場所を整える2
扉と窓はどうしているんだろう?騎士達の方を見に行くと何軒か、扉と窓がついていた。
「どうやって作ったの?窓もどうやってるの?」
「蝶番がないので窓は引き違いで、半分を重ねるようにすれば外が見えるのです。さらに横に移動できるのであれば、全開出来るのですが。扉はそのまま引き戸にしています。こちらも蝶番を準備すれば、調整をして流用が出来ますので、今は十分です。ある程度の期間滞在するにしても、個室に寝床が準備していただいているので、皆喜んでいます。寝わらを集めてくれば十分に快適に過ごせるでしょう」
寝わらって、チクチクするんだよね。僕も草を集めておこうかな。
「僕も寝わらを集めないと。布団はシャローザに渡すから、良さそうなところあったら教えて。出来ればみんなの分も作るから」
「ホントですか?ちょっと待ってください」
近くの騎士を捕まえて、案内をしてもらう。今話していた騎士は、簡単な木工を出来るそうなので、そちらをしてもらう。出来る人がいるなら任せる。シャローザの家のもあとでお願いと言っておいた。
目の前にはそこそこ背の高い草が生い茂っている。家の近くなんだけど。
「この草が寝わらに向いているので、こちらを刈っていぶして虫などを落とし、使うことにしましょう。手伝っていただけますか?」
「たくさんあったらいいのかな?あといぶすのはどうするの?乾燥させた方がいい?」
「乾燥させるとなると数日必要なので、今はいぶして青臭いのは我慢して使いましょう。たくさんある分には余った分を乾燥させて、乾燥したあとに交換するようにするつもりです。乾燥後に火がつかないように軽くいぶします。そのまま使うと虫に刺されたり、悪い虫がいると病気にされたりしたことが過去にあるので、いぶすように推奨されています。いぶすのは木の加工で出た木片で煙を出すように燃やせばいいので、こちらで対応出来ます」
「なるほど。わかった」
ザッと草の音。切れた草を浮かせて、木よりは温度低めで温風を当てて乾かす。時間がかかるかもしれないな。
「さ、さすがランス様ですね。あとはいぶすだけでいけそうです。これなら全員によい寝わらが配れそうです」
「乾燥させてるからいぶす準備をお願いしててもいい?」
「わかりました。乾燥が終わったら基地へお願いします」
少しずつ端っこから茶色くなっていく。この調子で続ければ大丈夫だね。
青みがなくなって全部乾燥が終わったところに、いぶす準備が終わって様子を見に来た騎士が来た。
「青みがなくなったからこのくらいでいいかな?」
「いぶしもしますから。色が変わっているのでそのくらいでよろしいですよ」
「じゃあ、このまま持っていくね」
後ろをついていくと、いくつかの吊すところと煙を出すための石組みのかまどが作られていた。何でも作るよね。
「すごいね、何でも作れるんだ」
「いやいや、この見張り台や寝床を作っていただいたランス様とは天地の差がありますよ。よかったら、燻製機を作ってもらえませんか?藁以外にも肉で燻製をすれば保存がしやすいですので、どうでしょうか?」
「干し肉だけが長期保存出来るかと思ってた」
「干し肉に燻製をしてニオイをつけるのです。干し肉だけでは飽きるのであれば、燻製した肉なら食べたとき違いがあっていいですよ。干し肉よりも手間がかかる分、売っているのは高いですが、時間があるのなら試されてもいいでしょう。手ほどきはいたしますよ」
お願いしますと燻製機の作り方を聞きながら、閉める扉が問題になるんだけど、燻製機の扉を力で開閉出来るのか。僕は持ち上がらない扉なんだけど。上の方に排煙の穴を作って、扉もはめればそんなに煙は出ない。あと、中を見るために木のはめる場所を作って終わった。中が燃えてないか、確認出来るようにだって。
寝わらはいぶせない燻製機になったけど、満足。用意していた煙を出すかまどの上で煙を浴びている。ある程度いぶせばいいそうなので、終わった分を2人分もらって帰る。
木の家に戻ると2人ともいたので、寝わらをとりあえず石のベットに乗せた。布団をマジックバックに収納する。ハンナさんは食事を作っているようだった。
「シャローザ、布団を運ぶから部屋に案内して。ハンナさんの寝わらも持ってきたから、そっちも教えて」
「どこに行かれたんですか?急にいなくなったので、ビックリしましたよ」
「窓や扉はどうしているのかなと思って、騎士達のところに行っていたんだよ。つけてもらった?」
「まだついていませんよ?」
地下を通って隣に行くとまだ扉や窓などはついていなかった。しかたないので元のベットに布団を戻した。2人分の寝わらの1つはマジックバックにしまっておく。1日でだいぶ進んだと思うけど、ちゃんとするまでは時間がかかるよね。住めるようになるまで、出来ることは手伝うつもりだ。シャローザのために来てくれているんだから、こっちも出来ることは手伝うつもりでいる。
