記・憶

「てんめぇー!よくも俺を轢き殺してくれたなぁー!」


「すまねぇすまんねぇ。今回はちょいとミスっちまったらしいんだ。」


「...あんた..居眠り運転常習犯だったのか。」


「まぁいいじゃねぇか!あんちゃん!どうやらここは天国みたいだしよ!」


「え?天国?ここが?」

まじかぁもうきちゃったの天国?俺まだ16だぜ?子供の顔も見てないんだぜ?ましてや奥さんの顔も。

「って誤魔化そうとするな!ここがどこだがわかんねぇが、あんたのせいでこう...」


「あっー!やっとみつけた!」

突然女の子の声が聞こえた。

「ちょっと!どこで道草くってんのよ!今日は集会の日でしょ!忘れたの?」


「あー!そうだった!わるいわるいマリア。」

ってあれ?なんで俺この子の名前知ってんだ?


「ったく、何してるかと思えば、王様!次郎を連れ回すのは遠慮してください!こいつは甘やかせばだめになるんですから!」


「あはは、わるいなぁ」

え?おっちゃんも何いってんの?

と思ったら、我に帰ったおっちゃんはこちらを見て戸惑っている。

「おっちゃんも自分で何いってんのかわかってねぇのか...」


「もう!さっさと行くよ!パーティのみんな待たせてるんだから!王様も!早く城に戻らないと!」


何がどうなってるかわからないまま俺たちは村に?戻っていった。


「...あんちゃん、何が起きてるかわかってるか?」


「...わかるわけねぇだろ!俺も何が何だか、なんであの子の名前知ってるのかもよ!」


「だよなぁ...一体どういうことだよ、俺が王様だなんて。」


「もうすぐつくよ。きっと今頃みんなカンカンなんだからね!覚悟しといたほうがいいんじゃない?」

おちょくっているような口調で喋りかけてくる。


「あ...ああ、わかってるよ。」


「?なんか変ね?どうしたの?」


「な..!なんでもねえよ!ばか!」


「ば..ばかですって!?あんたに言われたくないわよ!ばかばかばか!」

あれ?なんだか思い出してきたような...

確かこいつはマリア。おれのパーティメンバーで勇者養成学校からの腐れ縁の仲だ。

ってあれあれ?なんで俺こんな記憶が..?


「あんちゃん...一つ言っていいか..?」


「なんだよ?」


「なんとなく...なんだが、俺はこの村の王様な気がするんだ。」


「はあ?おっちゃんなにって...」


「思い出してきたんだ!俺が今までやってきたクエストでの伝説...村のみんなから好かれていて村一番の人気者...そんな記憶が....」


「おっちゃん...天国天国言い出した時からおかしいと思ってたけど、確信したよ。おっちゃん、相当頭おかしくなってるよ。」


そして村に到着し、多くの村人達がこちらを見つめている。


「あっ!王様だー!」

「おっ?王様じゃねえか」

「元気かよ!王様!」

「次はどんな伝説つくるんだい?」


そんな王様を賞賛する声が老若男女問わず聞こえてきた。


「....まじかよ...」


その瞬間、俺はおっちゃんに殺意を芽生えた。


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