村に到着

 領主街によって、必要なものを買って。あとギルドに戻ってきたことと、婚約者が出来たことを書類を見せながら説明する。

「ただいまフッセさん、時間がかかったけど戻ってきたよ」

「お帰りランス君。時間がかかっていたから心配してたのよ。辺境伯のところに行って、すぐ王都に向かって大丈夫かなって。長旅なるのに」

「辺境伯のところへ行って、公爵様の依頼をこなして、王都にやらないといけないことがあったから、そのために行ったんだ。ポーションを作って、そうだ、婚約したシャローザ。この書類を作ってもらうために帰れなくて待ったんだ」

 紋章官の降嫁するための正式な書類だ。その待つ間が長かったんだ。色々として時間がかかることも出来たからいいか。

「紋章官って貴族の何かやっている人でしょう?それがいるってことは、その貴族の娘さんと婚約したってこと?」

「このシャローザ・エルミニドと婚約したよ」

「へ?エルミニドって辺境伯様の?」

「そうだよ」

 フッセさんの叫び声が小さい薬師ギルドに響く。色々ぎゅっと詰まっているから狭く感じるよね。

「あまり大きな声を出すなよ、病人がいたら怒るところだぞ」

「だって、ランス君が貴族のお嬢さんを婚約者に連れて帰って」

「そうだったな、ランスおめでとう。大変かもしれないが、頑張れよ。協力出来ることはするぞ」

「何で教えてくれてなかったんですか?」

 あとで詳しく話すといって中に入っていった。お客さんが来たので話を切って、また来るねといって薬師ギルドへは簡単に済ませた。

 冒険者ギルドには受付にジャステラさんがいたので同じような説明だけして、書類は本物なんだなとじっと見ていた。なんでも、王国用の魔力証文用の用紙、さらに王家の家紋のついた書類は、勝手に使うと極刑なので両方揃っていると本物と見なされると教えてもらった。それは知らなかったと教えてもらって、ありがとうと言ってギルドを出る。

「領主様にご挨拶をします。騎士達を他人の領地に滞在させるので、許可はいただいておりますが、直接出来るなら断りを入れておかなければなりません」

 わかったと領主邸に向かうと当主は不在ということで、文官の人にシャローザが挨拶をしていて、それを眺めているだけでよかった。この辺りはさすが貴族って思う。

 必要なところへの挨拶は終わったかな。

 追加の食べ物や商品を買い足して、なるべくこっちに買い物に来なくて済むようにしたい。村の雑貨屋は商品があんまりないから、ないときは諦めて領主街に買いに来よう。買えないってわけじゃないしね。

 白粉はまだこちらで販売していないようだった。販売制限がかかっているのならしょうがない。あとはスライム液がどうなのかなってところ。


 狭いので売っているところとモノは代わり映えがしないけど、生活には困らない程度にそろっている。すぐに覚えてしまうぐらいに店舗は少ない。案内出来るほどの何かもないしね。有名なモノもなくて、名産品もないから紹介したくても出来ない。

「のどかでみんな優しそうですね」

「何もないからね。王都に比べたら忙しいわけじゃないからね。のんびりしているんだよ」

 ゆっくりとしている感じがして帰ってたんだなと思った。忙しそうに歩く人達がいない。商人もたまにいるけど、たまにいるぐらいで何かしているなっていうのを眺めるだけだ。

 薬師ギルドに入っていく馬車に手を振って、イムズさんはなんか頷いていた。帰ってきたとわかってくれたかな?

 今日は宿に泊まって明日帰ることになった。



 村に帰り着くと騎士達もいるので何事かと集まってくる。村長も何事かとやって来ている。

「このような田舎にどのようなご用でしょうか?この辺りは魔物も少なく、よい特産品もございません」

「村長、婚約者の護衛なんだ」

「婚約者?どこのお姫さんなんだ」

「エルミニド辺境伯の4女のシャローザ・エルミニドだよ」

 シャローザが馬車から降りてくると自分の名前を言って、お世話になりますと馬車に乗り込んだ。

「うちに住むから」

 それだけいうと固まった村長を置いて村の端から、さらに森に近づいた僕の家に着いた。

「森に近いのですね」

「母さんから父さんが村守をやっていたから、ここに家があるんだって聞いたよ。森に入って帰ってこなくなったけど」

「もっと古いのかと思っていましたが、新しいのですか?」

「うん?その辺はよくわからない。気にしたこともないからね」

 ハンナさんに騎士達も比較的新しいと口々に言っている。そうなのかな?

