第5話
「えっ⁈えっ⁈えっ⁈えっ⁈えぇぇぇぇーっ‼」
やっと我に返った
九十九姫の様子を見ている綾。しかし、ショックを受け落ち込んでいる九十九姫の事などお構いなしに視線を彩葉の方へと戻した。
「で……どうするんだ?」
「でも……九十九姫、かなり落ち込んでるし……」
「九十九はまだ
落ち込みすぎて風化しそうになっている九十九姫をちらりと見た彩葉。あまりの萎びれた姿に、さすがの鴉丸も心配せてなんだかんだと声を掛けている。
「おいっ、九十九‼いい加減にしろよ。私はお前の力を信じているから、彩葉に力を貸してやってほしいんだぞ?」
綾から声を掛けられた九十九姫がびくりと反応する。しかし、力を信じているというその言葉に、落ち込んで灰になる直前の九十九姫の顔がまるで暗く長かった夜の終わりを告げる朝日の様に明るい笑顔へと変わっていった。
「妖魔を見つける事が得意な鴉丸。そして、その妖魔の魂玉の位置を把握するのが得意な九十九。それに彩葉の剣術を合わせると……」
にやりと笑い鴉丸、九十九姫、彩葉の順に顔を見る綾。鴉丸の喉からごくりという唾を飲み込む音が聞こえてくる。
「どうだい?私もこの件から手を引く。だから、お前ら三人であの妖魔を討伐してみろよ?」
「綾様と離れるのは寂しいですが……そこまで言われたら綾様のご期待に応えてますわよ」
ふんっと大きな鼻息を一つつき胸を張りながら言う九十九姫の姿に綾がふふっ微笑んだ。
「うちもええで?このぽんこつ小狐が足さえ引っ張らん様、気ぃつけてくれたらな」
「誰がぽんこつ小狐よっ!!あなたこそぐうだらの幼児天狗のくせしてっ!!」
「よ、よ、よ、幼児天狗やとぉっ!!」
またしても掴み合いの喧嘩をおっぱじめ様としている二人に拳骨をお見舞した綾が、彩葉の方へと顔を向けた。
「……さぁ、後は彩葉が決めろ」
「分かった……喧嘩ばかりするのには困るけど、二人の探知能力は私も認めてるから」
少し伏し目がちに答える彩葉。
綾は九十九姫と何やら話しをしている。しきりに頷き聞いている九十九姫。話しが終わると、綾がそれじゃぁと三人へ手を上げ帰っていく。目を潤ませ涙ぐみながらいつまでも手を振っている九十九姫に、彩葉がよろしくと声を掛けた。
「よろしくお願いします、彩葉様」
ぺこりと頭を下げ丁寧にお辞儀する九十九姫に、鴉丸が何かを言おうとしていたが、その口を彩葉が塞いだ。彩葉の掌の下でもごもごと口を動かす鴉丸に、小さなため息をついた彩葉。こんな顔を合わせれば喧嘩ばかりの二人をまとめる事が出来るのだろうか……彩葉は妖魔討伐よりもそちらの方が自信がなかった。
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