第3話 最後の灯火を燃やして



 どうしても まだ

 もうすこしだけ あとちょっとだけ


「やり残していた事があったんだ」


 もうすぐそこまで 期限は迫っている


「言いたい事が山ほどあったんだ」


 運命の神様は気まぐれで


 唐突な不幸なんて当たり前で


 どうしてこんな目に遭わなければならないんだって


 だから ずっと嘆いていたかったさ


「でも、そうする時間さえも惜しい」


 もう前を向くなんて

 できないと思っていたけれど


 伝えたいものがあるんだ

 残したいものがあるんだ


(この言葉を) (この思いを)

(口にしたい) (遺したい)


 どうしても まだ 死ぬわけにはいかないんだ

 もうすこしだけ あとちょっとだけ お迎えが来るのを送らせておくれよ


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩集D 死者と生者 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説