第7話 エピローグ

 歩は両親に向かって言った。


「今まで育ててくれてありがとうございます

これからは自分で一人で、世界に行ってみようと思います」


「なあに、お母さんが一緒だと迷惑だったの?」


 母親は気づいていた

もう独り立ちをする頃になったのを

あのコンクールの後から

実は子離れできない方は母親だったから

わざとそう言った。


「違うよ、お母さん僕と一緒で

自分のやりたい事とかあるでしょ

だからお互いに自由に生きて

いきたいって思っていたんだよ」


 その言葉を聞いて父親も付け加えた。

「盲目のピアニストと言われるまでは

まだまだだけど、歩なら頑張れる

一緒に暮らして育ててきて私は歩を誇りに思ってる

これからが歩のスタートだ

何かあればいつでも、家に戻ってこい」


 父親らしい、良い言葉だった

そのあと歩は両親に向かって抱きしめて


「ありがとうございます」


 たったこの一言が家族の

目が見えない子供を育ててきたことを

幸せに家族みんなの心に感謝を実感した

歩には作曲家のベートーヴェンの生い立ちを

自分と重なる所があった

耳が聞こえなくなってから作曲した

歓喜の歌はもしかして

音楽家としての心の喜びなのかもしれないと・・・


 歩はすでに付き添い人と契約していた

もう歩は世界に羽ばたいて行く

コンクールで優勝してから歩は


『奇跡のピアニスト』


 と呼ばれていた、それほど歩の演奏は

クラシックを聴かない人でも心に響く

クラシック界でも歩の演奏は最高と言わせるほど

成長していたコンサートはだいたい五時間弾きっぱなし

なのに歩はその直前まで七時間必ず練習する

体力が必要なのでジムで走ったりもする

それくらいコンサートは体力が必要なので練習は怠らない。


 でも歩はその練習を全然苦に思わない

聴いてくれる人に最高の演奏を聴いて貰いたい

ソリストとして世界で有名の楽団員でも

歩の演奏を聴いて必ず良いコンサートになると

言わせるくらい他のピアニストには持っていない

何かを歩は持っている。


 それは歩が目が見えないのに理由があるからかもしれない

人にはみたく無いものもあって

心が傷ついたりそれで辞める事もあるだろう

だけど歩の世界には人の優しさを人一倍感じていたから

心が優しい事もあって

必ずコンサートの後拍手がやり止まない

いつもアンコールが鳴り止まない

本番前に七時間、更に本番で五時間それでも

歩はステージに戻りアンコールに応える

聴いてくれる人に感謝を込めて

この歩の気持ちが何よりみんなを優しさに包まれる

涙を流す人もいるくらい、素晴らしい演奏をする。


 いつか盲目のピアニストと呼ばれる事がなくなり、世界一のピアニストを目指して、今でも歩は世界をまわっている。


 しばらく経ってから歩はアメリカに行った、あの恩人に会うために

そうクライバーン国際コンクールでホームステイを受け入れてくれた

老夫婦に感謝を言いたくて、老夫婦は驚いたけど


「ここはあなたのもう一つの家だからいつでも来てください」


 と老夫婦は言ってくれた、優勝した時の曲を弾いて

自分のCDを渡して丁寧にお辞儀をしてまた世界に向かった。


 その後歩は色々な人達と出会い、毎回演奏してくれる

付き添い人の人の誕生日にはピアノがあるバーに言って

ハッピバースデーを演奏してプレゼントを渡したり

日本に帰って来た時は両親と色々話しをしたり

母親を一緒に旅行に行ったりしてる、今歩の願いは

結婚したいと思う事、家族を持ちたい気持ちでいっぱい

それはきっと、自分を育ててくれた両親を理解して

自分もそんな親になりたいと思っているからだろう。


 これからも変わらず歩は世界に自分の演奏を聴いて

貰えるならと毎日練習して体力を保つためにジムで

走って今も何処かでピアノを演奏しています

感謝と生きている素晴らしさを届けるために

前に向かって進み続けている。

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