第5話 メイドは可愛かった

 チャラい男たちが頑張ってメイド誘ったけど返り討ち事件が起こった後、和樹とリアラは洋服店に来ていた。


 女物の洋服店の為、女性客が多い。なのでリアラと一緒にいる和樹は変な目で見られている。


 メイド服のリアラは変な目で見られないのに、どうして俺だけ変な目で見られるんだろうか?


 ……リアラは美人だからだな。うん、間違いない。


「お客様、洋服をお探しですか?」


 店の店員が声をかけてくれる。ぶっちゃけ和樹は女性と出かけたことも殆ど無かった為、どういう服を選べばいいのか分からなかった。なので店員が探してくれるのが一番良いと思ったので、すべてを任せる事にした。


「彼女に似合う服を、何着かお願いします」


「かしこまりました。ではこちらへ」


 リアラが店員と一緒に服を選んでいる間、和樹は近くにあった椅子に座って待っている。


 正直、リアラは何を着ても似合いそうな気がする。何ならジャージでも問題はないのではなかろうか。


 だが、これだけ美人で可愛いので、それに見合った服を着させてあげたい。


 リアラが色々な服を着ている想像をしていると、店員から声をかけられた。


「彼氏さん見てください!すごくお綺麗です」


 彼氏?なのだろうか。俺のメイドと言う事は間違いないが、彼氏……彼氏でいいな。よし!


 リアラが試着室から出て来た。


「お、おお……」


 何も言葉が出なかった。リアラが着ているのは、水色がベースで花柄のついたロングワンピース。何を着ても似合うと思っていたが、想像以上で、ワンピースがよりリアラの可愛さを引き立てている。冬なので少し寒いだろうが、それ以外はパーフェクト。


 クールな表情をしているリアラとは逆の可愛い服で、ギャップが生まれている。


 と言うか正直に言ってしまえば、


「リアラが美人だよな」


 ワンピースも確かに良いのだが、それ以上にリアラが美人で可愛い。


「そ、そうですか?」


「うん、最高」


 そう言うと、リアラはクールな表情を崩し、嬉しそうに微笑んで、


「ではこれを買いますね」


 そう言って試着室に戻っていった。この子ちょっと可愛すぎやしませんか?


 今日会ったばかりなのに、リアラの色んな表情が見れた。それだけ俺の事を好きでいてくれているのだろう。


 その後も何着か試着したが、どれも似合っていたので全部買ってしまった。


 店員はできるだけ安い服を選んでくれていたようで、コスパのいい納得できる買い物ができた。


 今はメイド服を脱いで、最初に着たワンピースを着ている。


「こんなに買ってもらっていいのですか?」


「大丈夫、まだ余裕はあるから」




 俺に不自由させないように、毎月多めにお金を振り込んでくれている親には感謝している。


 それに、ラノベのような存在のリアラに、可愛い物好きの母さんは、リアラを甘やかしたくなってしまうだろう。


 だが、そろそろバイトも考えないといけない。いつまでも親に頼ってしまうのも申し訳ないからだ。


「そうですか……和樹様の両親に会ってみたいですね」


「多分リアラにぞっこんだろうな」


 話をしていると次の店についた。女性用の下着の店、これは流石に入ってはまずいので、リアラにお金を渡して自分で選んでもらうことにしよう……と思ったのだが、


「駄目です」


 なぜ駄目なんだ?俺が入っては女性客から白い目で見られてしまう事は必然。自ら嵐の中に飛び込んでいくようなものだ。


「和樹様の好みに合わせられません」


 俺の好みに合わせる……そんな素晴らしい事を言ってくれる女の子が存在していたのか!


 色々な考えが脳内をよぎる和樹だったが、一旦冷静になり、


「流石にまずい、主に俺の人生が」


 リアラほどの美女の下着を選ぶとなると、色々な想像をしてしまいかねない。気持ち悪い顔をしてしまったら警察行きになってしまう。


 そんな状況を打破する言葉を和樹は思いついた。それは、


「リアラの選んだやつが俺の好みだ」


 これなら、リアラは一人で選ぶことができるし、俺が気持ち悪い顔をしなくて済む。それに、服同様どんな下着でもリアラなら似合ってしまうと思っているので、これが一番無難な選択だろう。


「……わかりました。では、選んできますね」


 納得したようで、リアラは下着を選びに行った。


 20分程だった頃にリアラは戻ってきた。女性にしてはかなり早く選び終わったのではなかろうか。


「意外と早かったな」


「はい、店員にもアドバイスを頂きましたので」


 ……仮にその店員が悪戯好きとなれば、リアラに変な事を吹き込んでいないか心配だ。


「何か変な事言われなかったか?」


「いえ、特には」


 よし、どうやら店員は俺と会っていないにもかかわらず俺の意図を読み取ってくれているらしい。


「少々エロい下着をいくつか」


 前言撤回だ、その店員は有罪ギルティ!一緒に住むというのにエロい下着を買われてしまったのは、男子高校生にとってはきつい。


「……次行こう」


 俺が使っていない金もかなりある為、買える物は今日買っておく。部屋着を買ったり、新しい調理器具などをいくつか見て、大方買いたいものは買えた。


「もう他に買いたいものは無いか?」


「……水着を一着」


 ここで何故水着が出てくるんだ?そもそも冬だし、海やプールのシーズンじゃない。


「和樹様の背中をお流しする時に使おうかと」


「……却下!」


 そんな事されてしまっては俺の頭がパンクしかねないので、その考えに少しぐらついたが、何とか持ち堪えた。


 茶目っ気のあるリアラに翻弄される和樹である。

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