8(5)  信用


あの日以降私たちは疎遠になった。少し距離を置いたのは私の方からなのだが、それでもアプローチをかけてこない彼に寂しさを覚えた。

私たちは夏の特別授業で別の教室になり、お互いに最低限の挨拶をするにとどまった。


あの花火大会はなんだったの、なんて聞きたかったが、自分から離れて置いてその質問はずいぶん都合の良いものに思えたため、何も言えなかった。


その後の彼については、バスケ部のマネージャーのこと付き合っているらしいと風の噂で聞いた。


一体いつから二人が親密だったかなんて知る由もないが、私と同じ時期に彼女とも実はデートしてたら嫌だなあ、とか。

そんなことを考えている自分が嫌だった。

結局彼のことを最後まで信用できなかった、って。


「キス、かあ」


私は未だ家族以外誰にも触らせたことのない唇を触っては物思いにふけっていた。

三坂くんは優秀だったためクラスの企画や、受験勉強にも性を出しているみたいだった。

マネージャーの子との交際も順調らしい。


あの夏の花火大会は、恋だったのだろうか、答えの出ない自問自答を繰り返していくうちに私は考えるのをやめて、

来るべき大学生活に向けて受験に集中していった。


時はすぎ、高校卒業を迎えた。充実した3年間だった。

残念ながら第一志望の大学には落ちてしまったけど、第二志望には合格した。

大学では素敵な恋、できるといいな。




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