☆ 現代ドラマ 生きている限り誇りだけは失わないよ

すどう零

第1話 より子の転落逆転人生

私、より子 ちょっぴりシワシワネームでしょ

二十歳の割には 濃密な人生送ってると思うんだ

今から 私の体験談 書いてみるね


実は私は 三階建ての大きな家に住むお嬢様なの

でも 三歳のときに実母が亡くなって以来

私の心はなぜか空洞が吹き抜けている

継母は まるで腫物にさわるように私に優しくしてくれた

でも そうであればあるほど 財産目当てのような気がして

私は 距離を置くことにした


そんな私は 調理師学校に通う二十歳のとき居酒屋のバイトを始めた

なぜ調理師学校だったのかというと

高校を卒業してから一年間 カフェでバイトをして

将来は自分の店を持ちたいという夢をもったからである

そこで知り合ったのは お定まりのワル男秀夫

最初は気のあう友達 

しかしある日 人が変わったように豹変した

私は調理師学校で 同じクラスの三十歳過ぎの

隣の席の ときどきいや実をいうとしょっちゅう

ノートを見せてもらう仲のお姉さんと甘えられる女性ー

名前は昌子というーから

ちょいと友情を試す気になった


ワル男秀夫は私に提案した

「へえ 三十歳の昌子が より子の友達?

本当 信じられない 何か悪だくみでもあるんじゃないの?」

私はムッとして反論した

「んなことあるわけじゃない。昌子姉さんはノートをみせてくれる

だけじゃなくて 私の話を聞いてくれるいい人よ」

秀夫はある提案を始めた

「昌子姉さんを友達かどうか 試してみないか?」

えっ 昌子姉さんを試す必要がどこにあるの?

「昌子姉さんから ちょいと金を借りるんだよ

本当の友達だったら 金くらい快く貸してくれるはずだ」

秀夫は 私にある計画を持ちたが 私はそれに同意した


「昌子姉さん 一緒に帰ろう ちょっとお願いがある」

昌子姉さんは 私と秀夫の計画をつゆ知らず私と並んだ

「ああ 疲れた 肩が痛いよう ねえこのカバン(といっても

私の実家は金持ちだからエルメスのブランドバッグだよ

一分間持ってくれないかな もちろんお礼はするよ」

昌子姉さんは 疑いもせず私のエルメスのカバンを持ってくれた

これがワナの始まりとは 昌子姉さんも想像もしていなかっただろう


翌日 私は昌子姉さんに詰め寄った

「昨日はカバンをもってくれてありがとう。

ところがそのカバンに傷がついてしまった」

昌子姉さんはムッとしたような顔で言った

「傷なんてつく筈がないじゃない」

私は強気で言った

「顕微鏡で調べたら傷がついてたんだよ

そこで 五万円支払ってくれない?」

昌子姉さんは はあ?と首をかしげ

不審そうな顔をした

もちろんこのことは 秀夫が私に提案したこと

しかし 私はもう秀夫から逃れられなくなっていたし

昌子姉さんを友達として試すというより

金を引き出すことを考えだしていた

それから一週間にわたり 私は昌子姉さんの顔を

見るたびに「明日五万円 明日五万円持ってきてよ」と

バカの一つ覚えのように 昌子姉さんに詰め寄ったが

昌子姉さんは 薄笑いするだけだった


昌子姉さんに五万円要求して八日目になった。

私は秀夫の提案を実行することにした

「おい、昌子姉さん。五万円払うのか払わないのか」

昌子姉さんは「払わない」と突っぱねた。

いきなり、私は秀夫の提案通り昌子姉さんの頬を

ひっぱたいた。

昌子姉さんは びっくりしたようにのけぞった

「じゃあ どうして払うなんて言ったの?」

昌子姉さんは

「私は払うとは言っていない。ハアとは言ったけど」

再び私は昌子姉さんの頬をひっぱたいた

「このことは誰にも言うな。もし校長の耳に伝わったら

お前をしばきあげるぞ」

威圧をきかせ 恐怖心を植え付けたつもりだったが

昌子姉さんはあきれたような顔で去って行った


それから十分もたたないうちに 私は校長室に呼ばれた

昌子姉さんが 五万円の恐喝まがいと頬を叩いたことを訴えたのだ

たちまち 男性教頭があきれ顔で

「カバンをもってやっただけで五万円請求するとは

お前 今までいったいどんな世界で生きてきたんだ

もうこの学校を辞めるか」

それから 私は校長室に三回呼び出され このことは五万円という金銭

目的ではなく 秀夫にそそのかされてやったことを正直に話した

それから四日後 私と昌子姉さんは校長室に呼び出され

「まだ未成年で 将来のこともあるのでこのことはなかったことに

お互い 年齢も違うし住んでいる世界も違うようだから

もう近づいたり 関わったりしないように」

これで私と昌子姉さんの友情は 儚く消えてしまった

それから一週間後 秀夫は大麻中毒になってなんとアウトロー組長の息子に

ケガを負わし アウトロー組長と組員に命を狙われる羽目になり

私から去っていった

今から思えば ヒモとしてつきまとわれなかったことが 不幸中の幸い

いや 秀夫が私を風俗に堕とすワナから救われたのだった








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