ダメ姉と言われたわたし、聖女じゃないって見捨てられたから兼業しました

銀青猫

本編

第1話 プレリュード & 人物紹介

「ねえねぇ、お姉ちゃん、あそこにいるの、何?」

 三歳の妹ルルーにそう聞かれてイシルがその場所を見ても、そこには何もなかった。六歳のイシルにとってはなにか重い雰囲気がするだけだった。


「え、何かいるの? わからないわ」

イシルはルルーにそう答えるしかなかった。


 それからも、ルルーはあちらこちら人や場所を指差して、何度も

「あれは何?」

と姉に聞いた。

 イシルは答えられなかった。ただあまり良くない雰囲気が感じ取れただけだった。


 そんなことが続いて、ルルーは姉のイシルを、何もわからないと馬鹿にするようになった。


 ルルーが見えているものは、両親にも見えなかった。それでも両親は、見えない何かが見えるルルーに

「ルルーにしか見えないものを見ているんだね。えらいね」

といつも言っていた。


 いつしかルルーは、見えないものを見る自分は家族の誰よりも偉いのだと、傲慢になった。

 そんなルルーは、さらに『それ』がはっきりと見えるようになっていった。


 イシルは両親から、姉なのに見えなくて情けないと言われた。


『両親だって見えなかったのに』

イシルはそう思ったが、言えなかった。言えば「姉なのに」とわけがわからないまま責められることがわかっていたから。


 ダメな姉というレッテルを貼られたイシルは、いつのまにか両親から無視されるようになっていった。

 両親の愛は、ルルーにだけ注がれた。



+++++++++++++++


登場人物紹介


姓と名前の両方をバラバラに使っているので、迷子にならないために一覧にしました。

読んでいてわからなくなったら、戻ってきてください。

大きなネタバレにならないようにしてあります。



【コトー村】


主人公たちが住む村。自然が豊かでいい気にあふれている。


○イシル・プレリア

主人公。四人家族の長子。コトー村のお嬢様。


○ルルー・プレリア

イシルの妹。コトー村のお嬢様。

両親から溺愛される。


○セーヴ・プレリア

コトー村の地主。畑を持ち牧畜をしている。

イシルとルルーの父。


○セアヌ・プレリア

セーヴの妻。イシルとルルーの母。


○ソール

コトー村のプレリアの家の近くの小川のほとりに生えている柳の精。

イシルの友だち。


○リュイ

コトー村のプレリアの家の近くを流れる小川の精。

イシルの友だち。



■第4話以降

【レティオール街】


フルプレヌ町から馬車で数日分離れた大きな街。

商売が盛ん。

レティオール神殿のほか、いくつかの小神殿もある。


○レティオール神殿

レティオール街の真ん中にある大きな神殿。

祈祷やお守りなど、寄付次第で大きく優遇されるため、富裕層から支持されている。


○アリオジェマ・オネット神官

レティオール神殿の若い神官。見習いのときの指導神官がノブルム神官。

背が高く整った顔立ちをしている。

アリオとも呼ばれる。


○ナシムカリマ・ナバロガン神官

レティオール神殿の中堅神官。ノブルム神官と同期。

太鼓腹。


○リッシュ神官長

レティオール神殿の神官長



■第6話以降

【フルプレヌ町】


コトー村の隣町。

コトー村の人たちは、買い物や学校のためにフルプレヌ町まで歩く。


○フルプレヌ小神殿

フメプレヌ町にある神殿。治療院に力を入れている。

神官が一人だけと決められている神殿が便宜上小神殿と呼ばれる。公には神殿である。

神官見習いはいるが、神官になるときに他の神殿へと移る。


○レザール・ノブルム神官

フルプレヌ小神殿の神官。中年。


○マルグリット・ノブルム

レザールの妻。


○シュクル・デザラ

デザラ菓子店の店主。デザラ菓子店はクッキーが有名になる。


○ファリーヌ・デザラ

シュクラの妻。シュクラと二人でデザラ菓子店を切り盛りしていた。



■第8話以降

【モルヴィニョン都市】


国の首都。政治と宗教の中心地。

フルプレヌ町から馬車で七日間かかる。


○モルヴィニョン大神殿

大神官と大聖女のいる神殿。

神殿と作りは一緒だが、拝殿の後ろにさらに奥殿が設けられている。

奥殿は、神官や聖女が特別に祈る場所で、基本、神殿関係者以外は入ることができない。


○ミリアム・カルネラ神官

大聖女の侍女。侍女の中では年若い。



■第10話以降

○プレザンス大神官

モルヴィニョン大神殿の大神官。

神官の長であり、大聖女とともに大神殿を支える。

妻がいる。


○エリア・ラフィネ大聖女

聖女の中でもっとも尊い存在。宗教の象徴的中心であり、実権も併せもつ。

聖女の認定は、大聖女の一存で行われる。

夫と子どもがいる。


○ジュリア・ラッティ神官

神官になって数年の若い神官。

見習い時代から大神殿で育つ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る