第20話 クレイン視点

20歳の時、父上からある日突然婚約者を紹介すると言われた。


恋人も婚約者もいないから、父上がどこかで見つけて来たのかと思っていたが、紹介されたのは12歳のエステルだった。


父上とセルウェイ子爵は昔からの友人で俺もセルウェイ子爵には好感はあるが、いきなり12歳の娘が現れ驚いた。


エステルもいきなり20歳の俺を紹介されて戸惑っていた。


いくら友人の娘で可愛いからといって、12歳の娘に20歳の俺を紹介するなんて、父上は何を考えているんだか。



お茶の席では砂糖が少なかったらしく、少し苦そうにした顔には、俺を気遣って大人ぶろうとしているように見えて、どこかいじらしかった。


まだ12歳だが、この可愛い娘なら綺麗な娘へと成長するだろう。

成長したエステルなら結婚の申し込みも多いはずだ。


その時におかしな家から申し込みが来ないように婚約者のままいてやるか、とそれくらいだった。


ウィルクス次期公爵の婚約者なら、そうそう誰も手は出せない。

もしも、俺の婚約者とわかってエステルに結婚を申し込むなら、余程エステルが好きか、ウィルクス公爵家よりも大きな家になる。


それなら、エステルの希望通りにしてやればいいと思っていた。


そして、1ヶ月後には、友人の第2王子のルーファスと隣国に留学に行くことになっていた。


元々ルーファスとは友人で今回の留学もルーファスの側近みたいな感じで一緒に行って欲しいとルーファスの父上である陛下から頼まれたからだった。


そして、行く前に街に買い物へ行った時、エステルに似合いそうな髪飾りが目に止まった。


行く前にエステルに何か買ってやろうかと、迷わず蝶の髪飾りをエステルに買った。

意外にもエステルも俺にハンカチを贈ってくれた。


一生懸命ハンカチを出して来たエステルに好感はあったが、まだ12歳だ。

留学して縁が切れては不安になるだろうかと、手紙のやり取りは欠かさず始めていた。



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