第24話「エヴァと【アルカン】に行く」

 次の日、渋谷支部の前でエヴァと待ち合わせをする。


 彼女は収納袋を持ち、黒色のトレーナーとジーンズ、スニーカーという動きやすそうな服装をしていた。


 それでも並外れた美貌を持ったアメリカ人少女なので、自然と周囲からの視線を集める。


「レオン!」


 彼女は笑顔いっぱいで彼の名を呼び、元気よく抱き着く。


「えっ」


「何だあの男」


 周囲がざわめく。


 プラチナブロンドに透き通るような白い肌、男の理想の具現化、美の女神の化身と言われても信じそうな美貌とスタイルの持ち主。


 そんな美少女に対して礼音の見た目はせいぜい平均くらいだろう。

 釣り合いがとれてないと思われても当然だと、礼音自身が思う。


「今日はどこに行くの?」


 とエヴァが聞く。


「いつも俺が言ってる場所でかまわないか?」


 と礼音は確認する。


「ええ、あなたと一緒ならどこだって!」


 エヴァは笑顔で言いきった。

 一瞬礼音はおやっと思ったし、周囲もどよめく。


 だが、彼女は無邪気な笑顔のままなので、礼音は深い意味はなさそうだと判断する。


「じゃあ都市リーメだな。行ったことはあるかな?」


「ないわ」

 

 彼の問いにエヴァは首を横にふった。

 ふたりは並んで歩き出す。


「そうか。……どの【ゲート】を使うかで、【アルカン】のどの都市につけるのか、変わったりするのか?」


 礼音は疑問を抱く。


「たぶんそう。ワタシが行ったことがあるのはネブル、ラプルという都市よ」


 とエヴァが答える。


「聞いたことがない都市だな。【アルカン】はやっぱり広いんだろうな」

 

 なんて礼音は言った。


「【ゲート】でつながってかなり経つのに、まだ【アルカン】全土の広さがわかってないという話だものね。地球より広いかもしれないわ!」


 とエヴァは楽しそうに言う。


「かもしれないね」


 と礼音はうなずく。

 夢があるのはいいことだ。


 それに【アルカン】が広くて彼が困るわけじゃない。

 礼音たちは【ゲート】を通り、都市リーメへとやってくる。


「ここがあなたが来るリーメなのね!」


 エヴァは物珍しそうにきょろきょろ見回す。

 好奇心旺盛な猫みたいで可愛らしいと礼音は思う。


「ああ。いまはちょっと危険な兆候が出てるらしいんだが」


 と彼は言った。


「危険?」


 エヴァがきょとんとする。


「サーベルフォックスってモンスターが出てね……」


 礼音は事情を率直に話す。


「危険が大きそうなと思ったらすぐに地球に戻るけど、かまわないよな?」


 と彼が確認すると、


「ええ、危ない目に遭ったりしたら、おじい様に【ゲート】パスポートをとりあげられてしまうわ」


 エヴァは仕方なさそうにうなずく。


(さすがのリチャード氏もそこは厳しいか)


 と礼音はすこし安心する。


「戻り石って知ってるか?」


 彼は次の質問を放つ。


「ええ。買った都市に帰還できるアイテムよね。まだ持ってるわ」


 とエヴァは答える。


「なら、都市リーメが危険でもエヴァが行ける都市に避難もできるんだな」


「任せて!」


 礼音の言葉を聞いて、彼女は胸を軽く叩く。

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