「ところで父上は騎士だったとかは知らないか?」

「うーん?鎧姿とかは見たことない。覚えているのは動物をよく狩ってきたから狩人かなと思ってたけど。どうして?」

「いや、ここにどこかの家紋が入っているのでな。もしくはケガか何かで引退して流れ着いたのかもしれん。この国の紋章では見たことがないが、どこかの国の紋章だ」

「そうなんだ。わかんなかった。木の模様みたいなものかと思ってた」

「焼き入れしているんでな、自然に出来た模様ではないぞ」

 感心しながら聞いていて、いつかわかるかもしれないと思いながら眺める。この紋章、似たのを見たことあるね。これはあとでいいか。

「簡易な家を作ってみるから、改良することがあったら教えて」

「家を作ってくれるのか?とりあえずは、テントでしのぐつもりだ」

「ちょっと作ってみるね」

 1人分のベットとちょっとした机。イスはその辺の丸太でいいかなと思って作っていない。窓にするための四角の穴を作る。あとは1人分の入り口。

「こんな感じだけど、人数分作ればいい?他に何か必要なら追加するけど」

「マジか。野営のつもりだったのに十分住居だぞ。イスはないのか?」

「簡単に作ったから、寝られて、何か置けて、イスは丸太でいいかなって。座る場所を変えられたほうがいいかと思って。入り口は塞げないけど、窓部分は閉じられるよ?開閉は出来ないけど」

「イスは丸太か」

「すぐに出来る簡易住居。ちゃんとしたのは、明日以降に作る予定だけど。今日寝るのにテントでいいのならそれでも。壊すのはすぐだしね」

 むむと唸ると、テントの手を止めてみている騎士達は集合する。

「諸君らの意見を聞きたい。テントがいいか、この個室がいいか。土の上に寝るのは一緒だが、どうしたい?」

「進言いたします。ベットを広めにとってもらい、個室にしてもらいたいであります」

「テントは寝返りも打てないので、非常にきついです」

「個室を希望します。夜間の警戒についての意見も聞きたく思います」

 個室をお願いされたので、大きさの調整を少しして。

「村の方への警戒はいらないかな。森を監視してもらえば十分かな。魔獣は森の方から来ることがあるからね。村の人達がここに来るのには、大勢で来るからそんなに警戒する必要はない。戦闘系の職を持っている人は、冒険者か領主街にいくから普通いない」

 個室を作って人数分作ると木を1本取って丸太のイスにして積んでおいた。夜営用の薪などは自分たちで探すので大丈夫だそうだ。

 自分の家に入るとお茶をしているシャローザ。くつろいでくれているならよかったよ。

「居心地はどうかな?ベットはシャローザが使いなよ。あとはそうだ。あれを見せておかないといけない」

「お疲れ様です、ランス様。騎士達と何をなさっていたのですか?」

「簡易の寝る場所を作ってただけ。明日からちゃんとしたのを作るつもり。ベットの下のええと」

 枠組みだけのベットを少し動かして、地面を掘る。固くなっているので掘りにくいけど、手で丁寧に土を掘っていく。

「何かを隠していたのですか?」

「母さんの形見で、お嫁さんに代々引き継いで欲しいっていわれているから、渡すのはその時だけど」

「形見をいただくのですか。ランス様がお持ちになっていた方がよいと思います。そんな大切なものを」

 木の箱が出てくる。土を埋め直して木の箱を持って、土と少しボロくなってる?中身が無事ならいい。蓋を外すと精巧に細工と金と多少の宝石で飾り付けされた箱が出てくる。

「な、何ですかこの箱は。どう見てもお金持ちの家の出身じゃないですか。ランス様のお母様は高貴な出身か、商家でも有力豪商の出身ですよ。それほどの箱細工は非常にお金がかかります」

「そうなの?母さんが言うには、母さんの一族は娘にこういうのを持たせる習慣があるそうだよ。本当は母さんのじゃなくて、新しく作って渡すのがいいらしいけど。母さんもいなくなったから、どうやって作るかわからないけどね。中身は見たことがないんだ。このまま、僕の空間倉庫にしまっておくから、結婚したら渡すね」

 箱には外にあった紋章が中央に刻まれている。箱ごと空間倉庫に入れてしまう。

「ご出身については何か聞いていませんか?」

「全然聞いてない。僕はこの家にいる記憶しかないから、この村の出身なんだと思ってた」

「ええ?どう見てもこの村の出身じゃないと思いますよ。もっとこう、高貴な貴族出身です、きっと」

「そうなの?」

 そういうことを一切話してもらっていない。なので、本当に何も知らないのだ。シャローザになんといわれても、わからないこと。

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読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

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