第10話 手紙が来ない

クラリータに支えられ、友人ホリーのカントリーハウスに到着すると、すぐに部屋に連れて行ってくれた。


部屋につくなり、クラリータに支えられたままベッドに寝かされ、ホリーも心配して側に来てくれた。


「エステル!?一体どうして…!」

「ごめんなさい、ホリー。せっかくのお茶会なのに…ホリーの婚約者の方にもなんとお詫びをしていいか…」


ホリーは気にすることない、と優しかったが、心配と何故こんなことに、と困惑するクラリータとホリーに申し訳なさが益々掻き立てられた。


ホリーの連れて来たメイドに手当てを受け、手足は包帯で巻かれ足の捻挫は捻挫に効く塗布薬を塗られた。


顔には絆創膏まで貼られてこんな姿をクレイン様はどう思うだろうか。

私を心配してくれるだろうか。


「エステル!すぐにクレイン様に手紙を書きましょう!便箋なら有るわ!こんな事故はおかしいでしょ!」


もう手紙も来ないのに、書くことに躊躇ってしまう。


「…いいの」

「でも、絶対御者はおかしいでしょ!?」

「…こないのよ…」

「何が?」

「手紙がずっとこないのよ…」

「…っ!!」


ホリーもクラリータも言葉に詰まってしまっていた。


12歳で婚約してから、毎日ではないが手紙が途切れることもなかったのに、今現在手紙がないことに戸惑っているようだった。


手紙が来ていた頃は、嬉しそうに報告していたことが嘘のように感じる。


「…少し休んでていいかしら…」

「…勿論よ。迎えも寄越すからね…」

「迎えが来なかったら、今日は泊めてもらってもいい?無理なら、なんとか帰るから…」

「無理じゃ無いわ!ゆっくり休んでて…!」


ホリーとクラリータはメイドを連れて、いたたまれないように部屋を後にした。


迎えを呼ぶと言っても飲んだくれのブレンダ様や執事のチャーリーが来るとは思えない。

大体どうして扉が開いたのかわからないし、レーヴィ様が憲兵に突き出すと言ったのは、やはり不審な点があったのだろう。


柔らかい枕に頭を埋めると何だか悲しくなってきた。


御者も気になるけど、とにかく、ブレンダ様達をなんとかしないと…。


そんなことを考えながら、一時間ほど眠ってしまっていた。







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