今日は食事を取ってから、ハンナさんが雑貨屋に何があるのか見に行くそうだ。一応銀貨を渡しておいた。何も買わないつもりなので、あとで返すといっていた。
シャローザはついてくるといっているので、一緒になって宿舎に行くことにした。あんまり邪魔にならないようにしたい。
窓や扉がまだないところもあるけど、数日以内にはつくかな。作っている人は1人だけのままだった。
「シャローザ様、ランス様。まだ、扉などは時間がかかりそうです。シャローザ様の方を優先させたほうがいいですか?」
「扉を作ってらっしゃっていたのですね。ランス様の家があるので、まずは騎士達を優先させてください。私の住居は後回しで構いません」
「そうですか、ありがとうございます。穴があると隙間風で嫌がるヤツもいるので助かります。ランス様、寝わらを用意していただいてありがとうございます。みんな喜んでました」
「それなら手伝ってよかったよ。木は足りてる?足りてなかったら乾燥させて持ってくるけど」
作っている手を止めて、残りの木を見ながら考え込む。
「出来ればあと1本分ぐらいあると助かります。たまに失敗してしまうので、余裕があればありがたいです」
「薪とかはいるのかな?」
「そういわれれば、ちょっと待ってください」
作っているところから走って行って、遠目で誰かと話しているのが見える。駆け足で戻ってくる。
「薪はとりあえず、ある程度あればいいそうです。領主街で買う必要もあるのでそこまではいらないとのことです。数日持つなら、自分たちでも作れますので最初に使う分ぐらいでお願いします」
「じゃあ、1本はここの資材として、1本は騎士達の薪用。うちも1本分薪を作ってぐらいでいいかな」
シャローザは僕の後ろをついて森の方へ。川があるので丸太の上は渡れるのかな。森へは人が入っていかないので、丸太があるぐらいだ。ずっとあるので、割とボロボロ。川は大人なら渡れるぐらいの深さしかないので、落ちたとしてもなんとかなるかな。どっちかの岸に着けば、子どもでも登れるぐらいだしね。
「ドレスだと渡りづらいよね」
「いつもの服ですので、足下が見えにくいので難しいと思います」
「こっちで待っててくれるのもありかな。丸太なんだけど、靴が歩きにくそうなんだよね。かかとがひっかかって落ちそうな気がする」
丸太は3本並んで橋として機能しているので、間に挟まって体勢を崩して落ちるかもしれない。
「もう1つは背負われるか、抱っこで向こうまで運ぶか。どれかだね。家に帰るのはなしだよ。誰もいないからね」
「それでは背負って連れて行ってください」
背中を向けるとぎゅっと腕に力を入れて背中に乗せる。自分もはまらないように気をつけてと。
「ランス様、ランス様にまた。ランス様」
「シャローザ、耳元に息を吹きかけないでよ。くすぐったい」
「すいません、また背負ってもらえるとは思っていなかったので」
「普通の靴なら手を引いて歩くぐらいでいいんだけどね」
シャローザの息は荒かったけどなんとか渡りきった。
「魔物はいないと思うけど、動物はいるはずだから僕から絶対に離れないで。食べられてからじゃ遅いからね」
「はい、わかりました」
手を出すとぎゅっと力を込めて握られる。森の中へ入っていく。入り口付近なのでそんなに暗くない。木々の間から光が差し込んでいる。
「もっと暗いのかと思っていました。もっとこう、迷ってしまうぐらいに木々が生い茂っているかと」
「もっと奥に大きい木があるから、昼でも薄暗いから奥に行かないようにね。入り口ぐらいならそんなに暗くないよ。川を隔てて森と草原が変わっているから、家に戻ったら川沿いを歩いてみる?見晴らしがいい場所があるはずだよ」
「帰ったら、そちらの方への案内をお願い出来ますか?」
返事をして、持って帰る木を選ぶ。切ったら川沿いまで運んで、枝を落として、先をある程度切ってから乾燥させる。これに時間がかかるんだよね。
「今は何をしているのですか?」
「今は木を乾燥させているところだよ。本当は自然に乾燥させるので結構な時間を置いておかないといけないんだ。生木は燃えにくくて、煙がたくさん出るから使いにくい。ちゃんと乾燥させると、燃えやすくて煙も少ないからね。生木も使えるけど、乾燥させた方が扱いやすいっていうのもあるね」
「そうなんですね。そのまま使えるのかと思っていました」
「生木でもいいんだけど、乾燥させておかないと木の水分が抜けたときに、その分縮むから建物だとゆがんだり隙間が出来たりするから、そうしないために乾燥させて使うんだ。木の乾燥は大事なんだよ」
割と時間のかかる作業なんだけど、シャローザは森の中には入らずにうろうろしている。目の届く範囲にいてくれればなんとかなる。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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