第15話 混血の少女
「俺もあの頃はなんて馬鹿な事をやったんだろうと……」
「あ、ちなみにお母さんはこないだアタシたちの村に移住したっすよ!」
思い出すだけでも頭痛がしてきそうな経験だが、まあ結果としては悪くないのだろう。
ちなみにカインは翌日、血塗れになりながら宿屋に帰ってきて騒ぎを起こすし、残党に付けられていて町から逃げ出す羽目にもなった。トラブルメーカーとは彼の事を言うのだろう。
「え、えっと……なんというか、すごいわね」
イリスは引きつった笑みを浮かべていた。
いや、気持ちは分かる。混血の母子、奴隷労働、スラム街となれば血生臭い話になるのが普通だろう。
「あの頃は無茶と無謀が日常茶飯事だったからな」
俺はそう言って、軽くため息をつく。
「あと、アタシはその後『なんでもするから仲間にして!』って言って、ニル兄が『支援職か騎士適性があればいいぞ』って言ってくれたんで適性ある騎士をやってるっす!」
アンジェがグッと力こぶを作って見せる。普通に外見相応の見た目に見えるが、その内には鋼のような筋肉が隠されているのを、俺は知っている。
「え、あの、本当に?」
「本当だ。俺も何度か助けられている」
信じられない。と言いたげだが、俺もまさかあんな線の細い印象だったアンジェが、バリバリのタンク役になるとは思わなかった。神託による適性検査は絶対とはいえ、加入してからしばらくは、気が気じゃなかったのも覚えている。
「ま、こんな所だな、イリスは他に聞きたいことはあるか?」
「……ちょっと、情報量が多くてくらくらしてきたから、このくらいにしてくれる?」
「まあ、そうだろうな」
俺は眉間にしわを寄せるイリスを残して、アンジェと共に部屋を出る。
案内に来た衛兵に従って、俺たちは迎賓館の外に出る。高級住宅街を抜けて、オース皇国まで向かう聖女行列との合流方法を確認して、宿まで戻ってきた。
明日の朝には出発するらしいので、また明日も早起きをする必要がある。不安が無いと言えば嘘になるが、今日も早めに寝ておこう。
「にしてもニル兄、なんで昔話の時、裏に居た組織を隠したんすか?」
部屋に戻ってくると、アンジェはそんな事を聞いてくる。
「当然だろ、あの街にある青年会は、教会の下部組織だ」
「えっ、そうだったんすか!?」
混血への蔑視と、消極的な立場の国家、そして運営組織の腐敗があれば、このような事になるのは当然と言えるだろう。
「あの聖女サマもそこら辺は知らないだろうし、これから先色々担がれるってのに変なこと教えたくないだろ」
「あー……じゃあアタシも黙っとくっす」
あからさまにテンションの下がったアンジェだった。まあ、出発前に宝石飴をもう一袋買ってやるかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます