第16話 山小屋の点検と風光明媚な丘
今回の請け負った依頼は山小屋の定期点検だが、
もちろん、メルが楽しみにしているピクニックも予定の中に盛り込んだ。
目的の山小屋から更に進んだ先にある丘は冒険者達の間で
出発の準備が整い、ポプリに出掛ける事を知らせた
「メル、準備ができたぞ」
いつもなら
「んっ……出発?」
メルは
「ああ、待たせたな」
メゾリカの街の東門から伸びる街道を通って東の森に入り、そのまま街道沿いに
目的の山小屋へ行くには詰所の手前で街道から枝道に入り、後はひたすら山道を登って行くことになる。
街道と違い、人の手による整備が行われていない、いわゆる”けもの道”であるが、冒険者であれば素材採取などで度々利用する山道の一つでもあるので危険度はそれほど高くない。
「ねえねえ、肉狩ってきていい?」
山道に入り少し進んだ辺りで、
「そう言えばリエーザさん、まだ干し肉の材料が足りないって言ってたな」
「うんうん。ついでだから肉狩ってこようと思うの」
メルは尻尾を勢いよく左右に揺らしながらうずうずしている。
「わかった。なら山小屋集合って事でいいか?」
「うんうん。場所は知ってるから大丈夫」
メルは待ちきれないのか、既に目線が茂みの奥へ移っている。
「生態系壊さないようにな」
「りょうかーい。今夜もお肉だー」
メルは片手を大きく突き上げて返事をすると、歓喜の声を上げながら軽やかな足取りで茂みの中に消えて行くのだった……
メルを見送った
危険度がそれほど高くないと言えども、
特に
魔王の呪いによる魔力の制限が原因で、
幸運にも、
魔物除けの魔法結界は山小屋の敷地内に複数設置されていて、それぞれが独立して魔物除けの効果を発動している。
その為、設置されている魔物除けの内のいずれかが故障し機能を停止したとしても、直ちに山小屋全体の魔物除けの魔法結界が消滅することはない。
そして、ギルドから請け負った”山小屋の定期点検”の依頼を無事に終えた頃、大量の魔獣を手に持ったメルが集合場所である山小屋に到着するのだった。
「狩った狩ったー」
メルはご機嫌な様子で山小屋の敷地内に入ろうとするが、魔物除けの魔法結界により拒まれてしまう。
その事に気付いた
「ちょっ、メル待ったーっ!」
「あっ、
「そうなの? それじゃお肉持って入れないよ……」
メルは口を尖らせて不満そうな顔をする。
「大丈夫、息絶えた魔獣なら結界は反応しないから」
「ここで息の根を止めたら不味くなるよ?」
メルは食肉を美味しくするために、あえて生きた状態で捕獲しているのである。
「それも大丈夫、山小屋の敷地内には狩猟者用に血抜きする為の施設が備わってるから」
メルは
血抜き作業を終えた土筆とメルは、予定に盛り込まれていたピクニックを楽しむために、山小屋から更に進んだ先にある丘へと向かうのだった。
しかし、
その高台からは群生する野花を一望でき、咲き乱れる野花を手に取って香りを楽しむ事はできなくても、十分に自然を満喫する事が可能なのである。
「おおっ、絶景かな絶景かな」
メルは大きく手を広げ、吹き抜ける風を体全体で感じながら何処かで聞いた事があるような言葉を漏らす。
「メル、飛び降りるなよ? 崖の下は管理地だからな」
メルの野生が爆発して高台から飛び降りてしまうと、色々面倒な問題が発生する。
「大丈夫だよ。ご飯を置いて行くなんてできないもん」
メルはそう言うと、
「花より団子かよ」
「待ってましたー」
メルは早速サンドイッチに齧り付くと、幸せそうに頬張る。
「おいおい、急いで食べると喉につかえるぞ……」
「大丈夫だひょっ」
言ったそばからサンドイッチを喉にを詰まらせ、自身の胸を激しく叩くメルの背中を土筆が優しくさする。
「ほら……水」
「あふぃふぁと」
メルは
「ふう……死ぬかと思った」
そう言いながらも次のサンドイッチを手に取るメルに呆れた表情を見せる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます