第22話 お泊まり会2

 人生ゲームが始まり、まずは全員ルーレットを回す。すると、和樹が4、リアラが9、友樹が6、茜が7、となり、リアラからスタートする事になった。


 所持金は全員5000円スタート。最初にビジネスコースと専門職コースがあり、どちらに進むか決められるのだが、リアラは職につけないかもしれない専門職コースを選んだ。


 リアラがルーレットを回す。ルーレットは6が出て、就職マスで止まり、デザイナーになった。


 この後は全員専門職コースに進んでいったのだが、和樹だけは、就職マスに止まる事ができず、職業に就けなかった。


「なんで俺だけ……」


「大丈夫です和樹様、私がいますので」


 初めて人生ゲームをするリアラに慰められ、和樹は奮起する。


 しかし、他の皆は順調にお金が増えていく中、和樹だけは一向にお金は貰えず、職業にも就けない。


 しかも、その傷に追い打ちをかけるように、2回連続で『全財産を失う』と書かれたマスに止まってしまう。


「何故だぁ!」


「駄目だ、和樹がキャラ崩壊してる」


「確かにこれは可哀想だね。リアラちゃんが稼ぎすぎて養ってもらってる状態になってるよ……」


 リアラは和樹の逆で、止まるとこ止まるたびにお金が貰えるマスに止まり、もはや全て狙っているのではと言わんばかりに稼いでいる。


 その金額は一人で友樹と茜に渡り合える程の金額になっていた。


 更にリアラはランクアップマスにも止まり、デザイナーのランクもアップさせることに成功。


 その後に友樹はパティシエ、茜はアスリートの職業もランクアップさせた。和樹は相変わらず無職のまま。お金も全く足りないので、銀行から借金までしている。


「……」


「和樹もう気を失いかけてるよ……」


 人生ゲームも終盤になった頃、リアラと和樹のチームは友樹と茜のチームより10000円程リードしている。


 和樹は職業やお金を貰えるマスには止まれていないものの、ルーレットの数字自体は全て大きい数字が出ていたので、ゴールには一番近い。


 和樹はゴールまで後6マス。ここで和樹の運が試される事となる。


「何かお金5000万を貰えるマスがあるぞ」


「けどその前と後ろのマスは借金10倍のマスだね」


 ゴールから2マス離れたところにお金が貰えるマス。だがそのマスに止まれなければ借金が増える事は確定。


 つまり4か8を出す事で和樹はお金を貰えるが、それ以外となると、たとえリアラが和樹の分までお金があるとはいえ勝てないかもしれない。


「このままゴールしても借金を払えない。そこに止まるしかない!」


 意を決して和樹はルーレットを回す。長々とルーレットは回り、止まった数字は……、


「5……」


「あ〜あ、借金10倍だ」


 その後も他の皆はピッタリとゴールできていたのに、和樹は2回借金マスに止まった。


 結局その借金のせいで和樹とリアラのチームは負けてしまった。


「二度とやるか畜生!」


「そりゃこうなるよ。あんだけ足引っ張ってしまえば」


 このあともテレビゲームをしたが、和樹は調子が悪く、一回も勝つことがなかった。


 ゲームに皆夢中になり、気がつけば9時になっていたので、和樹から風呂に入った。


 その後に友樹も入り、現在は女子二人が一緒に風呂に入っている。


「あー、なんで今日あんなに勝てなかったんだ?」


「そう言う日もあるさ」


 和樹はソファーに座って、番組表を見ていた。

 何か面白いチャンネルはないかと見ていると、


「ホラー映画やってるぞ」


「夏に見るもんだろ。これ以上寒くしてどうする」


「けど俺ホラー好きだしこれ見よう。友樹ホラー見れる?」


「俺はいけるぞ。女子達がどうかわからないけどな」


 和樹はホラー映画にチャンネルを変える。


 その内容は、大きい音を出してしまえば、謎の生物に殺されてしまう世界。そんな世界で生き延びる5人の家族。その家族は色んな場所を転々としながら食料を集めて生きている。


「これ結構怖そうだな」


「リアラちゃん実はホラー苦手だったりしてな。こういうの見てどんな反応するんだろ」


「想像つかないな」


 そんな話をしていると、丁度リアラと茜が脱衣場から出てきた。


「ふう、さっぱりした!あれ?何見てるの?」


「ホラー映画」


「あー怖いけど見たくなっちゃうよね」


 茜はそのまま友樹の隣に座った。リアラも続いて和樹の隣に座る。


「リアラ、ホラーは大丈夫か?」


「は、はい、大丈夫です」


(ん?ちょっと声が震えてた気がするけど……気のせいか?)


 そんな心配はつゆ知らず、長男と長女がガラスの物を壊してしまい、大きな音が出てしまう。


 皆一斉に動きを止めてその怪物が来るか外を見た。しかし外には何もいない。しばらくしても何もなく、安心しきっていたところに、怪物の声が聞こえる。


「うおっ!」


 注意していた和樹だったが、その怪物の声には流石に驚き、声を出してしまった。


(リアラ大丈夫……え?)


 リアラの方を見ると、体をプルプルと震わせて、既に少し涙目になっていた。


 そんなリアラに追い打ちをかけるように、隠れている母親にどんどん近づいていく足音。


 リアラは遂に限界を迎えたのか、和樹に抱きついて来た。その瞳からは涙が出ている。


「……っ……ぁ……」


(やっぱりホラー無理だったのか……てか違う!近い近い!風呂に入ったあとだから余計いい匂いするし!)


 リアラは怖かって和樹から離れない。仕方なく和樹は別の番組にチャンネルを変えた。


 和樹は優しくリアラの頭を撫でながら、


「ホラー無理だったら言えばいいのに……」


「す、すみません……こんなに怖いとは……」


 時刻は丁度10時、リアラもこんな調子なので、少し早いが寝ることにした。


 布団は和樹のベッドの隣に敷いて、茜と友樹が一緒に寝ている。


「か、和樹様……あの……」


 リアラは怖さの余韻がまだ消えていないのか、とても不安そうに和樹に声をかける。


「いいよ、おいで」


 和樹はベッドの中でリアラを抱き寄せる。


「ラブラブだな」


「ラブラブだね」


「うっせ。お前らもだろ」


 その後しばらく雑談していたのだが、思いの外眠たかったのか、友樹と茜はすぐに寝てしまった。


 リアラはまだ少し怖さで眠れていない。


「どうせ俺が見てたから遠慮して怖いのは無理って言わなかったんだろ」


「……はい、すみません」


「そんな遠慮なんてしなくても、怖いなら怖いって言えばいい」


「はい……」


「けど怖がってるリアラ可愛かったぞ」


「───っ!?」


 リアラは恥ずかしさから頬を赤く染める。確かに涙を流すほど怖がってるリアラを見たのは初めてだったので、相当怖かったのだろう。


「取り敢えずもう寝よう」


 和樹はベッドのサイドランプを消した。


「怖くないか?何なら今日は電気つけててもいいぞ」


「いえ、大丈夫です。和樹様がいるので」


「……そっか」


 その後リアラは安心して寝てしまったが、いつもの3割増しで体を抱き寄せられていた和樹は相変わらず寝るのが遅れてしまった。


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