第25話 第五の罪源・再び3
その言葉を聞いて俺は耳を疑う。
「いや、一枚噛ませろって、罪源職とパーティ組めるわけないだろ……第一、モニカやアンジェ、他にもいろいろな人に迷惑かけたような奴、信用できな――」
「あら、良いじゃない」
俺の話を遮って、サーシャが口を挟んだ。
「何にしても、相手は白金等級の冒険者を再起不能にしたのよ。味方は多いほうがいいじゃない?」
「そうは言うが……」
確かに、加速が上手く決まって遺物を奪えたのは、完全に虚を突けたからであり、今後真正面から戦って、同じことができるとは思えなかった。
特にあの遺物、噛みつくまでの予備動作が少なく、加速でも間に合わないほどの速さで閉じられていた。真正面からやり合えば、単純なスピードで負けることになるだろう。
そんな相手と戦うなら、カインの戦闘センスは役に立つ。危機察知と弱点を見破る力は、たぶん誰にも真似できない。
「じゃあ、こう考えましょう。私達のパーティでやらかしまくって、その挙句氷竜と八咫烏を率いて村を襲ったカインはあの村で死んだの」
サーシャは仕方ないというように、俺の前で人差し指を立てる。
「今ここにいるのは、カインのダメだった部分から分離したもう一人のカイン、そう考えなさい」
「そんな滅茶苦茶な……」
そんな理論が通る訳がない。とはいえ、実際に起きたこととしてはそれに近いような気も……
「相変わらずめんどくせえなニール。要は俺が罪源職だってバレなきゃいいんだろ? 烙印を布で覆うだけじゃねえか」
「そうそう、それにこの間話してたじゃない。罪源職でもまともな人間は居るって」
「う……」
ハヴェル神父の事を思い出す。彼は憤怒者だったが、その性質は明らかに善だった。善であるがゆえに、教会の堕落と不義が許せず、罪源職に堕ちた人だ。
……だとすれば、善悪の判断が無く、それゆえに横柄なふるまいだった彼が強欲者に堕ちたとすれば、それは悪い事なのだろうか?
一瞬でも浮かんだ疑問は、俺の中で膨らんでいく、それこそ罪源職に対する忌避感を押しつぶすほどに。
そして俺は自分自身の中で、今のカインとならまたまともなパーティを組めるのでは、と思い始めていた。
「……わかった」
無意識に手を組んでいい理由を探し始めた段階で、俺は折れることにした。なんにしても、近いうちに神託を受けさせて、無理にでも教会の修道院に通わせよう。
「ふふ、昔を思い出すわね」
サーシャがにこりと笑い、俺とカインはばつが悪そうに頭を掻く。
「いろいろ変わったけどな、俺の左目も、カインの左手も……」
「あっ、そうだ。左手の件は許してねえからな」
「それを言うなら俺も左目を許してないぞ」
肘から先が無い左腕を突き出したカインに、俺は冷静に応えた。
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