第15話 メイドも学生になりました
「すみません、驚かせようと思いまして」
LHRが終わり、放課後。和樹とリアラは校長室に呼び出されていた。
リアラは今日の事について和樹に謝罪した。
「まあ驚いたけど、リアラの制服着てるの見れたから」
リアラのメイド服も可愛いが、学校の制服というのも新鮮で悪くない。
和樹も素直にリアラの制服姿は可愛いと思っていた。
「似合っていますか?」
「似合ってないわけないだろ」
「そうですか、ありがとうございます」
和樹に褒められ、嬉しそうに口元を緩ませるリアラ。
そんな話をしているうちに、校長室についた。和樹は校長室の扉をノックすると、すぐに返事が返ってくる。
「入ってもいいよ」
「失礼します」
和樹とリアラは校長室に入った。校長先生は和樹とリアラの目の前にあるソファーに座っていた。
「じゃあ取り敢えず座ってくれていいよ」
和樹とリアラはソファーに校長先生と向かい合わせに座った。
校長先生の名前は安田やすだ智則とものり。まだ40代で、かなり若く見える。だが、普段から会って挨拶をする時でも、堂々としていて風格もあるので、校長先生としては相応しい人だろう。
「今日呼び出したのは、まあ、神様の事についてだ」
呼び出された理由が神だということは和樹とリアラは予想がついていた。
神と名乗るものがいきなり編入させてほしい子がいると言ってきたらそれは驚くだろう。
「その件に関しては俺も今日知りましたので」
「いきなり現れたからびっくりしたよ」
和樹はそれに頷いた。神様の存在を知っていた和樹でも、いきなり現れた神には驚いた。和樹には一度経験があるので、校長先生が言っていることは共感できる。
「そうですね、俺の時も急に現れましたし、神様は得体がしれないので」
神についてはまだ謎だらけだ。少なくともメールを送ってくるタイミングや、その他の不思議な現象からして、人間ではないと考えられる。
「リアラという女の子を編入させてほしいと言われて、写真を見せられたんだ」
「写真なんかあったんですね」
和樹はリアラの写真をまだ撮った事がなかった。これも神の力によるものだろう。
「それでリアラちゃんの写真見て可愛かったから普通に編入試験もすぐに受けさせたよ」
「いや理由可愛いからですか!?」
しっかりしている人だと思っていたら、案外適当な人だった。普段はそんな素振りはないが、おそらくこれが素なのだろう。
「ははっ、まあそれで編入試験受けさせたら簡単に満点も取ったし、こうして編入させた訳だよ。君はリアラさんと一緒に暮らしているんだろう?」
「やっぱりバレてますか」
「神様が君の父に連絡してみてって言ったから連絡させてもらったけど、その時に聞いてね。学費も受け持つって言ってたから、手続きは早く終わったよ」
「あの……その件に関しては……」
「わかっているよ、君がリアラさんと一緒に暮らしているのがバレたら多分君のクラスでの立場も危ういからね」
校長先生が話の分かる人で助かったと、ホッとする和樹。だが、クラスの立場に関しては、別に高くないので、バレたところで痛い視線が増えるだけだろう。
「それは助かります」
それからしばらく話が進み、20分程したところで話すこともなくなったからか、校長先生は立ち上がり、
「話はこれぐらいにしよう。もう帰ってもいいよ」
「分かりました。編入の件はありがとうございました」
「ああ。それと、リアラさんと一緒に住んでるからってあんまりエッチな事とかしないでね」
「しませんよ!」
「ははっ、じゃあまたね」
和樹とリアラは校長室を後にする。
今は学校から出て少し進んだところを歩いている。
「はぁ、普段のイメージと違ってフランクな人だったな」
「そうですね、編入試験の時も少し話をしましたが話しやすい人でしたよ」
「……何を話したんだ?」
校長先生は確かに話しやすいが、さっきの発言からして、おそらく誰であろうと平気で下ネタを言える人だ。リアラにも何か言っているかもしれない。
「やることはやったのかと」
「……やっぱりそっち系か」
予想通り変な質問をしていたようだ。そもそも和樹とリアラはまだ抱き合うぐらいの事までしかやっていないので、そういう行為以前の問題だ。
「私は別に構わないですが」
「……」
冗談っぽく聞こえるが、リアラは無表情で言っているので、本気で言ってくれているのか、冗談なのか分からない。
和樹はリアラとそういう事をする考えが脳内をよぎり、恥ずかしさに顔が赤く染まる。
「あんまりからかうなよ」
「ふふっ、すみません」
最近の和樹はこうしてよくからかわれる事が多い。
それに、家でソファーに一緒に座っている時でも、和樹はリアラにドキドキさせられている。リアラは普段あまり感情を表に出さない為、リアラがどう思っているかが分からないのだ。
「そういえば、昼食はどうしますか?」
「んー……リアラの作ったものなら何でもいいんだけど」
「何でもいいが一番困るんですよ?」
「確かにな、ごめん」
『何でもいい』は、もはや一種の魔法の言葉だが、それを言われる方が一番困る。
例えば何でもいいと言われて、料理を作ってみれば、「えーこれかー」と不満を垂れる奴がよくいる。それなら最初から食べたいものを言えばいいとなってしまう。
「いえ、謝る程のことでは……。今日買い物に行こうと思っていたので、一緒に行きませんか?食材を見ながらなら、食べたい物も決まるかもしれませんし」
「そうだな、じゃあ一緒に行こうか」
「はい」
リアラは急に和樹の手を握って、体を寄せる。
「お、おい、他に生徒がいたらどうするんだ」
「大丈夫です。周りに人はいませんし、スーパーに着くまでだけで良いですから」
「……はぁ、わかったよ」
───人の気も知らないで。そう思いながら和樹はスーパーに向かって進む。
和樹はリアラにいつか反撃してやると、心の中で誓った。
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