絶対に目を付けられてはいけないVtuberに見つかってしまった
横糸圭
プロローグ ターゲット・ロックオン
Youtubeにおいて無限に存在している配信において、今日も同時接続数で5万人を集めている超人気配信があった。
「じゃあ次のお題に行きましょうかね~」
「ほーい」
2人の人気女性Vtuberが語り合っているだけという配信だが、この配信は定期的に行われると毎回のように数万人の視聴者を引き付ける。
片方は「
活発で明朗な性格と、同時に下ネタとか男の話とかを平気でしてしまう並外れた倫理観のせいで、アイドル事務所である「スタバ」の頂点にしながら唯一の汚点とも言われる存在である。
濁りのない黒色の長髪と、ベレー帽をちょこんと頭に乗せたかわいらしいデザイン。また右耳に月の、左耳に太陽のマークのアクセサリがちらりと見え、どことなく上品な様子も窺える……。
「はいじゃあリスナーさんからのお便りを読んでいきましょうか~。『夕暮さん、
透き通るような声で長文を読み切ったのは「わんだふるらんど」所属のVtuber、林檎みかん。こちらはわんだふるらんどで一番のチャンネル登録者数である。
特徴としては企画を開いて人を呼ぶことが多いということと、呼ばれる人はほとんどが炎上経験があったりはたまた人気のあるVtuberであったりするため、「Vtuberの着火剤」として多くの人間に恐れられている……が本人はいかにも常識人という顔をしているので、手のつけようがない人間でもある。
こちらは頭の上にみかんを乗せた、幼さを感じる黒髪の女の子。髪の毛を止めるヘアピンにはりんごがあしらってあり、ダボッとしたパーカーのフード部分も赤いリンゴの仕様になっている。
「こういうお便りが来ていますが、どうですか月日さん。新しい男は見つかった?」
「言い方がひどい‼」
「いつも男探しをしてる人なんてこんな言い方で十分でしょ」
「このラジオも終わりが近い気がするわ~。で、なんだっけ、新しい男?」
かわいらしい女の子が2人でこんな会話を公然としているのもどうかと思われるが、2人が気にしていないのでリスナーとしては諦めるしかない。
「てか前の男とはほんとに終わっちゃったの? ほら、『ぶいのへや』の
「いやまあ、その、前の男の話とかはいいじゃんか……」
「なんでちょっと照れて乙女ぶってんだよあんた」
「ひ、ひど‼」
ちなみに夕暮と穂積がカップルっぽくしていたのは事実だが、これは完全に片思いというやつで穂積の方は別に何とも思っていなかったのが真実である。
「んで、新しい男だっけ? そう‼ 聞いてみかん‼ 新しい男、っていうか、めっちゃかっこいい男見つけたの‼」
「なんだ、ちゃんと見つけてんじゃん。で、どこのひと?」
「
「えーごめんなさい、ほんと知らないわ」
林檎は知らないと首を振っていて、コメント欄でも大半が『初耳』『聞いたことない』『事務所も知らんなあ』というコメントで溢れている。
だがその中で、一部のリスナーが『政木⁉』『政木、とうとう見つかっちまったか』『マサキング、逃げろよ……』というコメントを残していた。そのコメントに夕暮が反応する。
「そうそう、政木くん‼ おい、逃げろってどういう意味だよ。見つかっちまった? はあ?」
「まあまあ待て待て、落ち着いて月日。清楚清楚」
「『まあ政木はどう考えてもいい男だしな』うんうん、分かってるやつがいるなあ。…………っていけない、ちょっと本気になりすぎちゃった」
「落ち着いたか……」
夕暮はよくコメント欄とバトルする姿が配信されている。
清楚(自称)が剥がれるその瞬間はいつも配信で盛り上がる場面で、こうして林檎などに止められるところまでがワンセットの漫才だ。
「じゃあその政木くん?」
「政木さんだろお前は」
「……政木さん、とはまたコラボできるといいですね~」
「…………それはちょっと恥ずかしいかも」
「はーい、今この瞬間コラボすることが決まったので、その時はぜひみなさん見ていってくださーい!」
「ねえ、ホント! 緊張するから、マジなんもしゃべれなくなるから‼」
「ではでは今日の配信はこれくらいにしましょうか。ではいっしょにー、せーのっ、おつみかーん!」
「おいちょっとこらてめえまだ話は終わってないだろうが。あ、リスナーさん、おつみかーん! おいみかん、ちょっとほんとやめてくださいお願いします勘弁してください緊張しいなんですこっちは」
そしてこの日、同時に政木有馬のチャンネル登録者数が1万人から1万5千人に急増したらしい。
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