調べ

バブみ道日丿宮組

お題:楽しい検察官 制限時間:15分

調べ

 調べごとは足を使えと先輩は言っていたが、

「時代はやっぱりソーシャルだよね」

「ご主人様。わたしを使っておいてソーシャルもク……、ソもないかと思います」

 カタカタとキーボードを打鍵するメイドは不満そうだ。

「私のものを好きに使わなくてどうというの?」

「ネットの世界くらい自分で調べたらどうです? 外の世界までもわたしが調べては効率が落ちます」

 当たり前のことだ。

 メイドが言ってることは正しい。

 家でも、外でもメイドが調べるのは時間だけが取られるだけで解決に近づくには膨大なコストがかかる。

「けど、私機械音痴だし役に立つのは頭の回転だけでしょ?」

「そこだけは同意しますが、今はタッチするだけで何でもできる時代ですよ。それでもダメですか?」

「やろうとしてもね……機械がなぜか反応しないの」

 機械が拒絶するならあきらめるしかない。

「大丈夫。外の世界の出来事はあなたにつけたカメラで寸付狂わずに確認してる。指示にも従ってもらってるからわかってるでしょ?」

「それはそうですが……」

 メイドの顔から不満の色が消えない。

「だいたい他の子達にもお願いすればもっとはやいと思いますが」

「みんなにカメラつけても私が見切れるわけじゃない」

 聖徳太子ならできたかもしれないけど、視界は一点のみを見るためにあって広大な景色を見るためにはついてない。色情報をすべて頭が処理すれば数分持たずに焼き切れる。

 脳の一部しか人間は使ってないけれど、それは使ったら危険だから。私はそれのギアをいくつか開けられるけど、あくまでも思考するために回転させるだけであって情報を一度に入力するためじゃない。

「わかりましたよ。先輩さんにもいい顔しておきたいですし」

「あの先輩のどこがいいのかわからないけど、お願いするわね」

 はいとメイドは打鍵を続ける。

 画面がぱっぱっと切り替わってく。

 そしてプリンタが動き出し、

「はい、ご主人様。犯人の一覧と行動履歴です」

「ありがとう」

 何百もの紙をどさりと渡された。

「少し休んでて。候補を絞り込んだら現地へ行ってもらうから」

 お辞儀をするとメイドは部屋にあるベッドに倒れると、数秒待たずに寝息をあげる。

「……」

 スイッチをオン・オフできるのは正直羨ましい。

 私はほとんど毎日自分の力で眠ることができない。いろんな考えが頭をよぎって睡魔を奪う。薬で運動を止めない限りそれは終わらない。

「ふぅ……」

 メイドは仕事をこなした。

 なら、次は私がしなくては。

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調べ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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