総本部長

「ランス君、領主街まで来て貰えない?」

「なんで?」

「総本部長と教えてくれる冒険者が来るそうよ」

「ちゃんと教えてくれるんだよね?出来ないときは総本部長に相手になってもらうからね」

 領主街にも売店はあるはずだから、そこで探してみようかな。ヘルセさんは水晶に向かって僕の言ったことを伝える。わかったと聞いたことのない声が聞こえた。

「乗って、すぐに戻るわよ」

 戸締まりをして、馬の後ろに乗せられるとすぐに走り出す。速くて振り落とされそう。ヘルセさんにしがみついて馬が走る振動に耐える。村を駆け抜けて領主街の街道に入っていく。あまり使われていないので足場が悪く、振動は余計に大きい。振り落とされないようにするので精一杯。自分で移動したほうがましだよ。

 お尻が痛くなりながら馬を休ませるために休憩をする。水辺がないんだけどな。最低限の食べ物だけのようだし、石の桶を作ってその中に水を入れてやるとすぐに飲み始める。飲みたいだけ飲むだろうから、木陰で痛いお尻をさすりながら休む。休憩を挟みながら領主街に向かって行った。


 馬は頑張ってくれて領主街に1日で着いた。用意された宿に泊まって、朝になって冒険者ギルドに向かった。見たこともない冒険者パーティとじいちゃんがいる。

「この方が総本部長エインヘニャル様。元S級冒険者よ。それでこちらが今回来てくれた輝く太陽のメンバーでS級に最も近いA級の冒険者パーティーよ」

 装備はミスリルやアダマンタイト製かな?5人の男女だね。

「それって強いの?」

「強いわよ」

「じゃあ、僕がワイバーンだからドラゴンぐらいは狩ってるんだよね?」

「ドラゴンはS級の人も狩りはしないのよ」

「え?本当に強いの?師匠とどっちが強いの?」

「師匠かも」

 今だと張り合うのがきついかも。弱いぐらいがちょうどいいのかもしれないね。

「ギルドの中ではどのくらいなの?」

「S級間近のパーティーなんだから」

「S級ってその辺りにいっぱいいるんじゃないの。中間ぐらい?」

「1番多いのはC級で上位に行くほど人は少ないわ。S級は10人もいないのよ。よく行方不明になって、こっちでも居場所の把握が出来ないことが多いけど」

 A級パーティーは頭を抱えてる。じいちゃんは笑っている。

「この子も実力があるのならギルドでS級と同じ扱いにしてやるわい。変に絡んでギルドがなくなってもことじゃからな。手加減は教えられないかもしれんが、ふっかけられたらふっかけたほうが悪いようになるようにの。それでどうじゃ。ワイバーン単騎討伐の時点でそういう申請を一緒にあげるようにしておけばよかったんじゃがのう。S級になれば自動でなるから必要もないから忘れられておる。それはこっちの落ち度。しかし、ワシの目で確かめさせてもらおう、大きな口を叩くだけの実力をのう」

「演習場を借りていますので、こちらへどうぞ」

 ソルと最初に戦った場所に向かうのだろう。多少の無茶をすると領主街の石壁が簡単に壊れそうだ。補強は必要か。

「そうだじっちゃん。手を焼いた冒険者か暗殺者か知らないけど、どうしたの?」

「それはなんじゃ?聞いておらん」

「斥候職だと思う、気配を消して襲ってきたから短剣ごと手を焼ききったんだけど、やっぱり冒険者ギルドは信用ならないや」

「もう1度ラント国の王都ギルドに用が出来たようじゃ。そうかそうか。ワシも舐められたもんのじゃのう。年は取りたくないの」

 年取った人の動きじゃないんだけどな。その辺の冒険者なら瞬殺しそうな体して何言ってるの、このじっちゃん。演習場について、石壁の方を向く。

「一時的に補強を入れるからちょっと待ってて」

「どんなことをするんじゃ?」

「下がってて、僕よりは後ろ」

 下がったのを見てから一息ついて、集中。余波や流れ魔法とかで粉砕するといけない。領主街だし、よく来るからね。一瞬でクリスタルの壁を作り出す。

「こんなもんが見られるとは長生きはしてみるもんじゃな。戦っている間に消えるんじゃないのか?」

「戦ってる間は消さないよ。久しぶりにがんばるぞ」

 走り出して、跳ねたり、体を温める。冒険者パーティは位置を確認している。

「荷物は下ろさんのか?」

「荷物は冒険者の命綱だよ。王都からの逃亡も荷物があったから出来たんだ。収納魔法でも使えないからね。マジックバックか、どっちにしろ荷物はいるよ。持ってないのは冒険者じゃない」

「ふむ、持っていたいならよい。それでは始めるかのう。準備はいいのう?開始じゃ」

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