閑話其の1 ボルダ村のエピローグ
「あっ、
ベッドに横たわったまま目だけを開いている
「皆、おはよう」
「本当にお疲れさまでした。国王軍への引継ぎも無事に終わっておりますぞ」
ウルノは安心したのか、今にも泣きそうな表情を見せる。
「そうか、ウルノが代わりにやってくれたんだね。ありがとう」
「おおっ、そう言えば。国王軍の将官であるダリニッチ殿が事情を聞きたいと言っておりましたな」
思い出したように声を上げるウルノに対して
ボルダ村の中央広場では王国軍が忙しそうに動いていた。
「これは、お初にお目にかかる。私はこの隊を国王より預かっているダリニッチだ」
ダリニッチは腰掛けていた椅子から立ち上がり姿勢を正す
「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。冒険者ギルドから依頼を受け、王国軍到着までの間この村の防衛業務を請け負っておりました
「
ダリニッチはザッハシュテルナ侯爵家の四男として生まれ、騎士学校を卒業後すぐに王国軍へ入隊、その飾らない性格と的確な状況判断により数々の功績を積み上げ、若くして将官にまで上り詰めた誰もが認める逸材である。
「では、早速で申し訳ないが、ウルノ殿から受け取った情報の補足をお願いしたい」
ダリニッチは従軍している書記官の準備が整ったことを確認すると、一昨日に発生した黒炎を纏った狼による小規模なスタンビートについてと、昨日土筆が単独で討伐した地竜についての情報を求めるのだった。
話を聞き終えたダリニッチと書記官が問題がないかを確認をしている間、心の何処かでそわそわした気持ちが治まらず心拍数が上がり切ったままの
「
冒険者達の宿泊施設は王国軍が手配してくれていたらしく、南北それぞれの長老達も王国軍からの要請とあってはいがみ合う事も無かったようだ。
「おおっ、ダリニッチ殿とのお話は終わりましたかな?」
料理が運ばれてくるのを待っていたウルノは、
「ああ、無事に依頼達成通知書を受け取って来たよ」
「それは良かったですな。これで後は帰るだけですわい」
ウルノは自身も受け取った依頼達成通知書を懐から出して
「失礼しやす。
この宿屋の看板娘がウルノが注文した食事を持ってきた時、入り口で
「あっ……はい、私が
「確かに
鳥人族の男はそう言いながら
「料理届いてますよ。エッヘンからですか?」
「いや、メゾリカの冒険者ギルドからみたいだね」
「メゾリカからですか?」
「ああ、一先ず料理を食べたいところだけど、緊急の用件かもしれないし……」
「
「うん、どうやら地竜の解体をこの村で行うための人材を送ってくるらしい」
「それで解体が終わるまでの間、この村で待機していて欲しいってさ」
冒険者ギルド・メゾリカ支店からの手紙によれば、地竜討伐の一報を受けて、今朝モストン商会の馬車でメゾリカを発ったらしい。
「どれどれ……ほう、この手紙によると今日の夜には解体が終わりそうな勢いですな」
通常、大型種である地竜の解体には数日を要するものだが、メゾリカの街もエッヘンと同じく、大型の魔物を討伐する練達の冒険者達がゾッホの指揮下に入りエッヘンに派遣されていて暇を持て余しているようだ。
「食事を済ましたら、皆に伝えにいくよ」
国王軍からの知らせを受けた
「これは
地竜の横にある空き地に馬車を止めたモストン商会の主が
「どうも、先日はお世話になりました」
何となくそんな予感をしていた
「いやはや、ご活躍のほどは伺っております。なんとっ、この地竜を仕留められたとか」
モストン商会の主は大きく手を広げると、相変わらずの口調でマシンガントークで攻め立てる。
「いえ、少しばかり運が良かっただけですので……」
「何と謙虚なことでしょう。運も実力のうちと申しますれば、それは
永遠と続くモストン商会の主との会話を切り上げられずにいた
「会長……」
モストン商会の主は耳元に
「それでは
モストン商会の主は勝手に話し始め勝手に話を切り上げると、荷物を持った部下を引き連れて去って行くのだった……
その
地竜の元を離れる間際、
ここは天使も悪魔も魔法も存在するファンタジーな世界なので、もしかしたら地竜の残留思念のような何かが
「
「貴殿が地竜と戦った付近に飛び散っていた地竜の破片の中で価値のありそうな物を回収してあるので受け取って欲しい」
そのまま黙って持って帰っても
「わざわざありがとうございます」
その日の夜、今回の防衛任務に参加した冒険者達はボルダ村で一番大きい居酒屋のホールに集まってパーティーを行っていた。
夕方、
「いやあー。長いこと冒険者をやっておりますが、地竜の肉は初めてでございますな」
なみなみとエールが注がれたジョッキを片手に、地竜のステーキに
「ささ、皿が空になっておりますぞ」
防衛任務中はアルコールは元より、滞在場所も固定されていたので、冒険者達のストレスもそれなりに溜まっていたようだった。
それは
このようにして、防衛任務最後の夜は賑やかに過ぎていくのである。
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