英国MI6のスパイだった作家



『英国作家サマセット・モームについて』

 なんて妙な気を起こすのは、彼の作品がものすごく好きというだけでなく、その生い立ちが、とても興味深いからです。


 作家サマセット・モームは女嫌いの上に、国際的スパイでした。

 まるで、コードナンバー007です。


 小説を書く人が、同時にスパイだったなんて、あまりにも衝撃的でした。へええと思うあまりに、彼が好きだったシンガポールにあるラッフルズホテルに泊まりにいったくらいです。



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 彼の作品をはじめて読んだのは20歳のころ。


「僕は20歳だった。それが人生でいちばん美しい年齢だなんて誰にも言わせない」


 その時、私は20歳になったばかりで……。

 ポール・ニザン『アデン・アレン』の、この言葉に酔いしれるような年頃でもあって、英国人作家のサマセット・モームを心から愛してしまった。

  

 彼がゲイで、女を毛嫌いしていたにもかかわらずです。


 女性を本当に毛嫌いしていたのだろうか? 感情の揺れ幅が大きい男だから、おそらく人間嫌いだったのは間違いないと思いますけど。だから、当然、私が好きになる理由はないし、嫌いになってもいいはずでした。


 20歳という年齢で、私は大人と子どもの中間にあり、少しだけ生きていくのに、うんざりしていた。たぶん、そんなところがモームとの接点だったと思います。


 それから、ずっと長く生きてきましたが、結局のところ、大人と子ども中間であることに変わりはなく、生きていくのに、少しうんざりしていないだけのことです。

 なぜなら、うんざりするには残り時間の方が短い。人生80年と考えれば、もううんざりするほどの時間が残されていない。



 結局、大人と子どもの差は残された時間の長短でしかないのかもしれない。


 ともかく、年齢を重ねれば悩みがなくなるなんて大嘘でした。無益なおばさんの中身は20代とかわりがなく、あれは人生で一番美しい年代だったかもしれないと、記憶をかってに編纂する年齢になっています。


 さて、19世紀に活躍した英国作家サマセット・モームの作品は、

 文体は平明でわかりやすく、ストーリー性豊かで、当時は通俗作家と評されていました。


 彼の人間に対する目は常に横から目線で、残した言葉もシニカルです。


 子ども時代に両親を亡くし、裕福な生活から奈落の底に突き落とされた波乱の人生から得た皮肉なんでしょうが。


 彼の残した名言のひとつに。


『愛とは、お互いに相手を知らない男女の間に発生するものである』


 結婚して数年もすれば、この言葉は深く理解したりするものです。


『人は批評してくれというが、称賛を欲しているだけである』


 これこそ、まさに私のカクヨム生活そのものをあらわしています。


 時にアンチコメントを望むという鋼の心を持った人物に遭遇することもあります。更に、アンチいらっしゃいという英雄のような人物もいます。


 遠慮なく批判してほしいなどという壮烈な覚悟、この犠牲的精神は尊敬するしかありません。しかし、これを私に当てはめてほしくないと思います。


 とりあえず、その点について私の立場を、はっきりさせておきたいのですが。


 もし、もしも、この初心者に毛の生えたエッセイや小説を書く女の作品をお読みになって、批判めいた気持ちが起きたとしても、そして、それは必ず起きると確信しますが、どうか、あなたが墓場に行くまで心に秘めておいてほしい。


 そして、広い心で、エッセイや小説への惜しみない賞賛をお願いしておきたい。

 とくに公募に出しては落ちまくった私は、とてもデリケートになっていると繰りかえしておきます。


 多くの賞賛と応援コメント、レビュー。


 私はそれを読み、子どものように疑う心を持たずに信じ、有頂天になりながら小説を書き続ける糧とするでしょう。


 さて、今では文豪とか言われるモームとは、

 賞賛を求め、自分に閉じこもり、そして、生きづらい人生を送った男です。まるで自分の片鱗へんりんをみるようです。

 大きな違いは、彼は大人気作家であり、わたしは違う(ここ大事)。




 どこが違うのか。気を取り直してモームの生い立ちと、自身の差を比較してみました。


 モームの父親はイギリス大使館員で、母親はパリ社交界の花形という華麗な両親のもと、フランスで生をえました。しかし、両親が相次いで亡くなり、10歳で孤児になります。

 成長して医師となり、第一次世界大戦では軍医に、ほぼ同時にイギリスの諜報機関MI6にスカウトされました。


 アメといえば、父親が男で母親は女という普通の両親のもと、日本で生をえました。そして、孤児にもならずに成長して、その後、仕事をして、その関係で夫と知り合い結婚。ほぼ同時に、スパイ小説を読み、カクヨムに自ら望んでスカウトされにきました。




 さて、モームは1917年には来日もしています。それはロシア革命が起こりソビエト連邦が誕生する時期で、つまり大正時代に日本へ来たことになります。


 彼は旅を愛し、シンガポールのラッフルズホテルに長い間留まり、そこで、数々の傑作を生み出しました。


 ちなみに、ラッフルズホテルには彼の名を冠した部屋があります。

 実際に宿泊すると、天井が非常に高い部屋で、日当たりが悪く、すこし陰鬱いんうつな思いを感じます。そこで彼が傑作を数多く書いていたと思うと感慨深いです。


 モームは当時、流行作家であり、今では名作、古典と言われていますが、当時としてはラノベ扱いの作家でした。


 だから、思う。


 今、ラノベ、ライトノベル。軽い小説と言われる作品が脚光を浴びています。たとえば、「やはり俺の青春ラブコメはまちがってる」とか、そのほかの多くの作品が、100年後には古典的名作と呼ばれるのかもしれない。


 私の作品もいつかそんなふうに日の目を浴びることを願っています。


【完結】魔性の男 〜この世でもっともクズな男を愛した王女の物語〜

 https://kakuyomu.jp/works/16817330662197676798


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 但し書き:


 私の書く小説への校閲、とても嬉しいです。愛情ある成長を思うご指摘は常にお願いしたいです。いくらでも書いていただきたいと思っております。


 私が辛いのは、「こんなしょうもない小説、書くな」のような批判についてです。その場合、「どよょ〜〜ん」と、感情が下方修正されますので、どうか、こういうたぐいのご批判を控えていただきたいというだけのことであります。


 賞賛は随時、受け付けております。多少、盛っていただいても、いや、盛大にもっていただいても大丈夫です。それに耐えうる準備はありますから。

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