家族以外から嫌われていた俺。急にモテ始めたが、そんなの知らない。今まで俺を嫌っていた奴等が必死に構ってくるが、新たな苛めだろうか。

狼狼3

本編の内容に関係してるけど、別に読まなくてもあんまり関係ない奴。

プロローグ


「ねぇ。お母さん。今日は隣の席の美菜ちゃんとおままごとしたんだよ?」

「そうなんだ。美菜ちゃんとのおままごとは楽しかった?」

「うん。凄く楽しかったよ。」

「よかったわね。……でも、幻君はモテるんだから美菜ちゃん以外の子にも構ってあげるのよ?」

「分かってるよお母さん。」

「もう、幻君は可愛いんだから。」

「ちょっ、やめてよお母さん!!」


赤や黄の葉が道の端で何層にもわたる山を作る、暑さが通り過ぎ寒さが目立ち始めた秋の中頃。幻馬のお母さんである夏海は、その日幼稚園であった我が子の出来事を聞きながら、まだ成長していない子供特有の柔らかい肌を撫でながら、幻馬が幼稚園から出てくるまでに当たった、涼しげな少し乾いた風で冷たくなった自分の肌を幻の体温で温めていた。幻馬のことを褒めたのは、幼くも幻馬自身の整った顔だからというのもあるが、半分は幻馬のことを撫でる為である。


そんな夏海は、幻馬のことを少し撫でると満足し、嫌がっているように見せて少し喜んでいた幻馬のことを撫でるのを辞めて、代わりに手を繋いだ。


「ねぇねぇお母さん。これって、どんぐりだよね?」

「よく分かったね幻君。幼稚園の先生に教えて貰ったの?」

「そうだよ。ちゃんと覚えて偉いでしょ?」

「幻君は偉いねぇ。」

「うん。」


手を繋いで少し歩くこと数分。紅い葉に覆われて上部が隠れていたどんぐりを見つけた幻馬はどんぐりを素早く拾って、褒めて貰いそうに拾ったどんぐりをはにかみながら夏海の前で揺らす。そんな幻馬を見て、幻馬の愛らしさと、少しずつどんぐりなどを知って成長している幻馬に喜びを覚え、先程と同じように幻馬のことを優しく抱き締めて撫でる。幻馬は抵抗することを忘れたのか夏海の安心する手に目を細めながら、夏海に抱き付いていた。


「……ん? あれって何だろう?」

「何か見つけたの?」


 夏海が抱き付くのを辞めて再び手を繋いた幻馬は、どんぐりの覆われていた紅い葉の近くに、どんぐりのような形をするも黄緑色をした木の実があることに気が付く。まだ幼く何事にも全力な幻馬は、そのどんぐりと似たような形の黄緑色をした木の実に興味を持ち、手にとって眺める。夏海は、急に走ってその場で立ち止まる幻馬を追いかけて、小さくて柔らかそうな手に握られている木の実を覗くように見た。


「ねぇねぇお母さん。これって何て言うの?」

「……お母さんも分かんないや。ちょっとスマホで調べてみるから、少し待ってね。」


 興味心身な幻馬に、ズボンのポッケに入れてあるスマホを取り出して幻馬の手に持つ黄緑色の木の実を調べだす夏海。夏海が調べている間、幻馬はその木の実をお手玉のように高い声を出しながら上に投げて遊んでいた。


「……幻君、スマホで調べてもそれが何なのか分かんなかったや。ーーってあれ? さっきの木の実は?」

「美味しそうだから食べちゃった。えへへ。」

「ーーえへへじゃないよ!! 早く口から出さないと。」



 調べても出てこなかった木の実に肩を落としてそのことを幻馬に伝えると、幻馬がそれを食べたと聞いて、一瞬いきなりのことに戸惑うも幻馬の背中をさすって木の実を出させようとする夏海。


 幻馬は幼い子にたまにいる見つけた物は何でも口に入れる子だった。さっきの木の実が何なのか分からない以上毒かもしれないと、その木の実を出させようとするも全くといって出てこない。


 数分経っても未だ出てこない木の実に諦めた夏海は、様子を見るということで幻馬の様子に変化がないか見ることにして、一度家に帰ることに。当の本人はその事態に自覚が無いのか、慌てた様子の夏海を見てずっと不思議そうに首を傾げていた。



 そのまま家に帰った幻馬と夏海だが、特に朝になっても幻馬の様子に特に可笑しなことはなかった。特に様子のおかしいところのない幻馬に、あの木の実は無害であったのかと少し安心し始めてた頃、いつものように幼稚園に幻馬を朝に送り、家の家事や昨日撮っておいたドラマなどを見て幻馬の迎えまでの時間を過ごす。


 そして少し日が傾いて来た頃、いつも通り幼稚園に迎えに行くと異変は起こる。


ーー幼稚園の庭の隅で、幻馬が悲しそうに泣いていたのだ。




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