魔女からの逃亡

トマトも柄

第1話 魔女からの逃亡

 ある森に迷い込むと魔女に連れ去られる。

 そんな噂がある森がありました。

 けれども数十年経っても噂しか残っていなく、誰も連れ去られたこともありませんでした。

 近くに住む人々はただの噂だと思い、気に留める事はありませんでした。

 その話の存在は人々に忘れ去られていきました。

 ある日、二人の兄妹は森の中で山菜を取りながら遊んでいました。

「メクー! 良い物見つけたよー」

「わぁー! クロア兄さん! ありがとう!」

 二人は山菜をそれぞれ手に入れながら森の中へ入っていきます。

 どんどん奥に入っていきますと、黒い服で纏ったお姉さんが前に立っていました。

 そのお姉さんは二人が近づいてくるのを見つけ、こっちへおいでと誘っているようでした。

 二人はこの森で人を見つけるのは珍しいと思い、彼女に近づいていきました。

「坊や達、どうしたの? こんな森の奥まで来ちゃって」

「僕達山菜を取ってたんです。 パパやママが喜んでくれると思って」

 お姉さんの言葉に反応してクロアは山菜をお姉さんに見せびらかします。

 後ろのメクも笑顔で山菜を見せていました。

「あら! いっぱい採ってたのね! けれど、それを調理するってなると大変じゃないかしら?」

 その言葉にメクは後ろから、

「大丈夫! ママ達は料理の天才だからこれ持って帰ったら良い物作ってくれるから!」

「それだったらママ達に少しでも調理しやすいように家で汚れを落とすとかどう? それなら私も大歓迎よ」

 その言葉に二人は顔を見合わせてお姉さんの言う通りにしました。

「じゃあその荷物を私に預けてくれるかしら?」

 二人は山菜をお姉さんに渡そうとします。

 すると、お姉さんは

「私ってすっごーい魔法が使えるから大丈夫よ」

 すると山菜が宙に浮きだしてふわふわ浮かんでいます。

 二人はとても驚いた顔をしており、お姉さんを見ます。

「私は少し魔法が使えるのよ。 驚いた?」

 二人はうんうんと頷いています。

「では、これは家に送っておくね。 私ってすっごーい魔法で送り届ける事が出来るから」

 そして山菜がお姉さんの家に送り届けられます。

「山菜は私の家に送り届けたから、一緒に行きましょうか」

 お姉さんは二人を連れて、家に向かいました。

「さぁさぁ入って」

 お姉さんは家のドアを開けて家の中を案内します。

 そして、机の上に山菜が綺麗に横並びになって置いてあります。

 その山菜はまだ土で汚れていて、洗わないと調理に使えない汚れです。

「う~ん。 まだ汚れが付いているね。 よし! お姉さんが洗ってあげよう! そこで君たちにお願いがあるのだけどいいかな?」

「私達が汚れを落としますよ」

 メクはそう言っているが、

「いやいや。 私はこういう作業は大好きなのよ。 それにみんなで美味しい物食べたいでしょうから」

「分かりました」

「じゃあお願いを言うね。 私が洗っている間に隣の部屋にいるペットの相手をして欲しいの。 洗ってる時に来ちゃったら大変だからね。 お願い大丈夫かしら?」

「大丈夫! 僕達に任せて!」

 クロアはそう言うと、二人は隣の部屋のドアから隣の部屋へ入りました。

 隣の部屋はとてもこじんまりとしていて少し狭く感じます。

「ペットってどこにいるんだろうな?」

 クロアは周りを見渡しますが、ペットらしきのが見当たりません。

「あれじゃない?」

 メクは前に見える一つの鳥かごを指しました。

 その中を見てみると羽の生えた小人らしき人がいました。

「君達も騙されてきたのか!?」

 いきなり小人は二人に叫びます。

「騙された?」

 メクは確認するように聞きました。

「ドアが開くか試してくれ!」

 それを聞いてくクロアがドアを開けようとしましたが、うんともすんともしません。

「あいつは魔女なんだよ! 姿はあんなだけど四百年以上も生きている魔女なんだ!」

「魔女?」

 クロアはドアを開けようとしながら、小人に聞く。

「あいつは若い人や妖精を食べて若さを保っている魔女なんだ! 俺もこの中に閉じ込められて餌としての役割にしようとしてるんだ!」

「他の仲間はいないの?」

 メクは聞くと、小人は暗い表情で話しました。

「みんなあいつに食べられた……。 俺を助けようとして、みんな食べられた」

「そうなのね」

 メクは落ち込んだ表情で返します。

 クロアはドアが開かないので諦めて小人のいるところに合流します。

 すると、小人は鼻をクンクン嗅ぎ、クロアを見ます。

「君、何か食べ物を持っているね?」

 その言葉にクロアは気付き、いくつかの山菜を見せました。

「あ! 全部は渡してなかったんだ。 汚れは取れてないけど」

「構わない! 俺にくれないか! その山菜を二人で分けて俺にくれないか!」

 どういう事と二人は首を傾げます。

「俺は願いを叶える妖精なんだよ! 恩を受けたら願いを返すという役割の妖精なんだ。 もし、何かをしてくれるなら一人三つまでの願いを叶えるという事をしないといけないんだ」

