第18話 メイドの運動神経
年2組の今日の六時間目は体育。昼休みに昼食を食べ、五時間目になると授業中に少し眠たくなる。そんな眠たい体を覚ますのに体育は効果的だろう。
ところが季節は冬。たとえ長袖のジャージを着ていても寒いものは寒い。稀に長袖のジャージを忘れる奴もいて、その人は大概、半袖の体操服で震えている。
「友樹震えてるぞ」
「さ、寒いものは寒いんだ」
その長袖のジャージを忘れたのが友樹。幸い体育は体育館で行っており、窓や扉も閉め切っているので、外からの冷たい空気は入らない。
だが体育館でも寒いものは寒いので、友樹以外に半袖の人はいなかった。
「こんな時は女子を見て温まるんだ」
「なんで女子見て温まれるんだよ」
今日は女子も体育館で行っていて、男子はバスケットボールで、女子はバレーボールをしている。
2月の中旬には球技大会もあるので、それに向けた練習も兼ねての体育だ。
そして現在、男子はシュートの練習をしている。
「よっ」
スリーポイントラインから投げた和樹のボールは、綺麗な放物線を描いてゴールリングに吸い込まれる。
「そういえば運動もできるんだったな」
「まあそれなりにはな」
和樹は別に運動神経が悪い訳ではない。走るのもそれなりには出来るし、体力もある。割とスペックが高い和樹である。
「けどあれは規格外じゃない?」
「確かにな」
バスケットボールをやっている隣では、バレーボールでサーブの練習をしている。
リアラの順番が回ってきて、リアラはボールを宙に上げた。
かなり高く上げられたボールにタイミングを合わせ、リアラもジャンプする。そして完璧なタイミングで弾かれたボールはバレー部顔負けの威力でコートに入る。
「そりゃあもとはゲームの中にいたんだもんな」
「多分バレー部でも拾える奴少ないぞ」
「リアラはあれでも手加減してそうだしな」
「リアラちゃんが本気で打ったら……」
「誰も取れないだろうな」
和樹のクラスにはバレー部の女子もいるのだが、リアラのサーブを見て、唖然としていた。
これまで積み上げてきたものは一体何だったんだろうかと言わんばかりの顔だ。
そもそも皆はリアラがゲームのキャラだった事は知らないので、驚くことも無理はない。ゲームのキャラだと知っている和樹達はそれほど驚きはしなかった。
「球技大会で絶対女子優勝じゃん」
「バレー部とリアラ合わせたら負けないだろうな」
「俺達も負けてられないなっ!」
友樹が放ったシュートもリングをかすることなく吸い込まれる。
「男子バスケ部いないけど……」
「……なんとかなるさ、体も温まってきたし。もうすぐゲームだろ?」
「簡単な試合するとか言ってたな」
シュート練習が終わり、次は短い時間での試合をする。
和樹と友樹は同じチームで、上手く連携してシュートを決めていく。
「これやってみたかったんだよな」
和樹は漫画で偶然読んだバスケの技を試そうとする。フェイントをかけて相手を自分から離した後、後ろに飛んでそのままシュートを放った。
「フェイダウェイ!?」
ボールは見事ゴールリングに跳ねながらリングの中に入った。
「案外できたな」
「和樹も割と万能だな」
「10点決めてる友樹に言われたくない」
その後も点を決め続け、和樹と友樹のチームは相手に10点差をつけて勝利した。
「球技大会なんとかなるかな?」
「それはわからんな」
「リアラはガチで余裕だろうな」
丁度女子の方も試合をしていて、リアラの方を見ると、リアラが高く飛び上がり、強烈なスパイクを打つ。ボールが弾かれた音が体育館に響き渡り、相手のチームは誰一人反応できずに決まった。
「……俺もあんな体が欲しかったな」
「和樹……お前のメイド凄いな」
「ああ……俺も頑張ろ。せめて人並み以上にできるぐらいには」
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