センチメンタル

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

「帰る時間が来たみたい」

楽しかった今日一日と

電車に乗り込む後ろ姿を

必死に心に焼き付けながら

鳴りだす発車のメロディーは

センチメンタルでもないのに

名残惜しさを募らせて

ときどき声に出そうになる

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

「家に着いたら電話する」

最後に君がこぼした台詞

一秒遅れて返した言葉は

風に煽られ落ちてしまった

プラットホームの雑踏の中

せめてこの想いだけでも

真っ白な息に運ばれて

君のもとへ届けばいいのに

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

「いつまでも大好きだよ」

遠く離れた君の街にも

今夜雪が積もったなら

たとえ受話器越しにでも

同じ景色が見られる気がして

君の香りが残るジャケット

今も変わらぬ気持ちのまま

夜にまぎれて帰りを急ぐ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る