「けど…汚れ付いたままなんだけど…」

 クロアは渋ると、小人は叫びます。

「それがあったらある程度の魔法が使えるようになるんだ! 二人が俺に渡してくれ! 頼む!」

 言われたとおりに二人は持ってる山菜を二人で分けてそれぞれが小人に渡す。

 小人は汚れを払い落とし、山菜に手を付けて食べ始めました。

 ムシャムシャと美味しそうに食べています。

 そして、小人が食べ終わっておなかをポンポン叩くと、いきなり話し出します。

「君達は私に恩を見せてもらった! 二人に願いを三つ叶えてあげよう!」

「じゃあ、まず鳥かごから出てくれるかい?」

「え? 一つ目の願いがそれでいいのかい?」

 クロアの言葉に小人は驚きます。

「だって、そうしないと逃げながら願い頼めないじゃん」

 クロアの言葉にメクもうんうんと頷いています。

「では…一つ目の願いを叶えよう! この鳥かごから出る!」

 そうすると、小人は瞬間移動でもしたかのようにクロアの肩に乗っています。

「一つ目の願いは叶えた。 次の願いはなんだ」

「おお! 凄い小人さんだ!」

 クロアが喜んで小人に話しかけます。

「あの…俺、一応妖精だからね…小人じゃないからね」

「じゃあ、妖精さん。 二つ目の願いは良いかい?」

 クロアの言葉に妖精は頷きます。

「ここにいる三人を外に連れ出してくれ」

「分かった。 二人共少し目を閉じてくれ」

 二人は目を閉じました。

「もう開けていいよ」

 言われて目を開けると、そこは家の外でした。

「やった! 出られた!」

 クロアは喜んでいます。

 けど、メクは少し不思議な顔をしていました。

「これだったら私達を村に帰すって願いも聞けたのでは」

 そこでクロアが驚いているが、妖精は首を横に振りました。

「ここは実は魔女の見張ってる範囲内だからその願いは叶えられないんだ。 魔女にバレて追われる思うから」

「そうだったの」

 メクががっかりしてます。

「とりあえずまっすぐ逃げよう!」

 三人はとにかくまっすぐに逃げました。

 逃げようと走っているのですが、後ろから物凄い足音が聞こえてきます。

 妖精が後ろを見ると魔女が物凄い速度で追いかけてきます。

 まるで動物たちの大行進のような大きな音を立てながら三人に追い付いてきます。

「もう来やがった!」

「私から逃げられるとでも思ったかー! 私ってすっごーい速いからまだ速度出せるわよ!」

 そう言うと、魔女がさらにスピードを上げて距離を縮めてきます。

「魔女を檻で閉じ込めて!」

「三つ目の願い分かった!」

 クロアの叫びに妖精が急いで願いを叶えました。

 すると、空からいきなり檻が出てきて、魔女を閉じ込めました。

 魔女は檻から話を始めます。

「私の正体をその妖精から聞いたのね」

「何でそんなことをしたの?」

 メクは魔女に聞きます。

「何って決まってるじゃない? 若さを求める為よ。 魔女と言っても年には逆らえないもの。 だから、若い姿を維持するために私は色々してるのよ。 美しさは全てを超越するのよ。 だから、私は若さを維持するためにどんなことでもするわ。 魔法でも何でも使うわ」

「何て人だ」

 クロアはそれを聞いて魔女を見ます。

