半人間の選ぶもの

バブみ道日丿宮組

お題:夜と夕方 制限時間:15分

半人間の選ぶもの

 人間には不可能でも魔族にならば可能なことは多岐にわたる。

 そもそも人間は寿命が短く、技能を極めようとしてもその途中で砕かれる。一方魔族は長生きで技能を極めることも可能ではあるが、できることとできないことは当然のようにある。

 長生きできることは長くやるということで繰り返すことが嫌になるほどだ。

「……朝か」

 僕はといえば、魔族と人間から産まれたハーフでより一層長生きする。かれこれ数百年もの間読書という文字読み技能を極めようと歩んでる。

 本は人間、魔族拘らずセンスが強いものが生き残る世界。作品が人間、魔族という差別は本の中では存在しない。

 一般的に魔族は人間を悪として、人間は魔族を天敵として位置づけられてることを根に考えると素晴らしいことだ。

 ただ……どうしても限りある人生の中での作品となれば、同じ人間の作ったものは少ない。弟子がいればなんとか伝授される技能と違いセンスあるものはその人ならではの一品が光るもの。数が少ないのもそう考えれば仕方のないことかもしれない。

 終わらない夜の静かな日々を壊さないためにも僕は声を小さくする。

「……いくか」

 本は毎日新刊がコンビニエンスストアに陳列される。電子書籍版をかえば移動の時間を取られることもないのだが、普段動かない僕からすればいい運動と割り切れる。

 それに……早朝のコンビニエンスストアには店員さんしかおらず、他の人に会うことは少ない。

「……」

 親戚から見れば、ずっと家にいる堕落したやつという認識が強くなる原因でもあるが昼に起きてもやることは読書であり、人の声が聞こえてくる時間帯というのは耳に悪い。

 静かな空間で静かな時間を過ごす。それを満喫するには、朝から夕方まで眠り、夜に起きて早朝寝る前に買い物というのが一番効率がいい。

 魔族という血のおかげでエネルギーを摂取する必要もないのでエコである。

 まぁ……一番お金がかからないのは図書館を利用することだろうけど、あんなにたくさん人がいて息遣いを聞く空間はどことなく嫌なものだ。

 慣れれば楽しいものだと友人から聞くには聞くがあくまでもそれは友人の感性であって僕の感性じゃない。なら……僕は僕の選んだ道を進む限りだ。

 読書する暇に書いたレビューで多少の金銭も稼げてる。文句は言われるがやめろと言われないのはそこらへんがでかいのだろうけど。

「……まぁいいか」

 出かけよう。

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半人間の選ぶもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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