ラベンダーはブルー (3)
「ごめんごめん武蔵ちゃーん。冗談」
背中に飛び乗られてほぼ肩車状態のベンジャミンは、涙目だが、心なしか嬉しそうでもある。
稀代の人たらし。
そんな言葉がクリストフの胸中に浮かぶ。
「おれ究極、武蔵ちゃんだけいてくれたらあと何もいらないから」
「あ」ベンジャミンの肩に乗っかったままふりむいて、「佐藤たちも無理しておれたちにつきあうことないよ。帰る? 平泉」
そんな!
今回は半分
「それはないです」痛む口を開いたのは兄のほうだった。「藤原の
「元気?」
「はい」
「そう。よろしく言っといて」
いまその話じゃないだろう、とクリストフは気をもむが、兄も自分も口下手なのでどう対処していいかわからない。
「あのね。いい匂いがするんだよね」また話が飛ぶ。ぽーんと。
一瞬ベンジャミンが赤くなるのを見てしまい、ちがうよ武蔵さんあんたのことじゃないと無言で突っこむクリストフだ。
「まあ女の子はみんないい匂いだけど、あの二人は何か違う。な、フロ?」
「へ? あ、え、は、はい」
痛ましいほどの佐藤兄のうろたえぶりを見てにやりと笑うクロード。
「最初はラベンダーかなと思った。ラベンダーの何かでタイムリープする話があるだろう。あんなんでリープできるなら、おれもう八十二回はリープしてるわ」
「なに八十二回って」
「適当だ」またにやり。「けど、どうもそんな単純な話じゃないね。あの子たち自身に何かある。何か――」ひたと見すえられて、フロリアンが動けなくなっている。「塩。みたいな?」
「フロ」
「何か知ってるな、その顔は。いいよ、どうせ口止めされてるんだろう。無理にとは言わない。
だけど女との約束と、おれのおまえに対する信頼と、どっちが大事だ」
この人はリーダーだ、とクリストフは思う。人の上に立つ人だ。
自分には口が裂けてもあんなことは言えない。
「や……、やばいです。あの二人は」どもりながら、フロリアンは話しだした。
「だろ?」
「
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