 クロアにとってそこにいるのはお姉さんや魔女では無く、今はただの悪魔のようにしか見えないからです。

「そうよ。 私は若さを維持するためならどんな事でもするの。 そう、あなた達を食べることもね!」

 そう言って、魔女は柵に手を伸ばし、力を込め始めました。

「私ってすっごーい力も持っているのよ!」

 力の込めた手でどんどん柵が曲がっていき、どんどん隙間が広がっていきます。

「願いを言うわ! あの魔女を二度と喋れないように!」

「願い分かった!」

 妖精は願いを叶えると、魔女の口に木のツタが刺さっていき、口を縫い合わせて喋れなくなるようにしました。

「んー! んーー!」

 喋れない魔女は呻きながら口に縫い合わせてるツタを取ろうとします。

「今よ! 曲がった柵を直して、檻の強度を高めて!」

 すると、曲がった柵がみるみる真っすぐに戻っていき、魔女は再び檻に閉じ込められました。

 魔女は直っていく柵を見て、急いで出ようとしますが、もう隙間は残っていなく出ることが出来ませんでした。

「さぁ、私達の村に帰りましょうか」

 メクがそう言って村に帰ろうとします。

「あの魔女はそのままにして大丈夫なのか!?」

 クロアが言うと、メクは笑顔でこう言いました。

「もう私達を追う事も檻から出られる事も出来ないわ」

 メクがそう言って妖精に最後の願いを言いました。

「妖精さん。 最後の願いは私達の道しるべを出して」

「分かった。 三つ目の願いを叶えよう」

 妖精は三つ目の願いを叶え、道しるべの光を出しました。

 そして、メクは手を振って魔女にこう言いました。

「そのツタを取ろうとすると今まで維持してた美しい顔が台無しになるよ。 魔女さん。 バイバイ」

 メクの言葉に魔女はもがいているが何を言っているか分かりません。

 魔女を背に三人は村に向かって歩き始めました。

 

 そこからしばらく歩き、クロアはなぜ魔女が魔法を使えないのか疑問に思っていました。

「何で魔女は魔法を使えないんだ?」

 クロアの質問にメアはこう答えました。

「あの魔女が魔法を使うときって必ずある言葉を言っていたのよ。 分かる?」

 その言葉にクロアと妖精は首をかしげます。

「魔女は必ずこう言ってたのよ。 私ってすっごーい」

 妖精は驚いてメクに聞きます。

「あの数回で分かったのか!?」

「だって追いかける時とか何かをするとき掛け声みたいに唱えてたよ。 あれが魔法の詠唱かなって思って」

「凄いな……」

 妖精はメクを見て驚きを隠せずにいられませんでした。

 そうこう話している内に三人は元の村に戻りました。

「妖精さん、これからどうするの?」

「もう行くところ無いからな! 君たちに付いていくわ!」

 メクの言葉に妖精は答えました。

「え!? じゃあまた願い叶えてくれるの!?」

「そりゃだめだ! どれだけわがままなんだよ!」

 クロアの言葉に妖精は笑い飛ばしながら言いました。

 そのやりとりで村で三人は笑い合いました。

 そして、三人は無事に村へ帰ることが出来たのです。












 

 

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