第3話 南西の門
部屋を引き払う手続きを終えた
宿屋を発つ際にはお世話になった人達へ感謝とお別れの挨拶を行い、再会の約束と固い握手を交わしたのだった。
それ故、
南西にある門へ辿り着くには目抜き通りと交差している商用通りと呼ばれる大通りを南下すればいい。
商用通りは
また、南西にある門の近くにはこの街に駐在する騎士団の寄宿舎もあり、その年に入隊した新人が南西にある門の門衛を担当する事はそれなりに知られた話である。
受け取った門衛は書類に目を通すと、丁寧な立ち居振る舞いで外壁の中に設置された詰所へと
詰所は門の横に用意された通用口に隣接していて、それほど広くもない空間に門衛達の上官とおぼしき男性が椅子に腰掛け書類整理を行っていた。
上官とおぼしき男性は門衛から書類を受け取ると立ち上がり、
「お話は聞いています。今後についてご説明致しますので、どうぞこちらへ」
上官とおぼしき男性は、門衛に負けず劣らぬ立ち居振る舞いで土筆達をテーブルへ誘導すると、椅子に腰掛けるように促した。
説明の内容はモストン商会から事前に聞いていた通りだった。
簡潔にまとめるなら、門の出入りについてと有事の際の対応についてである。
東、西、北の防壁にあるそれぞれの正門より見劣りはするものの、南西の門にも馬車がすれ違う事が可能な門が備え付けられている。
しかし、南西の門の先には陸の孤島と化した広いだけの荒れ地と、開拓時に拠点として使われていた宿舎とその付属設備があるだけなので、この門の需要自体が殆ど無く、常に閉門したままになっているのだ。
その為、人の出入りはもっぱら通用口を利用し、当然の事ながら
通用口は防壁の内側と外側にそれぞれ扉が設置されており、防壁の内側の扉は騎士団の管理の下、常に解放されているので、
街への出入りの際に必要になる通行料は発生せず、来訪者については今まで通り騎士団の管理で処理されるようだ。
また、有事の際は発令されたと同時に防壁の内側の扉が閉鎖される為、街中への非難はそれまでに行う必要がある。
その他、細々とした取り決めの説明が続くが、どれも事前に説明を受けていた通りなので、特に確認を要する場面もなく順調に進んで行くのだった。
「説明は以上になります」
一通りの説明を終えると、上官とおぼしき男性は外壁の外側の鍵を差し出した。
「こちらが鍵になります。もし紛失された場合、鍵の取り換え費用が全額そちら負担になりますので注意してくださいね」
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