されたわけか。


 まあ、運動音痴で成績の悪い俺が異世界に召喚されても剣を振れるわけもなく、魔法を覚えられるわけもない。


 勇者召喚に巻き込まれた一般人以下のポンコツ生徒だ。


 おっさんはキラキラした目で俺を見つめながら話を続ける。


「実は今、この石板で勇者様たちの能力調べて誰が今回の召喚のメインターゲーットである真の勇者か『勇者鑑定』をしてるんですよ。それではあなた様の能力ステータスも早速計測を!」


 有無を言わさずに俺の額に石板があてがわれた。


 するとおっさんたちから上がる声。


「こっこれは!」


「マジか?」


「激レアスキルじゃないですか!」


 俺の額に石板を宛がった神官たちから驚きの声が上がった!


 それも大声で!


 上司っぽい神官も石板を覗き込む。


 すると再び驚きの声が上がった!

 

 それもすごい大声で!


「うおおお! 【MP消費ゼロ】だと! 大当たり中の大当たりの激レアスキルじゃないか!」


「真の勇者様はこのお方で確定ですな!」


「そうだと思います!」


 上司っぽいおっさんがうやうやしい態度で俺に声を掛けてくる。


「申し訳ございません、勇者様のお名前はなんと申しますか?」


 おっさんたちは真顔で俺に名前を聞いてくる。


 おっさんたちのキラキラした目を見てると無視するわけにもいかない。


 仕方なく俺は貴重な個人情報である名前を教えてやった。


棚岡たなおかです」


「勇者タナオカ様ですか。ではこちらへ! 王女様に謁見えっけんしましょう!」


「謁見ですか?」


 戸惑って立ち尽くしている俺の腕をおっさんが持つと抵抗できない程の強い力で引っ張る。


 そんなに強く引っ張ると腕が抜けるから!


 行くから、行きますから、マジ乱暴は止めて!


 *


 王女の前に連れて来られた俺。


 連れて来られたのはさっき見た綺麗な顔の美少女の前だ。


 小ぶりなお胸と金髪でまるでおフランス製のお人形様みたい。


 結構俺好みの可愛い系だったりする。


 思わず顔が熱くなる俺。


 しゃーない。


 こんな美人の女の子の前だと彼女いない歴十七年の俺は舞い上がってしまう。


 そんな俺を神官のおっさんが紹介する。


「王女様、勇者召喚のメインターゲットである真の勇者のタナオカ様です」


「ご苦労、下がってください」


「はっ!」


 神官たちはすぐにその場を下がる。


 おっさんたちが居なくなって、王女と二人っきり。


 くはー! やべえ!


 すごい綺麗な女の人を前にしてるせいか、滅茶苦茶緊張するというか興奮する!


 王女様が俺の顔をじっと見つめてきた。


 そんなに見つめないで下さい、恥ずかしくて死んでしまいます。


 今も心臓ハートがあなたに握りしめられて息もできません。


 俺はさらに興奮してやかんの様に顔が火照った。


 きっと周りから見たら爆発しそうな位真っ赤な顔をしてる筈。


 そんなキョドキョドする俺を見ても王女はクラスメイトの女子の様に「キモっ!」とも言わずに真面目に自己紹介を始めた。


 意外といい人かも。


 なんか好きになりそう。


 キョドりつつも自己紹介をする俺。


 やはり自己紹介は男からしないとね。


「棚岡です。十七歳、学生をしております」


「わたくしは神聖国ファーレシアの第二王女アウマフです。親しみを込めてアウとお呼び下さい。タナオカ様は異世界では学生さんをやられていたのですね。帰す宛もないのにいきなり異世界であるこの国に召喚してしまい、ごめんなさい」


 ペコリと頭を下げる謝罪をする王女様。


 異世界召喚なんてマンガやアニメの中だけのものと思っていたけど実際にあるものなんだな。


 でもさ、なんでなんにも取り得もなく、なんにも出来ないこの俺が召喚魔法で勇者として異世界に呼ばれたんだろう?


 謎過ぎる。


 都合のいい夢でも見てるんだろうか?


 でも、こんな綺麗な女の子と話せるなら夢でもいいぞ!


 乗ってやろう、この都合のいい夢ビッグウェーブに!


 俺はニヒル(死語)な表情を王女様に向けた。


 ちなみにニヒルって言うのはパリピや陽キャ共の使う言葉だとクールだ。


 つまり決め顔。


「いえいえ、その様な事を気にしないでください。どうせうちの高校を卒業しても進学どころか就職も出来ない様な底辺高校ですから。学校を卒業したら俺はフリーターやニートと呼ばれる冒険者稼業を開業しようと思ってたぐらいなので、異世界で勇者になるのは俺的に願ったり叶ったりです!」


 俺の言葉を聞くと王女の顔がパッと明るくなった。


 俺のクールな表情が効いたんだろうか?


 うん、きっとそう。


 ──────────

 タナオカの攻撃 > ニヒルな笑顔!

 王女はタナオカに魅了された。

 ──────────


「では、タナオカ様は勇者になる事をお望みですか?」


「もちろんです!」


「ありがとうございます。それでは早速ですがわたくしと結婚して戴けませんか?」


 目の前の美少女はとんでもないことを言い放った。


「け、結婚?」


 王女様のいきなりのプロポーズに俺の理解が追いつかない。


 王女様の目は見開かれていて瞳孔も全開。


 どう見ても正気じゃない。


 出会って1分も経ってないのに……どうしてこうなる?


 俺が口を半開きにして呆気あっけに取られていると、王女様が俺の表情を見て真顔に戻った。


「ごめんなさい。真の勇者様が見つかった事で気が動転してしまいました。あまりに嬉しくて勇者様に事情を説明する事をすっかり忘れてしまいましたわ」


「いえいえ」


 王女様は俺に対する非礼を詫びて説明を続ける。


「タナオカ様、わたくしと結婚して勇者様との間に優秀な子を成して、優秀な血脈を王族に取り込み、王国の永遠なる繁栄に寄与して頂けると助かります!」


 なるほどねぇ…………って、全然なるほどじゃねー。


 どうせ俺には一生彼女なんて出来そうも無いから王女様と付き合って結婚するのもまあいいとしよう。


 でも俺は17歳だぞ!


 さすがに結婚するのは早過ぎると思った俺はやんわりと王女様にお断りの意思を伝えた。


「王女様からの結婚の申し出は大変嬉しいのですが、俺は十七歳でまだ未成年です。せっかくのご厚意に答えられず申し訳ないのですが、せめて成人する二十歳まで待って頂けないでしょうか?」


「なにをおっしゃいますか! この国では十六歳が成人年齢となっています。十七歳ならこの国では立派な成人ですわ」


 さらに王女様は続ける。


「それにもたもたしていると姉からの横やりが入ってタナオカ様を寝取られてしまいます。という事なので善は急げ結婚式は後回しで早速お父様に結婚報告をして既成事実を作りましょう!」

 

 ぐいぐいと攻めてくる王女様。


 こうして俺は拒否権も無く王女様と結婚することになったのだ。


 *


 王様への結婚報告を終え神殿に戻ると皆のステータスの鑑定が終わっていた。


 胸には星の付いたバッジを付けている。


 この星の数で勇者としてのランクを表すらしく、クラスメイトの能力をランク分けしたバッジらしい。


 大抵の生徒はAランクの☆4つかBランクの☆3つだ。


 俺は☆5つのバッジを渡された。


 つまり、俺の能力はAの上のSランクということだ。


 Sは真の勇者という意味で、Sランクはクラスの中で俺一人だけらしい。

 

 クラスメイトの中で最高の唯一無二のSランク。


 俺の異世界生活は期待度MAXで始まった!

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