第16話 メイドに反撃した
買い物を終えて、帰宅した和樹は昼食にリアラが作ったオムライスを食べた。
和樹は食べ物に関しては少し飽き性なところがあるが、リアラは飽きないように工夫して料理を作ってくれている為、飽きることがない。
和樹はリアラが来てからは、既に3回オムライスを食べていた。
「本当にオムライスで良かったのですか?」
「リアラが作ったオムライスは美味しいし、何か無性に食べたくなる」
「それは良かったです」
リアラは料理が褒められて嬉しいのか、上機嫌で洗濯物を干しに行く。
和樹は自分のパンツをリアラが物干しハンガーに干しているのを見て、
「やっぱりまだちょっと恥ずかしいな……」
和樹は洗濯物を干す事に関して一度リアラと話し合いをしている。
最初にリアラが洗濯物を干している時に、自分のパンツを干そうとしているのを見た和樹は、「自分の洗濯物は自分で干さないか」とリアラに言った。
それに対してリアラの返事は、
「和樹様にお手を煩わせるのは私が嫌なのです。二度手間にもなりますし、一緒に生活しているのですから慣れていかないといけないのでは?」
「それはそうだけど……」
「何度も言いますが、全て私がやりたくてやっているので、和樹様は気にしないでください」
と、リアラに強く言われてしまい、それからも洗濯物はリアラが干している。
和樹はリアラが洗濯物を干している間に問題集に目を向ける。友樹にも言われた通り、リアラに相応しい人になる為にも、頑張らなければならない。
元から勉強していない訳ではないが、どうせなら学年で一桁を狙おうと、和樹は張り切っていた。
3時間程勉強し、休憩がてらにリアラとゲームをする事にした。ゲームの種類は勿論レースゲーム。
レースゲームの他にもゲームソフトはあるのだが、リアラはまだ和樹に一度も勝てておらず、3日に一回ぐらいはレースゲームで勝負している。
「今日は負けません」
「俺も負けるつもりはない」
なんだかんだ言ってリアラは段々と上手くなってきているので、油断したら負けてしまう可能性も十分にある。
和樹はコントローラーを持ち、ソファーに座る。
リアラはいつも和樹の隣りに座っていたが、今回は和樹の足の間に座り、体をかなり密着させてきている。
(レースの前に俺の身が持たない……)
───そこから7レース走った。和樹はリアラが前にいるので、少し頭を傾けながらプレイしている。
リアラからは洗剤とリアラ自身の匂いが混じった甘い匂いがしてきて、和樹の思考を鈍らせる。
それでも和樹は何とか平静を装い、負けそうになりながらも何とか勝っていた。
そして最終レースのカウントダウンが始まる。
「今日は負けるかもな……」
「私も上手くなっているので」
カウントがゼロになりスタートするが、和樹はスタートダッシュに失敗した。
「やべっ!」
このレースは特にアイテム運が悪く、加速アイテムが欲しいときに防御アイテム、防御アイテムが欲しいときに加速アイテムと最悪のパターンだ。
それでも何とか食らいつき、リアラに続いて順位は二位。ところがリアラとの差はかなり離れていて、もうすぐでゴールのとこまで来た。
(今日は負けだなこれは……)
半分諦めてリアラの方を見る和樹。リアラは真剣な表情でプレイしていた。
(……これチャンスじゃね?)
普段からかわれている和樹は、レースに集中しているリアラをみて、少し悪戯してみたくなった。
(このレースは負けるしいいよな?)
和樹は少し悩んだ末に決意し、ゴールする直前、和樹はすぐ横にあるリアラの耳に息を吹きかけた。
「ひゃん!?」
リアラは意外にも耳が弱点だったらしく、体をビクッとさせて可愛らしい声を上げた。しかしそのままリアラは一位でゴール。
結局レースはリアラが勝ったが、リアラは恥ずかしさから体をプルプルさせて耳まで赤くなっている。
(今の声すっごい可愛い……いやそうじゃなくて……これはもしかしなくても怒ってるよな)
不覚にもいつものリアラからは想像できない声を出してしまって悔しいのか、リアラは顔を赤くしながらゆっくりと和樹の方を向く。
「和樹様」
「は、はい」
「覚悟はできてますね」
「は、はい、何でもします」
和樹は引っ叩かれようが全て受け切る覚悟を決めた。
だがリアラは別に甘えたかっただけで、
「……じゃあ頭を撫でてください」
「……え?」
「早くしてください」
「わ、わかった」
和樹は言われるがままにリアラの艷やかな銀髪に触れ、優しく撫でる。
最近では毎日リアラの頭を撫でていた和樹は、要求に少し呆気なさを感じていた。
(これは罰じゃなくてご褒美だな……)
リアラの頭は毎日撫でていても飽きない程に、サラサラで気持ちいい。頭を撫でるだけなら寧ろご褒美とも言える。
「いつまで撫でればいい?」
普段は10分程で満足するリアラ。だが辱められたリアラの要求は想像を超えた。
「一時間です」
「へ?」
いつもの約6倍の長さ。あまりの長い時間の要求に、和樹は情けない声が口から漏れた。
「ずっと撫でてなくてもいいです。一時間私の側から離れないでください」
「わ、分かった」
辱められた分思う存分に甘えてやろうと、リアラは更に体を密着させていく。
(甘えてくれるのは嬉しいんだけど……理性が……)
絶賛思春期真っ只中の和樹は、リアラを襲ってしまわないように自分を必死で抑え込んだ。
和樹は一時間耐え続け、満足したリアラは「夕食作ってきますね」と言ってキッチンに向かった。
リアラは耳に息を吹きかけられた事には怒っていたが、結局一時間側にいてもらって機嫌が良くなり、夕食も少し張り切っていつもより一品多めに作ってしまうのであった。
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